呼んでいる声がする

音羽有紀

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呼んでいる声がする(その11)夜のブランコ

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 夕凪駅を降りると辺りは薄暗くなっていた。

 駅前の通りのコンビニでトマト味のカップラーメンと猫の缶詰を3個買った。海岸沿いの通りは、暗くなり人通りも無い海の波の寄せる音だけが静かに響いて来る。そんな中、遠くの方に店の明かりが灯っている。こないだ猫男が猫にご飯をあげなかったので、急いで猫のご飯を買った店まりもだ。この店は、何時までやっているのだろうかと瑠子は思った。

 そんなまりも通り過ぎいよいよ辺りは、暗闇が色濃くなって来た。狭い道を左に曲がると

現れる途中の公園のブランコに座った。そしてぶらぶら揺れてみた。

「高校時代かおりと乗ったな。」

 高校時代の仲の良かった友達かおりを瑠子は思いだした。彼女は、高校時代の友達だった。

 よく喧嘩もしたがすぐ仲直りした、

 けれど、その子に彼が出来てかおりの性格は変わってしまい些細な誤解から会わなくなってしまった。その上、運の悪い事にお互いに引っ越して何処にいるのかさえわからない。

 あれから心に隙間が出来てしまった気がする。2年の間に彼女の様に仲良く出来る人には、出会う事は無かった。

 そんな暗い気持ちで暗い空を見上げた。その時蓮花の事が思い出された。

「蓮花さんと海に行けます様に。」

 葉の無くなった木々が真っ暗な中北風にゆらゆら揺れているその風は体の芯から冷える。

「寒い。」

その時だ、ふいに男の声がした

「こんな夜にブランコ?」

 猫男だった。

「今日は酔って無いですね。」

 ちらっと、彼の方を見て嫌味を言った。

「ほら、」

 猫男が自分の巻いているマフラーを瑠子に投げた。

 そのマフラーを反射的に受け取ると憮然とした。

「風引くよ。」

「いいです。寒くないです。」

 思いっきりそのマフラーを投げ返した。

「おう、どうも。」

と猫男はおちゃらけてマフラーを受け取った。

瑠子はブランコからすくっと立つと声高らかに

言った。

「今日も猫にご飯上げるんですか?」

 猫男は頷いた

「じゃあ、これ、上げて下さい。」

 彼に差し出した、先程コンビニで買って来たものだ。

「あれ・・・。」

「どうぞ。」 

「悪いね、大丈夫?」

「何がですか?」

「生活。」

 瑠子は、ムカッとした。

「大丈夫です。」

 そう瑠子は一言小さな声で答えるとその公園を立ち去った。

 本当は、給料前になると飲まず食わずなる事だってあるよとは言えない。

 「武士は食わねど高楊枝」と呟いた

 坂の途中に、猫男を待ってる猫がすでに二匹集まっていた。

「今、猫男が来るよ。」

 と猫に話しかけて、側に近寄るのは辞めた

そうしたかったが、もたもたしていると猫男に追いつかれたしまうからだ。



                     つづく

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