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呼んでいる声がする(その8)
しおりを挟む呼んでいる声がする(その8)
雲があんなに黒い。帰るか、カフェマーメイドでは暖かったけれど外はやはり寒い。
街の灯りがぽつぽつと灯っていく。
改札口で、人を待つ人が羨ましい。
そんな事を思いながら、そして蓮花を心配しながら冷えた手で電車を待った。
電車が来て乗る頃には、外は薄闇が覆って来た。
アパートのイエローハウスを思うと猫男と猫達を思い出す。
あたしは猫国の住人になってしまったのかと、電車の窓から外を見ながら思った。
雨が、電車の窓に小さい水玉の模様を描いている。
この雨では、猫はいつもの場所にいないかもしれない。
本当は紫苑という名前だけれど、猫男は猫男よね
などと思いながら、羽根駅から降りたって土砂降りの雨の街に降り立った。
もう蓮花は家に着いたのだろうか、いったい何処に住んでいるのか、聞きそびれてしまった事を後悔した。
イエローハウスの上り坂に近づいたが、猫男がご飯を猫にあげている街灯の下には猫も彼もいなかった。
軽いため息を着きつつ、瑠子の住むアパート、イエローハウスに帰ると家のピンクの掛け時計は、10時をとうに過ぎていた。
着替えて、携帯のお気に入りの猫のユーチューブを見る。
一人で笑ったら声が部屋に響いた。
猫男は、帰っているのだろうか。
隣の隣に彼は住んでいるので、その方の壁を見た。
時に浮かんだのは、ハーレムのごとき海岸で彼にまとわりつく女達の姿だった。
あんな人どうでもいいか、そう呟きながら窓のカーテンを開けた
「雨が凄いな。」
けれど、その風景は、落ち着く。
しかし、その風景に似つかわしい男女のイカレタカップルを見つけるにいたった。
二人で一つの傘を差しながら、ふざけ合うカップルがイエローハウスに歩いて来た。
目を凝らして見るとそれは、忘れもしない猫男と海岸に彼と一緒にいた一番くっついていた女であった。
そのまま、騒がしくイエローの階段を上る音が聞こえる。
とだんだん声がはっきり聞こえて来た二人共に酔っているらしかった。
「やあだ、紫苑。」
「はっ?」
部屋の中の瑠子は一人顔をしかめた。
紫苑じゃない、猫男でしょと呟いた。
それからイエローハウスの住人に迷惑を顧みず猫男ペアは大声で奇声を上げながらドアの前の通路を通りドアを閉める音がし、微かにペアの声が聞こえそして聞こえなくなった。
ため息をつくと瑠子は、毒づいた
「やっぱりチャラ男だったんだ。」
それから、窓に戻って雨の様子を眺めた。
暗い夜空を眺めながら思った。
あの二人は確実にノアの箱舟に乗ろうとして放り出されるに違いないそんな事を思って微かにほほ笑んだ。
(つづく)
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