呼んでいる声がする

音羽有紀

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呼んでいる声がする(その18)温かい佐季

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 雪の止んだ街は、太陽が差して雪に反射してきらきらと輝いていた。

人の歩いた道を用心深く歩いた。

 マーマレードに着くと、佐季店長がやつれた顔の瑠子を見て昨夜の雪の事を聞いて来た。

瑠子思いだして暗い顔で言った。

「昨日バス停で、2時間も待ってバスの中でも2時間のろのろ運転で。」

「えっ、本当?」

「止まってばかりだったので暖房が効かなくてコートが濡れていて寒くて。」

 すると、店長は瑠子に抱きついて来た。

「ごめんなさい。宿を取ってあげれば良かった。大変だったね。」

 驚いて呆然とした。

「いえあの。」

「風邪引かなかった?」

「ええ、」

「風邪声ね。上で休んだら。」

「そんな、大丈夫です。」

「目の下真っ黒よ。」

「いえ、本当に。」

そう言いながら瑠子の心は今まで感じた事の無い温かい感情が湧いて来た。

なんて優しい人なのだろうか

その日は幸せな気分に包まれてじんわりとした思いで仕事をした。

仕事が終わって昨夜の雪の日の蓮花さんの事が気に彼女の務める1階の鞄屋に寄ってみた。

「いらっしゃいませ。」

低い声で前の方に立っている髪の長い女性店員に問いかけた

「並木蓮花さんは、いますか。」

「今日はお休みです。」

つ んとした冷たい表情で言うとレジの方に行ってしまった。

それ以上取り付く島も無かったのでもっと聞きたかったがあきらめた。

昨夜蓮花さんは雪の中、帰れたのであろうか。心配な気持ちで家路に向かった。

途中、道が凍っていて何度も滑って転びそうになった。

頭など打ったら大変なところであったが、何とかイエローハウスの

階段もゆっくりながら無事に上がれた。こんな怖いそして瑠子にとって

危険な雪の経験はめったにないなと思った。

                               (つづく)

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