19 / 610
第二章
2-13きょうだい
しおりを挟む
2-13きょうだい
あれから半年近くが経った。
留学の準備は着々と進み、あとひと月後には留学となる。
その間、ジーナさんのシゴキはいつにもましてハードとなったが、ボヘーミャの留学は魔術師にとっては非常に有意義であり、ジーナさんの教えきれないあまたの魔法が学べるチャンスは有効に使うべきだと言われた。
「では、エルハイミ様ここまでで終わりです。現在の私の教えられる魔術はほとんど教えました。もちろん魔術だけ出来てもいけませんが、他に学ぶことはあちらに行って徐々に学べばよろしいでしょう」
ぱたんと魔術書を閉じてメガネのずれを直す。
「正直、エルハイミ様は優秀な教え子でありました。作法はもちろんですが私がボヘーミャで学んだ魔術のほとんどを吸収されてしまった。そのお年で中級魔術全般を使えるのは脅威ですよ。私もそのような方にご指導させていただけてとても光栄でした。あちらでもしっかりおやりなさい。それと、これをあなたへ」
そう言ってジーナさんは俺にスティックを渡してきた。
「あなたは無詠唱の魔法が使えるので、増幅器である魔法の杖は不要かもしれません。しかし中級魔術が使える立派な魔術師です。ささやかながらこの魔法の杖を餞別としてお渡しします。これは私が冒険者の時代に『空から落ちた王宮』のダンジョンで見つけたかなり強力なマジックアイテムです」
へっ?
ジーナさんって冒険者やってたの!?
しかも「空から落ちた王宮」のダンジョンに潜ったって!?
「ジーナ、そのような大切なものをいただくわけにはいきませんわ」
「いえ、受け取ってください。魔術師は必ず自分の杖を持つものです。そしてその杖はエルハイミ様ならきっと使いこなせるでしょう。正直、私にはその杖は扱いきれませんでした」
ジーナさんは軽く苦笑しながら言った。
そこまで言われると受け取らないわけにはいかない。
「わかりましたわ、ありがたく頂戴いたしますわ。ジーナ、今までいろいろとありがとう」
俺は深々と頭を下げる。
実際ジーナさんにはいろいろ教えられた。
教育係以上のいろいろなことも教えてもらった。
そんな思いが巡って俺はジーナさんに抱き着いて泣いてしまった。
俺はこういうのに涙もろい、いい年したおっさんだけど今は少女だ、。
ジーナさんは泣きついている俺の頭をやさしくなでる。
「エルハイミ様、あなたはまだまだ成長できます。あなたは非常に賢い。魔術はあなたの人生の手助けになります。どうぞあちらでも頑張ってください。そうすればまた会える日も来るでしょう」
そう言って泣いてる俺を引きはがし、そっとハンカチで涙をぬぐってくれた。
「さあ、せっかくのかわいい顔が台無しになってしまいます。淑女たるもの、常に整然となさい」
そう言ったジーナさんの目じりにもほんの僅かに光るものがあった。
翌日ジーナさんは別の仕事があると言う事で屋敷を出ていった。
俺はあの杖を握りしめずっと彼女の姿が見えなくなるまで見送った。
そんな事が有った二日後、いきなりママンが産気づいた。
それはそれは屋敷中大騒ぎだ。
助産婦経験のあるメイドを中心にやれお湯を持って来いだの、やれシーツを持って来いだのうろうろするパパンは邪魔だから男連中は向こうの部屋で待ってろだのそれこそ蜂の巣をつつく勢いだ。
そんな大騒ぎが約半日過ぎた頃、向こうの部屋から赤ん坊の泣き声がした。
控室で待っているパパンをはじめ爺様や俺も浮足立つ。
いよいよ生まれたか!
と思ったら泣き声が二つになった。
ん?
泣き声が二つって‥‥‥
えーっ!?
もしかして双子!?
俺たちは顔を見合わせてからママンの所へ急ぐ。
まだ額に汗を浮かべたママンが嬉しそうに横たわっている。
そして助産婦経験のある年配のメイドがパパンに生まれたばかりの子供を見せる。
「おめでとうございます、ご主人様。元気な双子の男の子です」
それを聞いたパパンと爺様は大喜びだ。
パパンはママンのそばに行き労いの言葉をかけながら額にキスをした。
爺様は早速双子の顔を覗き込んでいてうれしそうにしている。
俺も双子の弟を見せてもらう。
可愛らしいそれは、父親譲りの赤茶色の髪の色をしていた。
うあー、かわいい。
前世でも弟がいたが、今回は双子だ。
しかもハミルトン家の跡取りだからこの子たちもきっと英才教育で育っていくだろう。
二人の赤子はすやすやと気持ちよさそうに寝息を立てていた。
あれから半年近くが経った。
留学の準備は着々と進み、あとひと月後には留学となる。
その間、ジーナさんのシゴキはいつにもましてハードとなったが、ボヘーミャの留学は魔術師にとっては非常に有意義であり、ジーナさんの教えきれないあまたの魔法が学べるチャンスは有効に使うべきだと言われた。
「では、エルハイミ様ここまでで終わりです。現在の私の教えられる魔術はほとんど教えました。もちろん魔術だけ出来てもいけませんが、他に学ぶことはあちらに行って徐々に学べばよろしいでしょう」
ぱたんと魔術書を閉じてメガネのずれを直す。
「正直、エルハイミ様は優秀な教え子でありました。作法はもちろんですが私がボヘーミャで学んだ魔術のほとんどを吸収されてしまった。そのお年で中級魔術全般を使えるのは脅威ですよ。私もそのような方にご指導させていただけてとても光栄でした。あちらでもしっかりおやりなさい。それと、これをあなたへ」
そう言ってジーナさんは俺にスティックを渡してきた。
「あなたは無詠唱の魔法が使えるので、増幅器である魔法の杖は不要かもしれません。しかし中級魔術が使える立派な魔術師です。ささやかながらこの魔法の杖を餞別としてお渡しします。これは私が冒険者の時代に『空から落ちた王宮』のダンジョンで見つけたかなり強力なマジックアイテムです」
へっ?
ジーナさんって冒険者やってたの!?
しかも「空から落ちた王宮」のダンジョンに潜ったって!?
「ジーナ、そのような大切なものをいただくわけにはいきませんわ」
「いえ、受け取ってください。魔術師は必ず自分の杖を持つものです。そしてその杖はエルハイミ様ならきっと使いこなせるでしょう。正直、私にはその杖は扱いきれませんでした」
ジーナさんは軽く苦笑しながら言った。
そこまで言われると受け取らないわけにはいかない。
「わかりましたわ、ありがたく頂戴いたしますわ。ジーナ、今までいろいろとありがとう」
俺は深々と頭を下げる。
実際ジーナさんにはいろいろ教えられた。
教育係以上のいろいろなことも教えてもらった。
そんな思いが巡って俺はジーナさんに抱き着いて泣いてしまった。
俺はこういうのに涙もろい、いい年したおっさんだけど今は少女だ、。
ジーナさんは泣きついている俺の頭をやさしくなでる。
「エルハイミ様、あなたはまだまだ成長できます。あなたは非常に賢い。魔術はあなたの人生の手助けになります。どうぞあちらでも頑張ってください。そうすればまた会える日も来るでしょう」
そう言って泣いてる俺を引きはがし、そっとハンカチで涙をぬぐってくれた。
「さあ、せっかくのかわいい顔が台無しになってしまいます。淑女たるもの、常に整然となさい」
そう言ったジーナさんの目じりにもほんの僅かに光るものがあった。
翌日ジーナさんは別の仕事があると言う事で屋敷を出ていった。
俺はあの杖を握りしめずっと彼女の姿が見えなくなるまで見送った。
そんな事が有った二日後、いきなりママンが産気づいた。
それはそれは屋敷中大騒ぎだ。
助産婦経験のあるメイドを中心にやれお湯を持って来いだの、やれシーツを持って来いだのうろうろするパパンは邪魔だから男連中は向こうの部屋で待ってろだのそれこそ蜂の巣をつつく勢いだ。
そんな大騒ぎが約半日過ぎた頃、向こうの部屋から赤ん坊の泣き声がした。
控室で待っているパパンをはじめ爺様や俺も浮足立つ。
いよいよ生まれたか!
と思ったら泣き声が二つになった。
ん?
泣き声が二つって‥‥‥
えーっ!?
もしかして双子!?
俺たちは顔を見合わせてからママンの所へ急ぐ。
まだ額に汗を浮かべたママンが嬉しそうに横たわっている。
そして助産婦経験のある年配のメイドがパパンに生まれたばかりの子供を見せる。
「おめでとうございます、ご主人様。元気な双子の男の子です」
それを聞いたパパンと爺様は大喜びだ。
パパンはママンのそばに行き労いの言葉をかけながら額にキスをした。
爺様は早速双子の顔を覗き込んでいてうれしそうにしている。
俺も双子の弟を見せてもらう。
可愛らしいそれは、父親譲りの赤茶色の髪の色をしていた。
うあー、かわいい。
前世でも弟がいたが、今回は双子だ。
しかもハミルトン家の跡取りだからこの子たちもきっと英才教育で育っていくだろう。
二人の赤子はすやすやと気持ちよさそうに寝息を立てていた。
2
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します
カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。
そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。
それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。
これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。
更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。
ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。
しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い……
これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。
あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活
mio
ファンタジー
なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。
こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。
なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。
自分の中に眠る力とは何なのか。
その答えを知った時少女は、ある決断をする。
長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる