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第四章 みんな大好きデース!
4-7(日)みんな、私を選ぶデース!!
しおりを挟む「さあ由紀恵、やるデース!」
リンダはこぶしを握ってそう言う。
私はため息をつきながらみんなと一緒に舞台に上がる。
順番に自己紹介をしながら自己アピールをすると言うオーソドックスなミス桜川東コンテストが始まった。
今回は総勢十二人の参加者がずらりと並ぶ。
そして各人約五分間の自己アピールを行う。
審査方法は会場の観客からの投票と審査員五人の特別ポイント加算で決まる。
「リンダちゃん、由紀恵ちゃん今度は負けないわよ!」
「‥‥‥大人の魅力を教えてあげる」
「いよいよですね! 全力で行きます!!」
ああ、高橋静恵も泉かなめも矢島紗江もやる気満々。
一回ずらっと並んでみんな後ろに下がり自分の順番まで待っているけどこいつら小声で宣戦布告してくる。
「ふっふっふっふっふっ、望むところデース!」
親指立ててリンダも元気に受けて立つ。
私は小さくため息をつく。
と、いよいよ高橋静恵の順番がやって来た。
「それではエントリーナンバー4番、高橋静恵さんどーぞ!」
司会に呼ばれ高橋静恵はその凶器をたゆんたゆんと大きく揺らしながら歩いて行く。
途端に会場からため息が漏れ始めたり「おおぉぉぉぅぅ‥‥‥」などと声が聞こえる。
くっ!
オマエラそんなに脂肪の塊が良いのか!?
いいのかぁっ!?
『皆さん高橋静恵です。ええと、今日は皆さんの運勢を占ってあげますよ! 良いですか? それでは両手を逆さに組んでひねってその隙間を見てくださぁ~い! 見えましたか? それでは行きますよ~最初はグー、じゃんけんぽぉん!!』
高橋静恵はそういいながら大きく手を上げグーを差し出す。
ぼよんっ!
勿論手を上げる時にあの凶器がぽよ~んと揺れる。
途端に会場からほわぁ~んとした気配がする。
『はい、私に勝った人は今日これから良い事が有りますよ~! あいこの人と負けちゃった人は私に投票すると運勢が上がりますよ~! それじゃぁみんな、私に、い・れ・て・ね♡』
ぽよん!
うぉおおおおぉぉぉっ!
途端に会場から男どもの歓声が上がる。
ちょおとマテぇっ!
これの何処が占いじゃぁッ!!
そしてなんなんだ最後のそれぇっ!?
完全にお色気で押し切ったぁ!?
高橋静恵は会場の観客に凶器を揺らし手を振りながらこちらに戻って来る。
会場も高橋静恵のある一部分から目が離せなくなっている連中が出ている!?
「ふふっどうだったリンダちゃん、由紀恵ちゃん?」
「流石高橋静恵デース。見事な胸の使いようデース。あれあはポイント高くなってしまうデース」
何故かリンダは満足げに親指おっ立ててる。
「‥‥‥胸だけじゃダメ」
そう言って次は泉かなめの番であった。
司会に呼ばれ泉かなめはそそくさと前に出て行く。
と、紹介と同時にBGMが上がれ始める。
三味線と唄が流れ始め静かに泉かなめが名乗りを上げる。
「‥‥‥泉かなめ、参ります」
そして懐から扇子を引き出しBGMに合わせて踊り出す。
一瞬みんなポカーンとしてしまったがその日本舞踊の踊りに徐々に魅入られ始める。
一挙一動の隅々まで正確にそして優雅に。
みやびと称して言いその踊りに思わず見とれる。
そしてそのうなじやおみ足のチラシが同じ女性であっても思わずドキリとさせられてしまう。
みやびの中にわずかな妖艶さと女性の美しさが共演するそれに会場が静まって見とれてしまう。
シャン。
最後に決めのポーズで止まってから泉かなめはその場で正座して扇子を前に置き三つ指立ててお辞儀をする。
すると会場から拍手が流れ聞こえる。
その拍手も上品に、そしてうっとりとしながら放たれる心地よい拍手。
泉かなめはもう一度お辞儀をしてから裾をひらめかせこちらに戻って来た。
「くぅううぅ、これぞジャパンデース! 最後に腰のラインを緩やかに振りながら戻ってくる所なんて思わず襲いたくなるデース!!」
両手の親指をおっ立ててリンダは言う。
いや、あんた何に興奮してんのよ?
同じ女性よ?
まさか外人ってああ言うのにもの凄く弱いの?
「流石ですね高橋先輩、泉先輩。でも若さで健康的な色香だって負けてませんよ!」
そう言って次は矢島紗江が呼び出しに答え前に出る。
『六番、矢島紗江。よろしくお願いします!』
そう言うとやはりBGMが流れ始める。
曲はビアノをメインとしたものですっと引き出したリボンがこの場で舞い始める。
矢島紗江はその肢体を奇麗に動かしながら新体操のリボン競技の踊りを始める。
泉かなめのそれが静の踊りなら矢島紗江のそれは動の踊り。
しなやかな肢体にきらめく汗、軽やかな動きに舞うリボン。
音楽に合わせ舞い踊るその様に会場も見とれる。
特にそのきわどい切れ込みのレオタードに!!
足を大きく上げればそちらに男どもの頭が動き、くいっとお尻を持ち上げる動作になるとここまで唾を飲む音が聞こえる。
ジャン!
矢島紗江が最後にリボンでくるくると巻貝の様にしていたのを止めしゃがんでフィニッシュ。
同時に会場からもたくさんの拍手が聞こえて来た。
矢島紗江ははぁはぁときらめく汗を流しながら肩で息をして軽く手を振ってからこちらに戻って来た。
「新体操のリボンは勿論よかったデース。ですがもっと良かったのは健康的な肉体が汗できらめき、そして見事な食い込みが最高デース! これは正しく私を甲子園に連れって行ってデース!!」
何故ここで甲子園が出る!?
いや、それより何故リンダの解説に後ろにいる審査員がいちいち頷く!?
「さあいよいよ私の番デース!!」
リンダは両手にボンボンを持って前に出る。
「それで次の方、エントリーナンバー七番、リンダ・アンダーソンさんです!」
『リンダ・アンダーソンデース! みんな、行くデース!! YA-っ!!』
司会に呼び出され元気にマイクまで行って自己紹介をしたリンダは掛け声を発すると準備していたBGMが鳴りだす。
ダンダンダンダンっ!
『Yaha-っ!!』
リンダの掛け声と同時にボンボンを振るリンダのチアガールの応援ダンスが始まる。
それはボンボンに負けないくらいに激しく揺れている。
そして高く上げられたおみ足に会場も一気にヒートアップしていく。
『YAーっ!』
―― ヤァーっ!! ――
『Yahaーっ!!』
―― ヤァハァー!! ――
ダンダンダンダンっ!!
音楽に合わせリンダが掛け声と同時にボンボンを上げる。
同時に揺れるあの胸。
会場もそれに合わせ一緒に掛け声を上げながら男どもが頭を上下に動かす。
リンダのチアガールダンスは会場と一緒にヒートアップしていきどんどんと一体感を醸し出していく。
『YAーっ!』
―― ヤァーっ!! ――
『Yahaーっ!!』
―― ヤァハァー!! ――
ダンダンダンダンっ!!!!
『みんな最高ぅーデース!!』
―― ヤァーッっ!! ――
ダンっ!
わぁぁああああぁぁぁぁっ!
ヒューッ
ヒューッ!
最後に大きく跳ね上がってリンダのダンスが終わる。
歓声と共に一体感に興奮した会場が一斉に拍手の嵐を巻き起こす。
確かにすごかった。
なんか見ているこっちも一緒に踊りだしたくなるようなビートの効いた踊りだった。
リンダはキラキラと汗を振りまきながら踊るそれは見ているこっちも興奮してくる。
何とも言えぬその一体感の余韻を引きずりながらリンダはこちらに戻って来た。
はぁはぁ。
まだ息が整っていないようだった。
「凄かったわねリンダ!」
「へへへっ、最高でしたデース! みんな盛り上がりましたデース!!」
「た、確かにすごかったわね」
「‥‥‥アメリカ仕込みのようなチアダンスだった」
「あれ、凄かったです!」
「へへへっ、ありがとデース! ネット友達のアメリカの人に教えてもらってたデース」
リンダは少しはにかみながらそう言う。
くっ、こいつたまに素で可愛いからずるいのよね!
私がそう思っているといよいよ私の名前が呼ばれる。
「それでは次行ってみましょう。エントリナンバー八番、長澤由紀恵さんお願いします!」
司会に呼ばれて私は紫乃に追加された猫グローブをつけて前に出る。
そしてマイクで自己紹介してから紫乃に昨日教えられたダンスを始める。
『長澤由紀恵、よろしくお願いしますにゃん♪』
リンダのあのダンスに当てられてしまい思わずにゃんこ言葉で自己紹介してしまった。
ちょっと恥ずかしいけどこうなったらとことんまでやってやる!
私は音楽に合わせて踊り出す。
にゃんにゃんにゃぁ~ん♪
にゃんにゃにゃん~
紫乃と振り付けを練習したとおりに踊ると途端に会場から「ほうっ!」とか「はうっ!!」とか聞こえ始める。
よくは分からないアニメの画面を見せられながら振付をそれと同じにする様に紫乃に言われたど、これで良いのよね?
私は腰に手を当て後ろ向きになり腰を振る。
今回は紫乃から新しい尻尾を取り付けた方が良いって言われたからそれにしてもらったけど上にぴんと持ち上がった尻尾らしい。
なんでもそのアニメの中で踊っているネコミミの女の子も最後は尻尾がピンと持ち上がっているからそれの再現は必須だとか。
にゃんにゃんにゃぁ~ん♪
にゃんにゃにゃん~
「はうっ!!」
「ほうっ!!!!」
会場から次々に変なため息が聞こえる。
にゃんっ♪
音楽が終わって片手を顔の横に、もう片方を小脇に猫手ポーズでフィニッシュ。
片目をつぶるウィンクで会場に「にゃん♡」という言葉と共に顔を向けるとたくさんの男どもが胸を押さえ口から煙を吐いている?
「うぅぉぉおおおおおぉぉぉっ! メモリが足らないっ!」
一番前で聞き慣れた声がする。
見れば吉野君がお高いカメラでバシャバシャと私を写真に撮っていた。
うわぁっ、今更ながらだけど恥ずかしい!
私はそそくさとそん場を後にリンダたちの居る後ろの方へと引き返していくのだった。
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