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第2章
呼んでいる声がする第2章(その4)月の見えない夜
しおりを挟む「今日は月が見えないね。月が見える日も良いけれどでも月の見えない夜も良いもんですね。」
「そうですね。月が有るとそればかりが気になってしまうというか。」
そう瑠子が言うと留萌さんは少し笑った。
「紫苑君もそう思いますかね?」
紫苑は猫男ね、心の中で変換した。
「わかりません、彼ってわかりにくい性格ですよね。」
「あ、いやね、彼も家が複雑だからね」
「ええわかってます。」
「そうですか。」
留萌さんはまじまじと瑠子を見つめてからそう言った。
それから留萌さんはまた続けた。
「猫達の為にバイトして、彼は、えらいですね。」
「え、猫達の為に?」
それを聞いて瑠子は驚いた。猫達の為にバイトをしているのか、自分の妄想は現実のものだったかと思案していると、留萌さんの次の言葉で拍子抜けした。
「いや、本人から聞いたわけでは無いのですが。」
なんだ留萌さんも妄想かと瑠子は思った。
ふと、留萌さんに、もやもやの一端を瑠子は話したくなった。
「あたし、戦争の夢を最近ずっと見るんです。」
「ああ、だからこの間言っていたんだね。」
「瑠子さんの前世ですかね」
「え、留萌さん、そう思いますか?」
「うん、なんか感じますね。」
留萌さん、怖い事言うなと思ったが、言わないでおいた。
そんな話をしているうちにイエローハウスに到着した。
「さようなら。」
「こうして、挨拶し合える隣人がいて幸せです。」
そう言って留萌さんはドアを閉めた。
そんな留萌さんは紳士的だと思い、瑠子は少し明るい気持ちになれた気がした
自分の部屋に入ると瑠子はため息をついた。
まりもで買ったマフィンをトースターで温めてスクランブルエッグを作ってバターを塗った。
「小さな幸せだわ。」
そう呟き窓辺に椅子を持って行って眺めながら食べた。
そんな事を考えているとどきっとした。ドアを叩く音が聞こえたのだ。
もしやとドアスコープを覗くとやはり猫男だった。
「何ですか。」
「昨日話していた前世の話さ、あしたまりもの側の海岸で続き話そうよ。夜9時さ
待ってるよ。」
瑠子が黙っていると
「じゃあね。」
そう言って自分の部屋に帰って行った。
「覚えていたんだ。」
とドアを閉めてから呟いた。
人の前世に興味あるのかな、からかってるのか何なんだと訝った。
今日もあの夢を見るのか、あの夢は嫌だななんか周りが暗くてオドロオドロシイのだもの。
それにしても猫男はもしかして前世の事、有益な情報でも有るのかな、まさかね
そんな風に思いながら、また瑠子は窓の外を見た。
暗い海が見える
ああ、あの海の向こうに行ってみたい瑠子はまた遠い海に思いを馳せた。
つづく
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