呼んでいる声がする

音羽有紀

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呼んでいる声がする(その22)蠍座と冷たい風

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「大変ですね。」

「そんな事ないよ。短時間だしね。」

 猫男は別の占星術の本を手に取りながら言った

「俺、蠍座なんだ。」

「そうなんですか。」

「蠍座ってどういう性格なの。」

「え、情熱的で。」

「へえ、合ってる。」

「え?」

 その時、ふいに声がした

 見覚えの無い女子二人が入って来た。

「あ、いた、紫苑。」

 という声が聞こえ、続いて

「バイト終わったの?」

 という声が続いた。棚の影からじっと顔を見つめた

 瑠子はさりげなく入口に向かった。後ろでかしましい声がしてドアを閉めると聞こえなくなった。

 瑠子は速足で家路に向かった。

 外はいよいよ北風が冷たく瑠子は海岸線をずんずん進んで行った

「大学生か。」

 ぽつりと呟いた。

 空には月が雲に隠れてほんの一部だけがダイヤモンドの様に光っていた。

あの人は、留年して大学にいるのだよね。

家が金持ちなのかな。バイトはお小遣いなのかな。

まあいいか、あんな猫男の事なんか

瑠子は首を振った。

それにしても今日も寒いなと瑠子は思った。

まりもに寄って板チョコレートとカリカリのかつおぶし味を買った

まりもの店主はにこにこしながら言った

「わたしも、猫飼ってるんだよ。今度連れて来るよ。」

「あ、そうなんですか。」

「秀子ちゃんていうんだよ。」

「秀子ちゃん?」

「ああ、秀才みたいに頭が良いからなんだ。」

思わず瑠子は笑った

店主も笑った。

「はい、1400円ね。」

赤い折り畳み財布からお金を取り出すとその中から取り出した

「ありがとうね。」

店主は明るく言った

かわいい猫達の為だわと瑠子は思った。

急ぎ足で猫の集まる街灯下に向かった。

冷たい外気の中、猫達はお腹を空かして電柱下で待っていた。

黒は一番初めに、にゃおと鳴いて足に体を摺り寄せて来た

「クロちゃん。」

瑠子は黒の頭を撫でた。そして街灯の裏に隠してある猫の餌入れを取り出した

その中にカリカリをいっぱいにした。   

つづく



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