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第2章
呼んでいる声がする第2章(その12)佐季店長と駅
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呼んでいる声がする第2章(その12)駅と佐季店長
蓮花と朝一緒に駅ビルのカシカルに通勤した。
瑠子は遅番だったので、途中本屋で時間を潰した。
その日は佐季店長とカシカルの社食にお昼に行った。二人共にチキンカレーを頼んだ。
風の谷線が行きかうのが眼下に見える窓の近くに陣取った。
蓮花とその彼氏の事を佐季店長に話した。
「ええ?そんな自分勝手な人と、よく今まで別れなかったよね。」
「そうなんです。でも別れるって言ってたので。今度こそやれると思います。」
と、答えた。
その視線につられて
「その人タイプで言えばどんな人?」
「人魚姫。」
「え?」
早妃店長は、笑いながら聞き返した・
「じゃあ、薄幸なのね。」
「はい、今までは、」
そう言ってから瑠子は、はっとした。
彼女が、前世までもが不幸な事を思いだした
あの夢が過去生だったとしたならばだけれど。
「でも、前世も不幸かもしれません。」
「どういう事なの?」
「あ、早妃店長には言ってなかったですね。その人と
同じ夢を見るんです、あたし。戦争中の焼夷弾が・・・」
「焼夷弾?」
「消せない火災を引き起こす爆弾です。」
猫男に教わったその名称を口にした。
「恐ろしいわね。」
「はい、その焼夷弾で町は火で覆いつくされていて、その中を女の人が何処かに
行こうとしていてあたしが引き留めているのです。
その人は木の所にいてあたしが行ってはダメと引き留めるんです。
するとその人が、いいえ、行かなくてはいけないんですって、たぶん愛する人の場所に。」
「その場所はきっと危険な所よね?」
「だと思います。」
「切ないね。」
「それで、この夢を何回も見るんです。ここ何日かは、あまり見ないのですが。」
「何度も夢見るなんてめったに無いわよね。」
「はい、確実に同じ夢かはわからないのですけれど
とても似通っているんです。火の街を行くなと止める側と止められる側が違うだけで、蓮花ちゃんと同じ夢なんじゃないかと思ったりして。」
そう言った途端早妃店長は、目を瞬かせた。
「やっぱり前世ぽいね。」
そう言ってからため息をついて言った。
「それにしても、あなたの周りは童話の様ね、猫男君に人魚姫。」
その言葉に、瑠子は苦笑いをした。
それから窓の外の風景に身をやった。
窓の下を見ると現代の象徴的な羽根駅には、沢山の人々が行きかっている。
あの駅に向かう途中で悲しそうな蓮花と初めて会った日の事を思い出した。
今思えば本当にあの時の彼女は物語の世界から飛び出して来たかの様な感じであったと思った。
冷たい雨が降っていたなと、あの日とは違う筋雲が覆う空に瑠子は目を移した。
読んでいただいてありがとうございます
つづく
蓮花と朝一緒に駅ビルのカシカルに通勤した。
瑠子は遅番だったので、途中本屋で時間を潰した。
その日は佐季店長とカシカルの社食にお昼に行った。二人共にチキンカレーを頼んだ。
風の谷線が行きかうのが眼下に見える窓の近くに陣取った。
蓮花とその彼氏の事を佐季店長に話した。
「ええ?そんな自分勝手な人と、よく今まで別れなかったよね。」
「そうなんです。でも別れるって言ってたので。今度こそやれると思います。」
と、答えた。
その視線につられて
「その人タイプで言えばどんな人?」
「人魚姫。」
「え?」
早妃店長は、笑いながら聞き返した・
「じゃあ、薄幸なのね。」
「はい、今までは、」
そう言ってから瑠子は、はっとした。
彼女が、前世までもが不幸な事を思いだした
あの夢が過去生だったとしたならばだけれど。
「でも、前世も不幸かもしれません。」
「どういう事なの?」
「あ、早妃店長には言ってなかったですね。その人と
同じ夢を見るんです、あたし。戦争中の焼夷弾が・・・」
「焼夷弾?」
「消せない火災を引き起こす爆弾です。」
猫男に教わったその名称を口にした。
「恐ろしいわね。」
「はい、その焼夷弾で町は火で覆いつくされていて、その中を女の人が何処かに
行こうとしていてあたしが引き留めているのです。
その人は木の所にいてあたしが行ってはダメと引き留めるんです。
するとその人が、いいえ、行かなくてはいけないんですって、たぶん愛する人の場所に。」
「その場所はきっと危険な所よね?」
「だと思います。」
「切ないね。」
「それで、この夢を何回も見るんです。ここ何日かは、あまり見ないのですが。」
「何度も夢見るなんてめったに無いわよね。」
「はい、確実に同じ夢かはわからないのですけれど
とても似通っているんです。火の街を行くなと止める側と止められる側が違うだけで、蓮花ちゃんと同じ夢なんじゃないかと思ったりして。」
そう言った途端早妃店長は、目を瞬かせた。
「やっぱり前世ぽいね。」
そう言ってからため息をついて言った。
「それにしても、あなたの周りは童話の様ね、猫男君に人魚姫。」
その言葉に、瑠子は苦笑いをした。
それから窓の外の風景に身をやった。
窓の下を見ると現代の象徴的な羽根駅には、沢山の人々が行きかっている。
あの駅に向かう途中で悲しそうな蓮花と初めて会った日の事を思い出した。
今思えば本当にあの時の彼女は物語の世界から飛び出して来たかの様な感じであったと思った。
冷たい雨が降っていたなと、あの日とは違う筋雲が覆う空に瑠子は目を移した。
読んでいただいてありがとうございます
つづく
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