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第三章
3-4教室
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3-4教室
朝のさわやかな空気の中、食堂のテラスで俺たちは朝食を終え、お茶を飲みながらゾックナスさんが来るのを待っている。
今日はいよいよ留学の第一日目である。
みんな昨日渡された制服に身を包み、やや緊張している。
ガレント王国にも学校的なものが有ることは有るが、王族や貴族などはほぼ家庭教師のスタイルが当たり前である。
庶民の学校はどちらかというと寺子屋の様なもので読み書きそろばんができれば終りらしい。
なので集団で授業を受けるというのは俺以外は初めての体験となる。
「うーん、みんなで授業を受けるとかどうやるのかしら?」
軽く伸びをして緊張をほぐすティアナ。
そんなティアナにアンナさんがうんちくを言う。
「確か教授という方が学生の前に立ち、いろいろな知識を説明しながら教えていくスタイルと聞いています」
「そうすると私たちはその話を聞いてればいいのかしら?」
アンナさんはティアナの質問に少し上目遣いになってそれでよいのではないでしょうかと自信なさげに答える。
多分大学の講義みたいな感じだろうと俺は思っているけど、初体験の皆さんにはどう感じるのだろうか?
少々不安気味なみんなをよそにゾックナスさんが現れた。
「皆そろっておりますな、結構。では次の鐘が鳴る前に教室へ行きますぞ」
そう言ってゾックナスさんは付いてくるように言って食堂を後にした。
と、ちょうど鐘が鳴り始めた。
「そうそう、そう言えば何でここはしょっちゅう鐘の音が聞こえてくるのかしら?」
ティアナが疑問を口にする。
あ、生徒手帳ちゃんと読んでいないな。
この学園は区切りごとに鐘が鳴る。
前世では当たり前のベルだが、この世界には大まかな時間概念しかない。
なので意外とゆったりしている。
しかし授業をいろいろこなすには時間割が必要だ。
なので時間の経過を示すのに鐘の音で知らせるのだ。
教会などでは朝や昼頃、夕方に鐘を鳴らすところもあるのでこの世界の住人もなんとなく時間経過は感じているだろうが、ここまで頻繁な鐘の音はここ学園都市が初めてではないだろうか?
なんか生徒手帳といい制服といいものすごく前世の世界に似ているな?
そんなことを思っていたら教室についた。
教室に入るとそこは半円形の部屋で階段のように机が段々になっている。
結構大きな部屋で半径およそ三十メートル近くある。
そして机の反対側、教壇には大きな黒板らしきものが掲げてある。
まさしく大学などの講義を聞く部屋によく似ている。
そして部屋の中には学生がうじゃうじゃといる。
多分百名近いんじゃないだろうか?
俺たちは教壇の所まで連れてこられ、ゾックナスさんから講師の教授とみられる人物に紹介される。
「本日からこの中等科に編入する留学生の者たちだ、今後はこちらで授業を受けてもらうので宜しく頼む」
「お話に聞かされていた方々ですね? わかりました、教頭。お任せください」
答えた講師はそう言って自己紹介を始める。
「私は中等科政治学担当のジャストミン=ガイナックだ。君たちの担任となるので今後の授業はまずここへ来てくれ」
年のころ三十路半ばくらいのおじさまは長い髪を後ろで一つにまとめて愛嬌のある小さめな丸メガネをかけている。
魔術研究者らしくちょっと不健康そうな細身の体はそれでも清潔感はある。
服装も音楽教室に掲げられている有名な音楽家のように、シャツにふわふわのフリルがついてる。
ゾックナスさんは後は頼むと言って退出していった。
「中等科では政治学、歴史学、世界情勢学、そして中級魔術の四つの内容を学んでもらう。午前に各学問を受講してもらい、午後に中級魔術を学んでもらう。よろしいかな?」
そう言って一枚の書類を各人に渡す。
「これはこの学園で受講を受けてもらう時間割表だ。君たちの国にも『七日目の休日』制度はあるね?」
「七日目の休日」とは七日に一度仕事をしない休みの日を入れて体調を整えるという制度だ。
前世の世界に有ったのと同じなので気にしてこなかったが、確かに時間に追われるところでは七日制度でメリハリが必要だろう。
見ると午前に二教科ずつ、午後に魔術で一教科分、合計三教科が始まりの日から六日目まで記載されている。
うーん、ますます前世の学校と同じ感じだ。
ジャストミン先生は俺たちを見渡し特に問題がないと判断したのだろう、クラスに自己紹介をするよう言ってきた。
ざわめきが少なくなり教室の生徒たちがこちらに注目してくる。
「皆さん、ごきげんよう。ティアナ=ルド・シーナ・ガレントと申しますわ。どうぞよろしく」
「エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトンと申しますわ。皆様宜しくお願いしますわ」
「アンナ=ドーズです。よろしく」
「ロクドナル=ボナーです。皆さん、どうぞよろしく」
とりわけ言う事も無く簡素な挨拶で終わる。
多分事前情報位は有るのだろう、あちらこちらでひそひそ声が聞こえる。
「よろしい、では君たちは空いている席につきなさい。点呼を始める」
そう言ってジャストミン先生は点呼を始める。
おお、こんなところも前世と同じだ。
なんとなくワクワクしてきた。
学校なんて久しぶりだからちょっとテンション上がる。
さあ、学園生活の始まりだ。
朝のさわやかな空気の中、食堂のテラスで俺たちは朝食を終え、お茶を飲みながらゾックナスさんが来るのを待っている。
今日はいよいよ留学の第一日目である。
みんな昨日渡された制服に身を包み、やや緊張している。
ガレント王国にも学校的なものが有ることは有るが、王族や貴族などはほぼ家庭教師のスタイルが当たり前である。
庶民の学校はどちらかというと寺子屋の様なもので読み書きそろばんができれば終りらしい。
なので集団で授業を受けるというのは俺以外は初めての体験となる。
「うーん、みんなで授業を受けるとかどうやるのかしら?」
軽く伸びをして緊張をほぐすティアナ。
そんなティアナにアンナさんがうんちくを言う。
「確か教授という方が学生の前に立ち、いろいろな知識を説明しながら教えていくスタイルと聞いています」
「そうすると私たちはその話を聞いてればいいのかしら?」
アンナさんはティアナの質問に少し上目遣いになってそれでよいのではないでしょうかと自信なさげに答える。
多分大学の講義みたいな感じだろうと俺は思っているけど、初体験の皆さんにはどう感じるのだろうか?
