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本編の裏での別のお話。
01
しおりを挟むattention!
本編を読み終わった後にお読みください。
俊くんは出てこないです。
それでもよろしければ、どうぞ!
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
神獣様の森に良からぬものが侵入しないよう、24時間体制で見回るのが俺達神森兵。
神獣様は、この森に面した国々に結界をはり、雨を降らせ、大地を富ませるお力を持つ。いわば神の代弁者である。
俺はフェン・リーリル。時が経つのは早いもので、俺が神森兵になってから、もう3年も経っていた。
「神獣様、いつもありがとうございます....!!我が故郷の特産品であるピールが収穫の季節となりました...!!!」
「まーた森に向かって拝んでんのか。お前の神獣様信者具合もすげーもんだな。」
「ギル!当たり前だよ!!神獣様によって結界がはられるようになってから故郷は実り良い土壌になり、家族みんな餓える心配がない生活を送れているんだから....!!本当にすごいよね、神獣様....!!」
...........なんて熱弁してみるけど、俺が神獣様を信仰するのは故郷の事だけが理由じゃない。
神森兵は、ペアで生活と業務を行う。部屋も、飯も、全部一緒だ。
.........俺はペアである、ギル・ハーベルが恋愛の意味で好きだ。神獣様を信仰して、故郷から出てきた田舎者な俺に、ペアになったギルは、それはもう良くしてくれた。
美味しい店、地元民行きつけの店、綺麗な景色が見える場所。どれもこれもギルに教えてもらった。好きになるのに、時間は掛からなかった。
神獣様がいらっしゃらなければ、俺は故郷から出てこなかったし、ギルに会うこともなかった。ペアになって、こんなに幸せな日々を送ることもなかっただろう。すべては神獣様のおかげだ。
「はーーー。目ぇキラキラさせちゃって........。はいはい。今日も頑張って見回り行きましょーねぇ。」
「うん!勿論!」
.............たとえ、いつか、ギルに彼女が出来て、結婚して、俺と住んでいるこの部屋を、出ていくことになったとしても。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
『なッ!?!?貴様!神獣様に向かって』
..........後悔先に立たず、とはこの事だと思う。
「まさか、あのタイミングで番様が顕現されるたぁ、思わないわな。」
「.................。」
「まぁ、番様のご温情で故郷は問題なさそうでよかったじゃないか。」
「...................。」
「(駄目だ。信仰余って、あろう事か番様に暴言を吐いた己を悔やみまくってる。).....仕方ないだろう。突然の事に理解が間に合わず、咄嗟に出てしまった信仰心なんだから。」
「....................ピール、取ってくる。」
「んぉ?おぉ、いきなりだな。なんでだ?」
「神獣様に捧げる。故郷で取れた自慢のピールだ。捧げてから、神獣様の森の外で懺悔する。」
「お、おぉ。んで?」
「..........俺が死ぬくらいには、神獣様のお気持ちが少しでも晴れていると、いいなぁ.........。」
「........まさかとは思うが、お前死ぬまで懺悔し続けるつもりか?」
「当たり前だ。.........それくらいの事を、俺はしたんだ.......。それに、何の罰も受けずにのうのうと生きていくなんて、故郷に帰ったらどんな目にあうか.......。俺、実は故郷の代表なんだ。みんな俺みたいに毎日祈ってる。かぁちゃん達だって、血の繋がった息子である俺より神獣様の方が大事だって、前即答してたし........。」
今回のことで、俺はクビを切られるだろう。
クビを切られただけでなく、その理由が神獣様の大事な大事な番様に暴言を吐いたからだなんて............。
無傷で帰るなんて、絶対に許されない。
本当に、何ていう事をしてしまったんだ。いきなり過ぎて動転してしまった、という言い訳は通用しないだろう。
...........でも、これでよかったのかも知れない。いや、良くはないんだけど.........。..................これで、ギルが他の女と幸せになる日に怯えて過ごす必要がなくなるんだ。
.........最近、夢に出るくらい、酷かったもんな。
もう少し。あともう少し一緒にいたいと思う気持ちも大きいが、その分、後に与えられる絶望は大きい。
恐らく、死にたくなるくらいの。
それならば、今までお世話になった、幸せを与えてくださった神獣様に、お礼と、懺悔をしてこの世を去りたい。
「お、おいおいおいおい、待て待て待て待て。と、とりあえずな?とりあえずピールはお供えに行こう。うん。それからは相談しよう?な?俺も一緒に行くから。」
「ギル..........。最期まで迷惑かけてごめんな.........?」
「........嫌、だからな。絶対、させないからな.........。」
『信じられない、信じたくない、嫌だ』
心底思ってる顔だ。嬉しい。ギルにとって俺は、そういう感情が出るくらいの間柄ではあったんだ。
それだけで、もう、満足だ。
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