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しおりを挟む(ラブホなんて、初めて入った。)
とあるホテルのエレベーターの中。
ラブホテル。人と人がそういう行為をする場所。
初めて入ったラブホで、俺は彼に処女を捧げる。
その代わりに一時的でも使ってもらえる。
(幸せ........)
思わず口が緩む。
「何、可愛い顔してるの?」
そう言うが早いか、俺は進さんに腕を引かれて、少しの衝撃を感じた後、いい匂いと温かさに包まれた。
「あ.......へへ........進、さん.....」
『今だけ』という免罪符の効果は大きい。進さんの背中に縋り付き、胸に頬ずりする。
(もう、満足かもしれない。このまま一緒のベッドで寝られたら、もう............。)
「..............ねえ、真智。俺さ、この程度のことで満足しちゃう真智も可愛いと思うけどさ、物足りないんだよね。」
ものたり、ない?
「俺はこんなにも空腹で、今みたいな抱擁じゃ、腹の足しにもならないわけ。.........それなのに、俺の獲物は味見で満足とかいうの。..........酷くない?」
俺の頬を優しく両手で包んだと思ったらグイッと上を向かせられる。視線の先には進さんのあの野獣みたいな、ギラギラした目。
(え、あ、れ?)
「なぁ、真智?もっと堕ちてきて?俺と同じくらいになって、執着して?愛されていることが息を吸うくらい当たり前だと思って?愛することが、息を吐くくらい当たり前だと思って?」
もしかして、
「.........進さん、もしかして俺のこと、結構........すき?」
「......................。うん。わかった。大丈夫だよ、真智。これから嫌ってくらい理解させるから。」
「.....ひ、ひぇ......」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
...........今更ながら、俺は進さんを図らずとも煽りまくったことを心底後悔している。
「あ゛、あ゛ぁッ!?♡ ~~~~~ッ゛ッ゛♡♡」
「うんうん、気持ちいいね?ココだもんな、真智のいいとこ。.....は、ッ、愛してるよ、真智。愛してる.....ッッ!!」
ごりゅッ♡
「ぃ゛や゛ぁあぁぁッ!!も、らぇっ!限界!!げんかぃいぃぃい~~ッッ♡♡しょこ、しょこやぇて........もぅ、らして........おわっぇぇ....ッ!!!♡」
「......だから、言ったじゃん俺。溶かすのやめたって。抱き潰すって。それに、こんなに美味しそうな獲物が可愛い顔して、しかも俺のでよがってるんだよ?............今やめるなんてありえないで、しょッ!」
ぐちゅッ♡ぐりッ♡
「おッ、ぁ、~~~~~~~ッ!?!?♡」
恍惚とした、なのにまだ飢えているような表情の進さんが、乾いた唇を舐めたところを最後に、俺の記憶は終わっている。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「進さんの馬鹿。最低だ。」
「俺の気持ちを疑ったお前が悪いよ。」
「ウッ....!で、でも、立ち上がれなくなるくらいまではしなくて良かったと思う........。」
「最後の方は真智から強請ってきてたよ?『しょこぉ♡』って、イテッ!ちょ、ごめんって!!布団の中に籠城しないで!寒いよ、真智~~~!」
「馬鹿!知らない!風邪でもなんでもひいちゃえ!!!」
「え~~?ひどいなぁ、も~。」
くすくす、笑ってるのが聞こえる。絶対揶揄われてる。
「は~~~~。」
ぎゅっ。
布団の上から伝わる、進さんの重さと包まれる感覚。
「..............なぁに。」
「真智が好きだなぁと思って。」
「なに、それ。」
布団があるから、進さんの熱は伝わってこないはず。布団に立てこもってるからかな?
すごく、熱い。主に顔が。
熱くて、熱くて、布団の中でもぞもぞする。
「..........真智。顔、見せて?」
「今は、ヤ....。」
「まーち。」
「..................。」
ごそごそ........ひょこ。
熱いから、冷ましたいから、仕方ない。仕方ないんだ。別に、進さんの言うことを聞いた訳じゃ、全然、ないんだよ........。
「あは、真っ赤だ。」
「..........進さん、だって。」
「うん。だって真智が好きだから。」
「~~~~~ッッ!!!」
「あっ!また籠城した!真智~!!籠城してもいいけど俺も入れて~~~!!!」
桜が散る寂しさは、俺に、大切な人を運んできてくれた。
今でもやっぱりあの季節は好きじゃないけど、..............嫌いでは、ないかな。
彼と出会ってから、初めてのあの季節。
今年からは、独りじゃなくて、二人で。
『僕は、ストーカー。』完
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