9 / 30
9
しおりを挟む『ご主人ーーーーーーーーーーー!!!!!』
突然、隣の部屋から叫び声が聞こえた。
「カリーッ!!!!!?!!!?!!」
................思えばあの時、何故俺はその叫び声をカリーのものだと思ったのだろうか。
俺は今、俺のベッドの上でガツガツと魚を食べる、猫耳としっぽをもつ小柄な少年の様子をただただぼーーっと眺めている。
『ごっ、ごしゅっ、ごしゅじん~~~~!!!!!!!!お、俺、人間、人間になった~~~~~!!!?!!?』
寝室の扉を勢いよく開けた時、その少年と目が合った。くりくりとした大きい目は少しツっていて、髪の毛と猫耳としっぽはカリーの色味そのままだった。
彼の発言と、その見た目から、おそらく。おそらく彼はカリーなのだろうと推測できる。
出来るのだが................
それを飲み込めるかは、また別の問題ではないだろうか。
あの件の睡眠薬が、人化するほどの作用をもつとは............まさかそこまでのものとは思うまい。早めに回収し始めてよかった.........っと、これは現実逃避だな。
少年は大量にあった魚をペロリと平らげ、今は手を舐めていた。................毛繕いのつもりだろうか。
しばらく舐めていた彼だが、満足したのか、毛がないことに今更気づいたのかはわからないが、毛繕い(?)をやめ、ベッドから降り、こちらに四つん這いで近づいてきた。
「ご主人~。ご馳走様。今日もおいしかったよ。」
「あ、あぁ。それは良かったな。」
「うん!」
いい笑顔でお返事をしたカリー(仮)はそのまま、俺の膝の上にぽすんっと座った。
「っっ!!?!! な、何して.........」
「.......? 何って、ここは俺の寝床だろ?おなかいっぱいでまた眠くなってきたんだ。いつもみたいに撫でてくれていいんだぞ。」
「あ、あぁ...............。」
そう言って、気持ちよさそうに目を閉じてしまった。
............まだ俺の頭は回っていない。とりあえず望まれた通りに頭を撫でてやる。
グルグルグルグル
撫でる手に擦り寄り、喉を鳴らす様子は、まさにカリーだった。
「カリー....................」
そこで俺はやっと、やっと、カリーが生きていることを認識できた。
人間の睡眠薬が、動物に、それも小さな猫にどのくらいの影響を与えるのかを考えると怖かった。急にカリーの息が止まってしまうのではないかと思うと、夜も寝られなくなった。............最悪の結末も、覚悟しなくてはいけない状況だった。
カリーは、生きている。よくわからない作用で人間の身体にはなったが、カリーはカリーだ。俺の膝の上で眠る、可愛い、可愛い、俺のカリー。
戻ってきた、以前より重くなった膝の温かさに涙が出てくる。よかった。よかった............。
なぁ、カリー。猫なお前も、人間なお前も、お前であることに変わりはないんだよな。
今度は絶対守るから。危険な目には、もう絶対、合わせないから。
ずっと一緒にいてくれよ。
55
お気に入りに追加
229
あなたにおすすめの小説
「頭をなでてほしい」と、部下に要求された騎士団長の苦悩
ゆらり
BL
「頭をなでてほしい」と、人外レベルに強い無表情な新人騎士に要求されて、断り切れずに頭を撫で回したあげくに、深淵にはまり込んでしまう騎士団長のお話。リハビリ自家発電小説。一話完結です。
※現在、加筆修正中です。投稿当日と比較して内容に改変がありますが、ご了承ください。

気付いたらストーカーに外堀を埋められて溺愛包囲網が出来上がっていた話
上総啓
BL
何をするにもゆっくりになってしまうスローペースな会社員、マオ。小柄でぽわぽわしているマオは、最近できたストーカーに頭を悩ませていた。
と言っても何か悪いことがあるわけでもなく、ご飯を作ってくれたり掃除してくれたりという、割とありがたい被害ばかり。
動きが遅く家事に余裕がないマオにとっては、この上なく優しいストーカーだった。
通報する理由もないので全て受け入れていたら、あれ?と思う間もなく外堀を埋められていた。そんなぽややんスローペース受けの話
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。

【完結】おじさんの私に最強魔術師が結婚を迫ってくるんですが
cyan
BL
魔力がないため不便ではあるものの、真面目に仕事をして過ごしていた私だったが、こんなおじさんのどこを気に入ったのか宮廷魔術師が私に結婚を迫ってきます。
戸惑いながら流されながら?愛を育みます。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
悩ましき騎士団長のひとりごと
きりか
BL
アシュリー王国、最強と云われる騎士団長イザーク・ケリーが、文官リュカを伴侶として得て、幸せな日々を過ごしていた。ある日、仕事の為に、騎士団に詰めることとなったリュカ。最愛の傍に居たいがため、団長の仮眠室で、副団長アルマン・マルーンを相手に飲み比べを始め…。
ヤマもタニもない、単に、イザークがやたらとアルマンに絡んで、最後は、リュカに怒られるだけの話しです。
『悩める文官のひとりごと』の攻視点です。
ムーンライト様にも掲載しております。
よろしくお願いします。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる