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第2章
呼んでいる声がする第2章(その2)夢と蓮花
しおりを挟むもう4日間も同じ夢を瑠子は見ている。その夜も、また蓮花がやまももの木に夢に出て来た。
涙声で蓮花の行く手を掴むのだ。自分の姿と悲しい気持ちが目を覚ましてからも心に残った。
目を覚ましてその日は休日だった事を思いだしたので3時頃夕凪書店に出かけて行った。
戦争の本を見つけてやまももの木の側に投下されたのかという事を調べたいと思ったのだ。
1週間もこの戦争の夢を見るのはどう考えてもおかしいと瑠子は思ったからだ。
前世とかが関連しているのかもしれないと思った。
しかし戦争関係の本の中にはあの場所の事が書かれていたのは見つからなかった。
やはりインターネットで調べる方が良いかなと思ってそこから立ち去ろうかなと思った時
ふいにまたあの声が聞こえた。
「何探しているの?」
顔を上げるとやはり猫男であった。何でいつも会ってしまうのか
彼はここに住んでいるのではないかと思う程であった。
猫男はニット帽を被っていた
「その本、何?」
「夢の話。」
「夢?将来の?」
「寝る時の夢。」
「あ、夢占い?」
「違う。毎日同じ夢を見るから、それで。」
「えー。それは。」
と意味深げな感じで言った。
「どんな夢なの?」
彼は、いつの間にか雑誌を手に取っていた。
「日本の戦争について。」
「え?」
驚いた様に猫男は瑠子を見た。
その真っすぐな瞳に戸惑いながら答えた。
「爆撃が。」
「それってゲームの話?」
「違う」
「それを毎晩も?尋常じゃ無いなあ。前世とか?」
「そういうの、詳しいの?」
「興味有るから。」
「戦争?それとも夢?」
「瑠子ちゃんに。その話面白いね。今度、続き話さない?」
その言葉を戸惑う瑠子お答を待たず猫男は腕時計を見ると焦った様に
「もう行かなくっちゃ。ごめん、またね。」
そう言って店から出て行った。
大きなため息を瑠子はついた。何でいつも会ってしまうのか
また、瑠子は戦争について調べようとしたがなぜか心臓が早鐘の様に打っていて
集中出来なかった。
近隣の戦争の時の歴史本は無かったのでもう探すのやめインターネットで見てみようと思った。家に向かう途中の公園のブランコに乗りながらネットで調べて見た。
幸いな事にやまももの木のある野々山駅周辺は大きな爆弾が投下された事を詳しく書いてくれてる人がいた。
戦争が終わる一か月前の事だ。
「そうか、やはり。」
瑠子は呟いた。
夜のブランコを漕ぎながら異常に輝く星を見つけた。じっと見つめたが
円盤では無い様であった。
ブランコから降りてイエローハウスに向かった。
今は戦争なんて、昔の事だと思ってたけれど本当に1945年に第2次世界大戦が終わったのなら70年位しかたってないのじゃないかと思った。
本当に大昔の事の様な気がしていたけれど、そんな昔じゃないのじゃないかと思った。
次の日の仕事の帰りに蓮花の働いているネリネに行ってみた
「蓮花!」
呼び掛けると蓮花ははっとした様に瑠子の方を見た。
「あ、瑠子ちゃん。」
嬉しそうにこちらを見た。
蓮花の仕事が終わるのを待っていて駅までの道を二人で凍えながら歩いた。
蓮花は、今までの蓮花もとても暗かった。
何か話しかけるのも拒まれる様な感じである。
「どうかした?」
「うん。」
「どうしたの?」
「昨日、彼に会わなかったの。」
「え」
それを聞いて瑠子は、良かったと思った。
話しを聞いている限りでは蓮花の彼氏は酷い人ではないかと思っていたからだ。
でも蓮花は元気が無い。
励まそうと瑠子は言った。
「いいよ、なんか蓮花ちゃん可愛いんだし、他にいるよ。」
本音が瑠子の口から飛び出してしまった。
蓮花は少しの沈黙の後、ため息の後心配気な表情で呟く様に
「そうかな。」
と言った。
その言葉に瑠子は、そうそうと頷いた。
彼女がやっとその気になってくれたのだと瑠子は思った。
暗い表情に蓮花をさせる彼氏、その人を見た事は無いけれどきっと酷い人に違い無い
と瑠子は思っていたのだ。
蓮花と別れてから、坂の途中の公園のブランコをこぎながら見た事の有る爪みたいな月を見ながら
なんで早く別れないのだろうかと蓮花の事を思った。その時夢の事を瑠子は思いだした。
「あ、そうそう、ヤマモモの木さ、戦争の事調べてみたんだけれど。あの辺一帯が爆撃にあったみたいよ。」
「やっぱり。」
蓮花はそういうと神妙な表情をした。
つづく
遅れてすみません
いつも読んでいただいてありがとうございます
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