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第2章
呼んでいる声がする第2章(その16)イエロー星
しおりを挟む「偉い?」
その驚いた蓮花の表情に我に返った瑠子は慌てて返した。
「あ、都会で生きていくのって思って。それよりさ、
ごめんね。夜遅くに。」
「え、大丈夫。瑠子ちゃんと話したかったから。」
「良かった。」
ほっとした瑠子は、蓮花に言った。
「でもさ、スリルがあるよね。」
そう、こんな時間に喫茶ドールズにいる怪しい人々と
共に場に相応しくない二人がいるのがスリルだと瑠子は感じた。
瑠子は続けて言った。
「今日はイエローハウスに泊まったら?
遅いから。」
「そうする。ありがとう。」
「良かった。じゃあ、さあ出ようか。」
瑠子は言った。
二人は出ると、瑠子は1センチ程のロケット型のチョコレートを取り出した。
「蓮花ちゃん、チョコレート好きでしょ。手を出して。」
蓮花は右手を出した。
「あ、これ知ってるよ。ありがとう。」
歩きながら二人はそれを口に入れた。
「久しぶりだな。これ食べるの。」
「ロケットに乗ってあの星に行こう。」
と、宙を見上げた。
「星見えないけれど。」
二人は顔を見合わせて笑った。
「でもイエローハウスは、惑星。」
瑠子がそう言うと蓮花は言った。
「いいな。瑠子ちゃんの星。」
「けれど、星から旅立つ者もいるけれど。」
「えっ?旅立つ者?」
「そう、猫よ。」
「猫?」
「イエロー星には、猫がいるの。他の惑星に行くのよ。」
「あ、もしかしてあの坂の途中の猫?」
瑠子は首を振った。
「猫人間。」
「え、なあにそれ?」
夜もふけて来ると人は疲れが出て笑いのたかが
はずれるのだろうか
蓮花はけらけら笑って笑いキノコを食べたみたいに
なった。
こんな風に蓮花も笑うんだ。瑠子はこんなはしゃいだ様な蓮花の笑い声を初めて聞く様な気がした。
今日の事は、蓮花の心を輝かせたのだと瑠子は思った。
車内の窓の外にはいつもの様にコンビナートの明かりが
お祝いをするかの様にきらきら輝いていた。
「あの人は、思いやりも無い人だった。自己中心的で
あたしは、ロボットの様に思っていたと思う。」
「ロボット?」
「ポンコツロボット。」
「え、ポンコツなんかじゃないよ。」
少し笑って蓮花は言った。
「ありがとう。」
「もしロボットだとしたらAIロボット最新版だよ。」
それを聞いて瑠子は笑った。
アナウンスが聞こえて来た。
車両には、人が疎らだった。
居眠りをしているサラリーマンもいた。
「次は、浜岡駅。」
「下りなきゃ。」
もう、22時45分を回っていた。
さすがに夜中過ぎると瑠子は思った。
「これは、魑魅魍魎の世界に違いない。」
そう呟く様にいうと、まだ、笑いきのこの効果が
切れて無かったのか蓮花が笑いだした。
幸い駅の前にはタクシーが停車していた。
「あの、宇宙船に乗ってイエローハウス星まで帰るわよ。」」
そう言いながら黄色いタクシーの側を指した
「そうだね。」
笑いながら、蓮花は言った
近づくと瑠子は窓をコンコンと小さく叩いた
「あ、どうも。」
と言って運転手は目を覚ましてドアを開けてくれた。
海沿いの道も宇宙船だとあっという間に
通り過ぎた。
その時、まりもの前も通り過ぎた。
「まりも閉まってるな。」
呟く様に瑠子は言った。
その呟きに蓮花が言った。
「本当だ。」
イエローハウスに着くと
蓮花が
「おじゃまします。」
と軽く頭を下げた
「蓮花ちゃんてお嬢様みたいだよね。」
「そんな。」
笑いきのこの効力は、とっくに切れた様な、蓮花は
はにかみながら言った。そして
「嬉しい、また蓮花ちゃん部屋に来れて。
「いつでも、来てね。」
蓮花は、嬉しそうな表情をした。
それから、輝く様な笑顔で頷いた。
「夕飯食べた?」
瑠子は首を振った。
「あたし別れたの
とうとう別れられたわ。」
蓮花は目覚めた様に言った。
つづく
いつも読んでいただいてありがとうございます
肌寒くなりましたね^^
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