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第三章

3-8魔術総合実演会開催

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3-8魔術総合実演会開催


 あっという間に「魔術総合実演会」、通称「魔演会」の日が来た。


 これってまさしく学園祭だよな?


 生前の世界の学園祭よろしく様々な飾り付けがされた学園内は出店やマジックアイテムの即売会をやっていたり、一般客含め各国の大使やお偉いさんも来ている。

 うちの国からも大使であるフィメールさんが呼ばれていて貴賓席にいる。
 メイン会場では初めて見る学園長やらゾックナスさんが挨拶をして魔術総合実演会の開催宣言をする。
 

 学園長って女性、しかも声からしてだいぶ若い感じがするな。
 英雄アノードと共に魔人戦争を切り抜けたって聞いたからてっきり相当な御老体かと思っていた。
 もしかしてエルフかなと思って凝視したが、先の大戦のけがとかで仮面をかぶっていて口元くらいしか見えない。
 どっかの赤い大佐じゃあるまいし。


 プログラム的には午前に魔術研究などの発表会が行われ、午後に目玉である「大魔導士杯」が行われる。

 魔演会自体の開催期間は五日間。
 明日の午後から俺たちが参加する大魔導士杯、第一回戦が始まる。

 それまではみんなでこの魔演会、いや、学園祭を楽しもうと言う事となった。


 「エルハイミ、こっちこっち! 『ボヘーミャ名物たこ焼き』が有るわ!」

 既に食い気に走っているティアナ。
 呼ばれる方に行くと確かに「たこ焼き」が有った。

 ほぼほぼ前世の「たこ焼き」と同じで、青のりと鰹節、マヨネーズが無いくらいで味もほぼ同じ。
 どうなっているんだ?
 聞くところによると、とある人が秘密の製法を伝えたのが始まりだとか。

 そう言えばここには「味噌」や「醤油もどき」まである。

 絶対に異界人が伝えたとしか思えない。
 魔人戦争前には召喚された異界人も多いと聞くから多分そこに日本人がいたのかもしれない。

 ただ、残念なのが米が無いと言う事かな?
 今まで知る限り米らしきものは古代米のようなものが有ったくらいだ。


 ティアナが「たこ焼き」を持ってきた。
 前にもロクドナルさんから分けてもらった「たこ焼き」を今回は熱々出来たてでいただける。
 うーん、学園祭、魔演会さいっこー!!



 と、そんな俺たちの前に年の頃、アンナさんたちと同じくらいの数名の学生が寄ってきた。

 途端に殺気立ったロクドナルさんとアンナさん、サージ君までが俺とティアナの前に立ちふさがる。

 「これはこれはティアナ殿下ではありませんか。ご機嫌麗しゅうございます。お初にお目にかかります。私はホリゾン帝国が宮廷魔術師見習いビエム=カースと申します。どうぞよろしく」

 優雅に右腕を前に、左腕を後ろに回しながらお辞儀をするビエム。
 後ろに控えた彼の仲間だろう、同じように名乗りを上げ同じようにお辞儀をする。

 「ご丁寧に、私がティアナ=ルド・シーナ・ガレントでありますわ。ビエム=カース殿」

 笑顔で挨拶をしているが目は笑っていない。
 俺は口の中の「たこ焼き」を高速で咀嚼して飲み込む。
 と、俺が何か言う前にロクドナルさんが前に出る。

 「私はガレント王国騎士見習い生ロクドナル=ボナーと申す。ビエム殿、何用でありますかな?」

 ビエムにロクドナルさんが応対を始める。
 
 「なに、殿下たちも『大魔導士杯』に参加されると聞きましてね。ご挨拶をと思ったのですよ」

 「それはご丁寧に」

 「ふふっ、『大魔導士杯』は各国の威信をかけた競技、勝ち進めばいずれ我々のチームと対戦となりましょう。その時を楽しみにしていますぞ!」

 そう言って笑いながら踵を返す。
 ビエムたちはそのまま人ごみに消えていった。


 「各国の威信?」

 ティアナはビエムの言葉を繰り返す。


 「‥‥‥殿下、実は参加チームはほとんどが留学生で、そのチームは各国を代表する魔術師の見習い生がほとんどです」


 ここにきてアンナさん爆弾発言。

 
 なにそれ?
 それって結構重要な事じゃない??


 「殿下に気苦労をおかけするのは忍びなく黙っておりましたが、向こうから挨拶に来るとは思いませんでした。申し訳ございません」

 かしこまるアンナさんとロクドナルさん。
 これはロクドナルさんも知っていたか。

 「気にしないで、がぜんやる気が出て来たわ!」

 おおっ!?
 どうしたティアナ随分とやる気満々じゃないか!?

 「丁度良いわ、我がガレント王国の底力を各国に示す良い機会だわ。ホリゾンなんて簡単に蹴散らしてやるんだから!」

 なんか強気だな、どういうことだ?

 「エルハイミさん、聞いた話では殿下の叔父君が先の大戦で戦死なされているそうです」

 怪訝そうな顔をしていた俺にサージ君が他の人には聞こえないようにこっそりと教えてくれた。

 そう言うことか、十年以上前の話でも当事者になるティアナはそう言った話を聞かされ成長してきたわけだ。
 実際に会ったことが無くても親族の悲劇はティアナにとっては他人ごとではない。


 しかし、これは盲点だった。
 アンナさんが随分と石橋をたたくような行動をとっていた理由もよく分かった。

 
 この学園の祭典はいわば各国の抗争の縮小図。

 
 留学生が集まる理由や各国の支援が有る裏にはこう言った祭典で自国の国力につながる力誇示をすることによって現在の国力をアピールする狙いがあるわけだ。

 さらに単純に魔術を鍛えるだけではない。
 ここに留学する者は今後の世界情勢にかかわる次なる担い手ばかりということと成る。

 通常は各国の宮廷魔術師見習い辺りを派遣しているのだろうが、今回ガレント王国は状況が違っていた。
 まさかの無詠唱魔術の使い手がいたからだ。
 本来はうちの国も見習い宮廷魔術師辺りを選考していただろう。


 そう言えばうちの宮廷魔術師見習いはどうしたのだろう?


 「アンナさん、そう言えば我が国の見習い魔術師は留学しているのかしら?」

 俺の質問にアンナさんは首を横に振っていった。

 「実は昨年の『大魔導士杯』で全員がけがをして本国に帰国中なんですよ」

 なんだって?
 昨年の競技もそんなに危なさそうではないはずなのに?

 「競技中はもちろん注意していても、魔術が使えると言う事は予想外のアクシデントが起こることもあります。ましてや競技場にいる間は誰でも魔術が使える。それは想定外を引き起こすこともあります」

 悔しそうに言うアンナさん。
 これはフィメールさんあたりからいろいろと聞いているようだな。

 しかしそんなアンナさんをよそにティアナは力強く言い放つ。

 「大丈夫、私たちは強い!そんなアクシデントだって一緒に蹴飛ばしてやるんだから!」

 まったくこのお姫様は。
 いいでしょう、とことん付き合ってやりましょう。


 俺はぐっとこぶしを握った。

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