呼んでいる声がする

音羽有紀

文字の大きさ
上 下
49 / 61
第2章

呼んでいる声がする第2章(その9) 未来

しおりを挟む
呼んでいる声がする(第2章)その9



イエローハウスのそんな事を考えていると

猫男は言った

「今日は前世の話聞かせてくれてありがとう。」

「いえいえ。」

それだけ言うのが精一杯だった

自分の中の猫男の好感度が上がった気がしたからなのかもしれない。

それはまずいと無言でイエローハウスの前まで来た

「じゃあ。」

猫男は、そう言うと自分の部屋のドアをしめた。

その途端に瑠子は安堵のため息をつき

「こうして、前世トークの会は終了したのでした。」

と、呟いた。

けれど、あたしに構うのは、もう辞めて欲しいと瑠子は思った。

イエローハウスの前で彼が一緒にいた女の子を思いだしながら瑠子は思った。

蓮花ちゃんの彼氏もあんな感じなのかな、いや、いかにも性格の悪そうな蓮花の彼氏と一緒にするのはちょっと違うかなと思った。

そのとき、瑠子の頭の中に

「瑠子ちゃんは、大学のみんなとは違うんだよね」

と、猫男が言っていたと声が聞こえて来た。

それを振り払う様に手を洗った。

「冷たい。」

思わず呟いた。

次の日、佐季店長は休みだったので内心ほっとした。また佐季店長の猫男に関する独自の意見を聞くのは、今は耐え難かったからだ。

昼休み、蓮花の務める1階の鞄売場ネリネに出かけた。

以前見た事の有る表情で蓮花は、店の前に立っていた。

「蓮花ちゃん、何時終わり?」

「八時半。」

「あ、じゃあ一緒に帰ろうよ。」

蓮花は頷きながら表情が笑顔になった。

駅ビル前で待っていると黄色いコートを着た蓮花が現れた。

「そのコート蓮花ちゃんに合うね。」

「ありがとう。」

はにかんだ様子で彼女は言った。

「あの彼とはどう?」

恐る恐る聞いた。

「相変らず。」

暗い表情でそう言う蓮花に瑠子ももやもやした。しかしあえて

表情を変えずに返した。

「そうなんだ、で、今日は連絡する日なの?」

蓮花は首を振った

「良かった。じゃあ、うちに来ない?」

とイエローハウスに誘った。

「行く。」

蓮花の、顔はぱっと輝いた。

「あたし、夕食作るよ。パスタで良ければ。」

「え、ありがとう。」

こうして瑠子は蓮花と羽根駅前のスーパー小波に寄った。

パスタは家にあるので、ベーコンと市販のレトルトのカルボナーラソースを買った

 それから、樹海線に乗ってイエローハウスに続く道を二人で海風吹く道路を歩いた。

相変わらず蓮花も毎晩火の海になった街の夢を見るとの事だった。

瑠子も見ているので、その不思議に改めて驚きあった。

それから話しはこれから通るまりもの店主の話になった。

「店の人が、『若いって良いね』って言ったけれどそうかな?」

と、瑠子が蓮花に問いかけた。

「わからないけど、あたしは、あんまり。」

その言葉をしんみりと瑠子は聞き、そして

「あたしも、本音言えば辛うじて生きている。」

と、続けた。

それを聞いて蓮花は、くすっと笑って真剣な面持ちで言った。

「いつも思う、いつかこの世界から抜け出したいって、誰かが。」

「なになに?」

「笑わない?」

瑠子は頷いた。

「あたしを心底好きになってくれる人が助け出してくれるの。」

 それを聞いて驚いた。

蓮花の心の本音を、初めて聞いた様な気がしたからだ。   

                               つづく




読んでいただいてありがとうございました。


(猛暑のおりご自愛くださ))
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

処理中です...