呼んでいる声がする

音羽有紀

文字の大きさ
上 下
46 / 61
第2章

呼んでいる声がする第2章(その6)瞑想

しおりを挟む
 その日は早番だった。

佐季店長は帰り際、瑠子の耳元で呟いた。

「楽しんでね、前世トーク。」

また、佐季店長また、ふざけてると思った。

 厚い雲が空に立ち込めてのいるのが階段の小窓の合間から瑠子の目に見えた。

 いちを海岸に行ってみるかと思ったがお腹空いた事を感じた。

 コンビニでメロンパンを買って小型スーパーまりも側の砂浜に座って袋を開けた。パン生地が固くて中のクリームの味が程よく甘くてパン生地が固くて予想以上に美味しかった。

その時佐季の猫男が瑠子ちゃんに興味が有るのよという言葉が心によぎった。

「雑念が、瞑想しよう。」

と、目を瞑った。しかしいつも瞑想しようとしても気がつくと他の事を考えてしまうのが常だった。

やはりその時もすぐに別の頭に考えが浮かんだ。

ここに引っ越して来たばかりの時は、あんなに開放されて楽しかったのに、最近は過去の事を思いだしたり変な夢を見たり、とそこまで考えてはっとした、また瞑想が上手くいかなかった事に落胆した。

その時、後ろから声がした。

「今、目を瞑ってなかった?」

「瞑想していたんです。」

「え、すごい。」

「でも失敗しました。」

 猫男は笑うと

「俺も、すぐ他の事考えちゃうんだよね。」

 猫男、妄想なんかするのかなと、疑わしい気分だった。

すると猫男は言った。

「来てくれたんだ。」

「どうせ帰り道ですから。」

「冷たいなあ。」

そう言うと猫男は瑠子の隣に少し離れて砂浜に座った

 そのころにはもうすでに海岸は薄暗くなっていた。

「前世の話聞かせてよ。」

「本当に興味あるんですね。」

「そういう事話す人、大学にはいないから。」

「いつもそういう話するわけではないんです。」

「でも、夢で見たんでしょ。」

「けれど、本当にそれが前世かはわからないから。」

「何度も見るのなら、可能性有るのじゃ無いかな。戦争の夢なの?もしかして

それって焼夷弾では、ないかな。」

「焼夷弾?」

「ああ、建物を焼き払う為に作られたものさ。」

「そうなのですか?」

「それで火の海になってしまうのさ。実は俺も街が焼夷弾で焼き払われた夢をよく見るんだよ。」

「ええ?」

「本当に、ここ最近さ、だから瑠子ちゃんの話を聞いた時に不思議な気がしてさ。」

 猫男までそんな夢を見たという事に瑠子は驚いた。

それなのに、そっけなく言ってしまった。

「おかしい、それって本当ですか、話を合わせてるとか。」

「そんな事ないよ、何で合わせなきゃなんないの?」

「それは、そうだけれど。」

猫男は笑った。

「瑠子ちゃん、君って本当、俺の周りにいないタイプだよ。」

その時、瑠子の脳裏には、佐季店長に真面目だと言われた事を思い出した。

             

                     つづく



読んでいただいてありがとうございます。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...