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第二章

2-19学園都市ボヘーミャ

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2-19 学園都市ボヘーミャ

 

 昨日は砦で騒ぎを解決し、今朝は早めの朝食をとって出発をした。
 予定では夕方か明日の朝には学園都市ボヘーミャに到着できるだろう。
 とうとうこの長旅も終わりだ。


 で、今は揺れる馬車の中でティアナのと今後について話している。

 「まずはボヘーミャに到着後、うちの国の大使館に行くらしいの。そして学園側に連絡して一応形だけの入学テストが有るらしいわ」

 ティアナは渡されていた書類を再確認している。
 俺も見せてもらったが、細かいことは大使館の職員がほぼやってくれて、あとは入学試験だけらしい。

 「そうしますと、入学テストとはどのようなことをするのですの?」

 「うーんと、基礎魔法を発動させて魔術の心得があるかどうかを確認するだけらしいわね」

 「それだけですの?」

 「なんか本来は書類審査とか実力テストとかもっといろいろあるみたいだけど、その辺は一般の留学と違うからいいみたい」

 うーん、推薦入学?
 いや、留学だから交換学生みたいな感じか?
 なんにせよ魔術が使えることの確認だけはしなきゃいけないらしい。
 

 「そうしますと、ロクドナルさんやサージ君はどうなるのでしょうかしら?」

 「うーんと、二人とも初級魔法は使えるから問題ないし、ロクドナルは学生をするけどサージは付き人扱いね」


 ご学友じゃなかったのか?
 まあ、身分上で行くとそうはいかないのか。
 しかし、付き人扱いで良いんだ、サージ君。


 「そうしますと、サージ君は授業には出席しないとなると通常は部屋で待機ですの?」
 
 「なんか、付き人は教室に同席できるみたいね。控えの場所が有るのでそこで待つみたい」


 毎日が授業参観状態か‥‥‥
 お勤めご苦労様です、サージ君。


 そんな話をあれやこれしながら馬車に揺られ、なんやかんやで夕方も暗くなりかけた頃とうとう魔法学園都市ボヘーミャに到着した。

 城壁と呼ぶには少々心もとない壁が街を覆う。
 関所も人の出入りがこの時間でも多く、かなり活発的な印象がある。
 俺たちは簡単な確認の後、関所を通りすんなりと街に入った。

 海に近い事もあり、街には縦横無尽に水路が走っている。
 そんな中大きな建物が多い区画へと入った。
 もう少し行ったところにガレント王国大使館があるそうだ。


 馬車は程なくして立派な建物についた。
 ここがガレント王国大使館。

 いや、国力ある国とは認識していたけど、何この豪邸。

 門から建物までかなりの広さがある。
 この狭い町中にこれほどまでの土地を確保するのだから普通ではない。


 到着に出迎えの大使や職員、衛兵に使用人たちが総出で出迎えてくれた。

 「ティアナ殿下、長旅お疲れ様です。私、大使のフィメール=へ―ベストと申します」

 「出迎えご苦労様です、フィメール殿。お世話になります」

 馬車から降り立ったティアナは大使のフィメールさんと挨拶を交わす。
 四十代後半の頭に白髪がまばらにある少々厳しい感じのするおじさんだ。生前の上司を思い出す。
 
 「では、ご学友の方々ともにこちらへどうぞ。ささやかではありますが宴の用意をいたしました」

 ティアナをはじめ旅の一行はフィメールさんの誘導について建物の中に入っていった。
 外観と同様に室内もご立派な内装である。
 大使館だから事あるごとに催しなどするからやはりそこそこ威厳を保たねばならない。
 この玄関から入ったすぐの所は大広間になっていて、それこそ簡単にパーティーが開けそうだ。

 俺たちは控えの間に案内され、そこで一休みする。
 ほどなくして、歓迎の宴の用意ができたと言う事で、今度は二階の大広間に案内される。

 
 やっぱ、でかいわ、この屋敷も。


 二階の広間も一回とほぼ同じ大きさですでに料理や飲み物が準備されている。 

 「まずは改めまして、ようこそ学園都市ボヘーミャへ。私が大使のフィメール=へ―ベストです。皆様長旅大変お疲れさまでした。今宵はささやかではありますが宴をご用意させていただきました。どうぞ長旅の疲れを癒されてください」

 フィメールさんの挨拶で宴が始まる。
 俺やロクドナルさん、アンナさんやサージ君が順に挨拶を交わす。
 護衛隊長のロナードさんはフィメールさんと顔見知りのようで、ロナードさんのお土産でガレント王国産の強いお酒をたいそう喜んでいた。  
 
 「しかし、フィメールがここの大使だったとはな、何年ぶりだ顔を合わせるのは?」

 「そうだな、任命を仰せつかって二年になる、二、三年ぶりだな。王都は変わりないか?」

 「ああ、変わりないぞ、相変わらずだ。ただ、最近北の動きが活発になってきたと噂もある」

 久しぶりに旧知の友と酒を交わしているロナードさんは随分と楽しそうだ。
 しかしそれに対してフィメールさんは少々苦虫をかみつぶした顔をしている。

 「ふむ、そうか。道理でな。最近ここへの留学で北からの学生が増えているらしい。流石に協定が有るのでここでは大人しくしているだろうが、姫がこちらに留学したとなると注意を払う必要があるな」

 「はっはっはっ、それには心配及びませんぞフィメール殿、この私ロクドナルが殿下の護衛につきますゆえ、ご安心召され!」


 うあー、出たよ、暑苦しい熱血少年。
 見てみろよ、二人とも苦笑しているじゃないか。
 しかし、フィメールさん流石に大人の対応で大いに期待しておりますぞ等と言い放ってますよ。
 調子に乗らなければいいのだけど、ロクドナルさん。


 ひとしきり話が終わったころにフィメールさんはティアナの方へ向かった。

 「殿下、お楽しみいただけていますでしょうか?」

 「ええ、フィメール殿のおかげで旅の疲れも十分に癒されますわ」

 「それはよかった。さて、ティアナ殿下早速ではありますが明日は学園に赴かれ入学試験を受けていただきます。既に学園側には連絡を入れておりますのでご学友の方ともども宜しくお願いいたします」

 「ええ、わかりました。では明日の出発の時刻を教えていただけますかしら?」

 「では朝食後すぐに出発と言う事で如何でしょうか?午後には宿舎への移動もございますし」


 そう言ってフィメールさんはティアナだけに聞こえる小声で話しかけた。

 「殿下、実はお話がございます、よろしければこちらへ」

 ティアナはすまし顔でええと小さく答えてそそくさとフィメールさんとこの場を後にした。


 多分さっきの事なんだろうなぁ~とか考えながら俺はお目当ての鶏ももをゲットすべくアンナさんにテーブルの上の鳥丸焼を切り分けてもらう。
 流石に今の体だと切り分けることできないんだよな~。

 「エルハイミちゃんって結構お肉好きなのですね?」

 「やだわ、アンナさん、お恥ずかしいですわ」

 ほほほと口元隠しながら笑ってるけど、この世界で新鮮な海魚ってそうそう食えないじゃん。
 たんぱく源は重要なのですよ、成長するためには。

 いや、決してこの国の肉料理が素朴ながら旨いからではないよ、肉ばっか食うのは。
 それに本来ならビールでもあればもっと、こう・・・


 ティアナもいないし、俺は今宵は大いに食事を楽しむつもりであった。

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