少々不安気味なみんなをよそにゾックナスさんが現れた。
「皆そろっておりますな、結構。では次の鐘が鳴る前に教室へ行きますぞ」
そう言ってゾックナスさんは付いてくるように言って食堂を後にした。
と、ちょうど鐘が鳴り始めた。
「そうそう、そう言えば何でここはしょっちゅう鐘の音が聞こえてくるのかしら?」
ティアナが疑問を口にする。
あ、生徒手帳ちゃんと読んでいないな。
この学園は区切りごとに鐘が鳴る。
前世では当たり前のベルだが、この世界には大まかな時間概念しかない。
なので意外とゆったりしている。
しかし授業をいろいろこなすには時間割が必要だ。
なので時間の経過を示すのに鐘の音で知らせるのだ。
教会などでは朝や昼頃、夕方に鐘を鳴らすところもあるのでこの世界の住人もなんとなく時間経過は感じているだろうが、ここまで頻繁な鐘の音はここ学園都市が初めてではないだろうか?
なんか生徒手帳といい制服といいものすごく前世の世界に似ているな?
そんなことを思っていたら教室についた。
教室に入るとそこは半円形の部屋で階段のように机が段々になっている。
結構大きな部屋で半径およそ三十メートル近くある。
そして机の反対側、教壇には大きな黒板らしきものが掲げてある。
まさしく大学などの講義を聞く部屋によく似ている。
そして部屋の中には学生がうじゃうじゃといる。
多分百名近いんじゃないだろうか?
俺たちは教壇の所まで連れてこられ、ゾックナスさんから講師の教授とみられる人物に紹介される。
「本日からこの中等科に編入する留学生の者たちだ、今後はこちらで授業を受けてもらうので宜しく頼む」
「お話に聞かされていた方々ですね? わかりました、教頭。お任せください」
答えた講師はそう言って自己紹介を始める。
「私は中等科政治学担当のジャストミン=ガイナックだ。君たちの担任となるので今後の授業はまずここへ来てくれ」
年のころ三十路半ばくらいのおじさまは長い髪を後ろで一つにまとめて愛嬌のある小さめな丸メガネをかけている。
魔術研究者らしくちょっと不健康そうな細身の体はそれでも清潔感はある。
服装も音楽教室に掲げられている有名な音楽家のように、シャツにふわふわのフリルがついてる。
ゾックナスさんは後は頼むと言って退出していった。
「中等科では政治学、歴史学、世界情勢学、そして中級魔術の四つの内容を学んでもらう。午前に各学問を受講してもらい、午後に中級魔術を学んでもらう。よろしいかな?」
そう言って一枚の書類を各人に渡す。
「これはこの学園で受講を受けてもらう時間割表だ。君たちの国にも『七日目の休日』制度はあるね?」
「七日目の休日」とは七日に一度仕事をしない休みの日を入れて体調を整えるという制度だ。
前世の世界に有ったのと同じなので気にしてこなかったが、確かに時間に追われるところでは七日制度でメリハリが必要だろう。
見ると午前に二教科ずつ、午後に魔術で一教科分、合計三教科が始まりの日から六日目まで記載されている。
うーん、ますます前世の学校と同じ感じだ。
ジャストミン先生は俺たちを見渡し特に問題がないと判断したのだろう、クラスに自己紹介をするよう言ってきた。
ざわめきが少なくなり教室の生徒たちがこちらに注目してくる。
「皆さん、ごきげんよう。ティアナ=ルド・シーナ・ガレントと申しますわ。どうぞよろしく」
「エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトンと申しますわ。皆様宜しくお願いしますわ」
「アンナ=ドーズです。よろしく」
「ロクドナル=ボナーです。皆さん、どうぞよろしく」
とりわけ言う事も無く簡素な挨拶で終わる。
多分事前情報位は有るのだろう、あちらこちらでひそひそ声が聞こえる。
「よろしい、では君たちは空いている席につきなさい。点呼を始める」
そう言ってジャストミン先生は点呼を始める。
おお、こんなところも前世と同じだ。
なんとなくワクワクしてきた。
学校なんて久しぶりだからちょっとテンション上がる。
さあ、学園生活の始まりだ。
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