呼んでいる声がする

音羽有紀

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呼んでいる声がする(その40)怖い夢

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 それから瑠子は猫男の自慢を聞いたり
まりもで猫の秀子ちゃんに話しかけたりチョコレートを買ったり
街灯の猫達に二人でご飯をあげたりした。
坂を登ってイエローハウスに着くと、ドアの前で猫男と別れ際に彼は言った
「俺、欠陥人間かな。」
「そんな事無いと思いますけど。」
「女の人信用できないんだよね。」
瑠子が黙ると
「あ、瑠子ちゃんは別。」
猫男は、瑠子をまっすぐ見つめてほほ笑んだ。
「いいんですよ。私も仲間に入れてくれても、じゃあ。」
そう言うと瑠子は自分の部屋の鍵を開けた。
 ドアを閉めると、
「あたし達の家庭環境だと心にトラウマを抱えて
結婚する事も無いのかもしれない。」
と、この今の気候と同じ様に寒々しさを感じた。
 昨晩は蓮花がいた部屋が今日は一人だけなのが
淋しかった。
その時、猫男の言葉を思いだした。
「瑠子ちゃんは別だけど。」
なぜか何回も響いて来る。
それを振り払った。
手を洗ってコタツでチョコレートを食べながら
携帯でユーチューブの旅をしている女の子を見た。
それを見てやまももの木を思いだした。
あたしも前世の夢を見たいなあと思った。
いや、あたしは見ないな、最近は、あまり夢も
見てないしなと瑠子は思った。
窓を開けた。夜と雪のにおいがする。
そして震えるほどの冷気を感じた。
「もし、行けるのなら夢の中で私もやまももの木の場所に行ってみたい
そして蓮花に会うんだ。」
でも爆弾は怖いなと思った
そして、また猫男の事を考えた。
瑠子は家族はいないと思っている。
だから猫男みたいに家族の事でがっかりもしない
そんな思いでまた窓の外を見たら暗い街と遠くの暗い海がもの悲しく感じた
のと風が冷たいので窓を閉めた
「ああ、明日も仕事だな。」
と呟いた。
 眠る前に祈ってみた
あたしの前世よ。夢に出てきてくださいと。
それが功をなしたのか、瑠子は夢を見た。
蓮花が泣きながら瑠子にお別れしますと語りかけて来たのだった。
瑠子は蓮花の腕を掴み悲しくて泣いて引き留める映像だった。
朝起きて、本当に蓮花との夢を見た事に驚いた。
あたしも蓮花と過去に何かあったのかと思った。
しかしそんな事が有りうるのだろうか
と考えながら身支度をした。
それは瑠子にとって恐ろし気な夢で、蓮花の周りは暗かった。
あたしも、あのやまももの木と関係が有るのだろうか。
そして来世に生きるあたしは、このイエローハウスの夢を見るのだろうかなどと
考えた。                       
                               つづく

 
読んでいただいてありがとうございました
明日は雪が降るそうです。



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