呼んでいる声がする

音羽有紀

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呼んでいる声がする(その37)カップラーメン

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真っ白い雪の街は怪しい程綺麗で純粋でそして危険だった。
特にイエローハウスの急階段はイエローハウスの住人の獣道が作られていたので
手すりに捕まって上がって行く事が出来た。
しーんと辺りは静まっている。
蓮花は先に階段の上で待っていた。
蓮花は階段の上から瑠子のおぼつかない様子に心配そうに見守っていた。
「ああ、怖かった。」
そう瑠子が言うと蓮花が安堵した表情をした。
彼女は勇敢なんだなと瑠子は思った。
「あ、なんか誰のアパートかわからないよね。」
と、首をすくめて瑠子は言った。
蓮花には、コタツで眠ってもらおうと思った。
少しでも暖房費を削ろうと苦肉の策で、格安コタツを
買ったのが良かった。
「今は、夜だから真っ暗で見えないけれど、海が向こうに見えるんだ。」
そう言って瑠子は、蓮花を開いた窓辺に呼んだ。
にこにこして蓮花はそこに来たので二人で窓を開けて眺めた。
こんな暗い中でも雪は薄っすらと白く見える
蓮花は耐えず嬉しそうにしていた。
「いいな、私も一人暮らししたい。」
「出来るよ。私も始めは無理だと思ったけれど
飲まず食わずでね、お金を貯めたの。だから蓮花ちゃんも出来るよ。」
「飲ます食わず?」
「まあ、それはオーバーだけれど。」
蓮花は笑った。
「高校の時さ、先生が引っ越すには敷金礼金、そして引っ越し代、莫大なお金がかかるから無理だって言って、信じちゃってた。
けれどね、ある日、本気で出ようと思った時、本当に無理なのかなって疑問が湧いたの。
それで調べてみて、1年間節約して貯めれば何とかなるんじゃないかって思った。」
「それで?」
「いつも、お菓子とか本とか買って無くなっていたお金を家に渡す以外何も使わず、我慢した。でもそれって希望があったから。必ず一人暮らしするんだ。この家から出るんだってさ。」
「希望・・・・。」
「だから我慢できたの。ああ、だからこのイエローハウスに越せた時は本当に嬉しかった。」
その時
北風が二人の体を吹き付けた。
「さぶっ」
そう瑠子が言うと蓮花は笑った。
蓮花は、ずっとその晩笑っていた
瑠子は、二人分のカップラーメンを作ってる時も。
そしてそれを差し出した時も
蓮花は美味しいと何度も連呼した。
「ふふふ、ただのカップラーメンだよ。」
「あたしも、カップラーメンがこんなに美味しいなんて思って無かったです。」
そう蓮花が言った。
初めて会った時、暗い表情だった蓮花を思いだした。
それが、今はこんなに笑っている、それが瑠子には嬉しかった。
                                                                                                 つづく
間が開いてすみません 読んでいただいてありがとうございます
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