呼んでいる声がする

音羽有紀

文字の大きさ
上 下
36 / 61

呼んでいる声がする(その36) わからない時間

しおりを挟む

蓮花は曖昧に笑うと俯いてため息をついた。考えている様だ。

「そう言われると・・・・。」

「ごめんね。込み入った事聞いちゃって。」

蓮花は首を振った。

「寒いね。帰ろうか。」

蓮花は頷いた。

時計を見ると10時前だった。

だいぶ遅くなったので瑠子は提案した。

遠慮していたが、瑠子がもう遅いからそうした方が良いと

勧めると最後は了承した。

野々山駅から列車に乗る。

人も疎らな社内は、物騒な気がして気が引き締まった。

しかし蓮花は嬉しそうに、車窓を見ていた。

車内の窓からは白くどこまでも続いていた。

寒々しく、雪の荒野の様だ。

「街の汚れが隠れているのね。」

蓮花は言った。

その時瑠子の心の中に浮かんだのは

蓮花を操る魔物の様な彼氏だった。この雪と共に魔物も消えれば良いのにと思った。

その時、蓮花は、笑った

「楽しみだな、瑠子ちゃんの部屋。どんなのかな。」

「狭いよ、でもね、窓から海が見えるの。」

「えっ、素敵。」

「ふふ。」

少し自慢気に瑠子は笑った。

改めて出会いの運命の不思議さを感じた。

夕凪駅を降りてからイエローハウスまで、さまざまな

話をしながら歩いた。

蓮花は、ハリポタが好きだそうだ。

「いろいろんは魔法が好きなの。」

「あたし、本は呼んだ事がないなあ。」

「あら、面白いわよ。」

「蓮花ちゃんが言うなら読んでみようかな。」

「でも、雪止んで良かったよね。」

「本当に。」

 雪の降らない雪景色はいつも見ている景色じゃないけれど違う世界の様だ。

「坂は、雪降っているから滑るから気をつけてね。」

蓮花は、少し怯えた表情をした。

「あ、平気だよ。わたしも何とか上れたから。」

「あたし、家に人来るの初めてよ。」

雪の夜は、いっそう楽しくなった

 イエローハウスの下の坂も滑りやすかったがこわごわ

登る瑠子と違って蓮花は怖がっては居なかった。

蓮子さんて以外と勇気あるんだなと思った。

猫達は坂の途中の電柱下にいなかった

「今何時だろう。」

腕時計を見てみた

11時過ぎていた。

その時間が遅いのか早いのかわからなかった。



いつも呼んでいただいて本当にありがとうございます
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

後宮の記録女官は真実を記す

悠井すみれ
キャラ文芸
【第7回キャラ文大賞参加作品です。お楽しみいただけましたら投票お願いいたします。】 中華後宮を舞台にしたライトな謎解きものです。全16話。 「──嫌、でございます」  男装の女官・碧燿《へきよう》は、皇帝・藍熾《らんし》の命令を即座に断った。  彼女は後宮の記録を司る彤史《とうし》。何ものにも屈さず真実を記すのが務めだというのに、藍熾はこともあろうに彼女に妃の夜伽の記録を偽れと命じたのだ。職務に忠実に真実を求め、かつ権力者を嫌う碧燿。どこまでも傲慢に強引に我が意を通そうとする藍熾。相性最悪のふたりは反発し合うが──

君へ

87135
ライト文芸
何故君は何も言わずに死んでしまったのか 何故僕は今更言いたいことが溢れるのだろうか

幽霊アパートにようこそ☆

寺本
ファンタジー
ようこそ、幽霊アパートへ。 私はここの管理人、ユーレイ・ア・パートです。 幽霊アパートとはアパートに住んでいる幽霊たちの悩みを夜明けまでに解決しないと、一生出られないと言われている恐ろしいアパートです。 ━━今まで出られた人は誰もいません。さて、次は一体誰が挑戦するのでしょう。

ある日、家に帰ったら。

詠月日和
ライト文芸
「……不法侵入だ」 「わいが言うのもなんやけど、自分、ずれてるって言われん?」 ぽてりと重たそうなまあるい頭につぶらな瞳。 ある日家に帰ったら、ぬいぐるみみたいな『ペンギン』に出迎えられた。 ぺたぺたと足音を立てながら家中を歩き回る。よく食べてよく寝て、私が出掛けている間にテレビを夢中で見ては電気代を底上げする。 20歳をきっかけに一人暮らしを始めたはずの私の生活に、この意味のわからない生き物は現れた。 世界を救うわけでもなく、異世界に迷い込むわけでもなく、特別な使命を課せられたわけでもなく、未知の生物とただ同居してるだけの毎日。 特に何があるわけでもないけれど、話し相手がいるだけで毎日が少しだけ生きやすい気がする。 間違いなく不思議で、でも確かに生活に溶け込んだ今の私の日常について。

処理中です...