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しおりを挟む俺の最近気になっていること。それは
「おはよう、カリー。今日も美しい毛並みだな。」
そう言って俺を撫でる、この男。
俺に魚をくれる人間の新入りだ。
新入りだが、持ってくる魚の鮮度は1番だ。ちょっと臭みのある魚も好きだが、ふれっしゅなやつも美味いんだ。............まぁ、野良猫にやるようなモンではないだろうけどな。くれるっていうから、べつに気にしないけど。
「ほら、飯だぞ。よく噛んで食べろよ。」
お、キタキタ。今日の贅沢メシ。わざわざ食べやすいように切ってくれちゃってさ。猫に優しい男はモテるよ、きっと。
あ、言ってなかったな。この男はいけめんだ。しょうゆ顔........だったかな............まぁいいだろ。なんだか剣を振り回していそうな、ガタイのしっかりした人間だ。
もぐもぐ、あぐあぐ。ん~んまい。今日の魚もうまい。夢中になって食べているとすぐになくなってしまう。
うん。満足だ。
「にゃあ」
一応お礼もする。食べ終わるのを待っていたとばかりに撫でてくる手も甘んじて受け入れてやる。............あ~そこそこ、あ!そこやだこっち。.............なんで撫でるのやめた....?あ、トントンいい............にゃぁ............
「みゃぁ.....」
「はは、気持ちいいか、カリー。」
べ、別に?お礼に撫でさせてあげただけだからさ?別にね?せっかくだから膝で寝てあげてもいいんだよ??
「お、膝に来てくれるのか。可愛いな、カリー。」
ま、まぁね。お猫様だから。当たり前だよね。................人間、あったかぁ。
そのまま少し(※1時間)だけ、人間の膝でまどろんだ。『そろそろ........ごめんな、また明日な。』っておろされて不満だが、まぁ、また魚が食べたいから、返事でもしておくか。
「みゃ」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「........本当に、賢い猫だよ。カリーは。」
「オリエン様、また野良猫に会いに行っていたんですか?」
「あぁ。............なぁ、猫は人間の言葉がわかるものなのだろうか。」
「え?いやぁ.........多少わかるものがあってもおかしくはないと思いますが............いきなりどうしたんです?」
「いや、まるで返事をするみたいに、俺が声をかけるとタイミングよく鳴くんだよ.....。」
「へぇ....まぁ、たまたまじゃないですか?まだ魚が食べたい!のオネダリでは?」
「んー........そうかなぁ。」
「ま、最近のいい息抜きになっているようでよかったです。もうこの際飼い猫にしてしまったらいかがです?毎回抜け出されるのはこちらとしても困りますし。」
「酷い言われようだな.....。んー........聞いてみるか。」
「その猫にですか?ふふ、お返事してくれるといいですね。」
『また面白いことを。』みたいな顔で笑われたのが気に食わないが、『猫が人間の言葉を理解している』という確証はないので我慢しよう。
............いや、やはりわかっているような気がするんだよなぁ.....。
カリーとは、最近俺が街で可愛がっている野良猫の名前だ。耳としっぽが一部白い、黒猫である。
出会ったのは本当にたまたまだった。毎日の執務に疲れ、息抜きとして街を歩いていた時、気持ちよさげに日向ぼっこをするカリーを見つけた。通常であればスルーしていたであろう野良猫。だが、その時俺は無性にその猫に構いたくなった。
ゆっくり近づいて、警戒されないように、慣れるまでそのまま何もせずしゃがんで待つ。
しばらく一緒に日向ぼっこをしていると
「にゃ」
と鳴き声が聞こえた。
ゆっくり野良猫の方を見ると、さも『仕方ないなぁ、撫でてもいいよ。』みたいな顔で見上げてきていて、その人間ぽい仕草にとても驚き、惹かれたのを覚えている。
そんな出会いから毎日、新鮮な魚を持ってカリーに会いに行っている。
カリーは........飼い猫になることを了承してくれるだろうか。
『もしカリーが屋敷に来たら』という想像をしながら、その日まだまだ残っている執務を片付けていった。
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