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第九話:私、お兄ちゃんだけだよ
しおりを挟む「はぁ~」
今日は加賀美先輩とライブデートに行く日。
土曜の朝だけど私はいつもの時間に目が覚める。
あの日、兄妹なのにキスをしてしまった。
雰囲気もあったけど、一番は自分の気持ちに区切りをつける為。
はっきり言おう、私はお兄ちゃんが好きだ。
それは兄妹のでは無く、男女として。
でも、あの日ファーストキスをお兄ちゃんにあげて全てに踏ん切りをつけた。
そして初めての失恋。
分かってはいるけど、私たちは兄妹なんだ。
血が繋がっていなくて、その気になれば大人になって戸籍から抜ければ結婚だってできる。
でも私たちは兄妹として育って来た。
自分の気持ちにはっきりしたのはお兄ちゃんとのデートの練習が終わったあの時だった。
楽しい時間、嬉しい時間、この人とならずっと一緒にいたいと思う時間。
でもそれは妹だからできる時間だった。
コンコン
「琴吹、起きてる? あのね、今日お父さんがみんなでディナーを食べに行こうって言ってるんだけど」
お母さんが扉を叩く。
思わず起き上がり扉を開ける。
「おはよう……」
「まだ寝てたの? ごめん起こしちゃったわね。それで今晩なんだけど」
「うん、私は大丈夫だよ。あ、でもお兄ちゃんは約束があるはずだから……」
そう言って隣の部屋の扉を見る。
お母さんは「そう?」とか言って取りあえず確認に行く。
私はそっと自分の部屋の扉を閉めるのだった。
* * * * *
今日はクリスマスイブ。
久々に家族で外へ食事に行こうとお父さんが提案してくれたけど、お兄ちゃんには約束がある。
だからお兄ちゃんはディナーには来ない。
そんな考えを払拭したくて、レストランには時間になったら集合する事にしてもらった。
私はここ数日お兄ちゃんと練習の為にデートした場所を回っていた。
ショッピングモールやゲームセンター、雰囲気の良い公園やイルミネーションがキラキラする商店街。
どれもこれも数日前までお兄ちゃんと一緒に歩いた場所。
その時にお兄ちゃんの横にいたのは私。
「はぁ、未練だなぁ~。もうあきらめたはずなのに……」
そんな事を言いながら気付いたらあのベンチの前にまで来ていた。
私はここでお兄ちゃんと初めてキスをした。
そして全てをあきらめたはずなのに……
「お兄ちゃん……」
ぽたぽた
気付いたら涙が出ていた。
誰も座っていないベンチを見て。
今頃お兄ちゃんは加賀美先輩と一緒にライブに行っているはず。
そして告白して上手くいくはず。
その為に私は協力したのだから……
涙をぬぐってそろそろ待ち合わせのレストランに向かわなきゃいけない。
そう思って振り向くと……
「何一人こんな所にいるんだ? 時間だ行くぞ」
「え? お、お兄ちゃん?? なんで!?」
そこにはおめかししたお兄ちゃんがいた。
そしていつも通りに話す。
「今日は家族でディナーなんだろ? そろそろ時間だ、琴吹行くぞ」
「え、えっ!? だって、お兄ちゃん加賀美先輩は? デートは!?」
「……断った」
「なんでっ!?」
「……その、何と言うか、家族と言うか、 ……いや、やっぱ違うな、琴吹の方が大切だって気付いちまったから」
ぶわっ!!
私に風が吹き込んだ。
ものすごく温かく幸せな風。
それは心の中を駆け抜け、私をお兄ちゃんへと走らせる。
だっ!
抱きっ!!
「うおっ!? こ、琴吹!?」
「お兄ちゃん! 好き、大好きっ!! 私、やっぱりお兄ちゃんしかいないよ!!」
抱き着き、うれし涙が出て来る。
もう兄妹なんて関係ない。
私はやっぱりお兄ちゃんが好き。
大好き!!
抱き着いたままお兄ちゃんの胸に顔を押し付ける。
そんな私にお兄ちゃんは笑いながら言う。
「な、何だよ、それより時間だ。ディナーに行こうか?」
「うん、うんっ♡!!」
私はお兄ちゃんの腕に抱き着きながら一緒に歩き出すのだった。
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