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第一章Hello日本デース
1-1(金)こんにちわ私がリンダデース
しおりを挟む「何それっ!?」
私はいきなりの話に思わずテーブルに手を叩きつけてしまった。
「だからホームステイの子を家に迎え入れるのよ。お父さんの会社の取引先のお嬢さんよ。あ、大丈夫、日本語検定一級を持っているから日常会話くらいなら何とかなるって聞いてるからね」
お母さんは何故かニコニコしている。
「それにしても母さん、今晩の飯は大奮発だな。こんな分厚いステーキなんか出して大丈夫なの?」
お兄ちゃんは平然と晩御飯のステーキを食べている。
確かに家にしてはずいぶんと贅沢だ。
お兄ちゃんは美味しそうにそれを食べている。
「先方さんが牛肉一年分送ってくれるって話でな、なんでも向こうでは毎晩これくらい食べるのが当たり前なんだそうだ。これから来るお嬢さんが食事に困らない様にとの計らいでな。ついでにうちの分も送ってくれていると言う事なんだ」
「もうお母さん大感激よ! こんなに上質のお肉がただ何てっ!!」
お母さん、それにつられたのね‥‥‥
私はため息をつきながら久しぶりのステーキに手を付けるのだった。
* * * * *
「あれ? なんでこんな所に外人が?」
私が楽しくお兄ちゃんと学校から帰ってくると家の前でボストンバックを引っ張った女の子の外人さんがきょろきょろとしている。
「なあ由紀恵、もしかしてあの子がホームステイの子かな?」
見れば金髪碧眼の美人である。
そして何あれっ!?
高橋静恵に負けないくらいの胸っ!?
ちょっと薄着だからその凶器の存在が誇張されている。
思わずお兄ちゃんをチラ見する。
お兄ちゃんはちょっと顔を赤らませて少しゆるい顔をしている。
「お兄ちゃぁ~ん!!」
思わずお兄ちゃんの腕をつねる私。
「いてっ! 何だよ由紀恵?」
「私という者が有りながら何他の女見てデレデレした顔しているのよっ!」
「いや、別にデレデレなんか‥‥‥」
そんな会話をしていたらいきなり声をかけられた。
「すみまセーン、この近くにナガサワと言うお家ありまセーンか?」
あ、やっぱりこの子なんだ。
正面からこちらに話しかけてくる彼女は遠くで見ていた以上に美人でまだ幼さの面影が残っているせいでとても愛らしい。
ぐっ、なんかうらやましい!
む、胸だったあんなに!
「え、えっと。長澤の家ならここだよ。家がその長澤だよ」
お兄ちゃんは照れながらそう言う。
すると彼女はお兄ちゃんの顔を下から見上げまじまじと。
「もしかしてナガサワサーンの家の人デースか?」
「あ、うん、そうだよ。俺は長澤友也、こっちは妹の由紀恵だよ。よろしく」
「OH-っ! ナガサワサーン娘さんだけでなかったデース! 私リンダ・アンダーソン言いマース! 不束者ですがどうぞよろしくデース」
そう言ってその場で土下座して三つ指立ててお兄ちゃんにお辞儀を始める。
「わわわっ! ちょっと、何しているのっ!?」
「え、えっと、リンダさん? 何をいきなりしてるのよ!?」
思わず彼女の腕を取り引き起こす。
立ち上がらせながら膝とかについた埃を払ってやる。
しかし彼女はきょとんとして小首をかしげる。
「エート、日本ではお世話になる男性にはこうして挨拶すると聞きましたデース。その後『お風呂にしますか、お食事にしますか、それともワ・タ・シ? きゃぁーん♡』が一連の作法と聞きましたデース」
「ないから、そんな風習今の日本に無いからねっ! それにそれって夫婦の話よっ!!」
何この外人!?
やたらと変な知識詰まっている!?
「おかしいデース、一つ屋根の下に泊まる男女はこうするはずデース。それに友也サーン、ステキな人デース。私ラッキーデース!!」
そう言っていきなりお兄ちゃんに抱き着き頬の両方にキスする。
「なっ!? お、お兄ちゃんにいきなり何してんのよっ!?」
私は思わずリンダをお兄ちゃんから引きはがす。
するとリンダは更に首を傾げる。
「私はただ挨拶をしただけデース。これから親しくなる人への敬愛の挨拶デース。オーストラリアでは普通デース」
そう言って今度は私に抱き着いてきて同じように顔の左右にキスする。
抱き着かれた時にあの凶器がぼよんと押し付けられる。
そしてふわっといい香りの香水の匂いがする。
思わず「きっ!」となってお兄ちゃんを見るとやっぱりさらに緩い顔になっている!?
「日本ではそんな挨拶しません! うちではその挨拶禁止です! 特にお兄ちゃんには絶対ダメぇっ!!」
「そうなんデースか? では由紀恵にしますデース。仲良くしましょうデース!」
むちゅっ!
「#$%&っ!!!?」
い、いきなり私に口づけしてきたぁっ!?
私はリンダから思いっきり離れて唇を手の甲でごしごしと拭く。
「なななななっ!? なにいきなりするのよっ!?」
「敬愛のキスデース。特に親しくなりたいので特別デース」
にっこりと笑ってそう言う。
しかも天然無邪気の感じで。
お兄ちゃんはそんな私たちのやり取りを赤く成ってみている。
赤く‥‥‥
途端に私も真っ赤になる。
キスされた?
しかも女の子に?
‥‥‥ちょっと待って。
これって私のファーストキス!?
いやいや、初めてはお兄ちゃんにって決めてたのに!?
「も、もう嫌ぁぁぁぁぁっ!!!!」
住宅団地で私の叫び声がこだまするのであった。
* * * * *
「まさか一人でここまで来るとは思わなかったよ。駅まで迎えに行っても全然出て来ないから焦ったよ」
お父さんはそう言って笑っている。
携帯電話のアドレス交換はしていたらしいのにリンダからのメッセージに気付かず駅で待ちぼうけしていたらしい。
「思ったより早く着いたデース。バス乗ってみたかったデース。周りのおばちゃんが乗り方教えてくれたデース」
にこにこしながらリンダはそう言う。
全く、なんて外人よ。
「それでは改めてリンダ・アンダーソンデース、これからひと月よろしくお願いしますデース!」
彼女はそう言って私たち家族に普通にお辞儀をするのだった。
はぁ、なんか先が思いやられそう。
私はため息をつくのだった。
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