18 / 38
18 修道院に入ろう!
しおりを挟む
わたしは今更ギレンセン家を継ぎたいとは思っていない。
お義兄様のこれまでの努力を無駄にしたくないし、誰がなんと言おうと、次のギレンセン侯爵に相応しいのはお義兄様だ。
だったら、どうするべきなのか。
簡単なのは、わたしがさっさと新しい婚約者を決めることだ。そうすればお義兄様はこれまでと変わらず、ギレンセン家の嫡子のままでいてくれるだろう。
でも、それは難しい。
わたしはお義兄様が誰よりも好きで、新たな婚約者を迎える気にはどうしてもなれない。少なくとも今すぐは絶対に無理だ。
ティルマン様との婚約が決まったのは五才の時で、お義兄様と出会う前だった。幼かったこともあり、婚約の意味もよく分かっておらず、だから自分の婚約をすんなり受け入れることができた。
でも今は無理。他の人と結婚する未来を受け入れることができそうにない。
時間がもっと過ぎれば、あきらめもついて考えは変わるかもしれない。
けれど今すぐ別の婚約者を迎えることは、お義兄様を好きすぎるあまり、どうしてもできそうになかった。
となると、別の手を考えるしかない。
その別の手とは。
「修道院よ。わたしが修道院に入ればいいんだわ!」
ティルマン様の不貞が心の傷になり、もう結婚する気になれない。
今後は心穏やかに神に祈りを捧げて生きて行きたい。
そう言えば、きっとお父様はわたしの願いを叶えてくれるはず!
……いや、分からない。反対される可能性もある。というか、反対される可能性の方が高いかもしれない。
修道院に行く必要はない、結婚せずに家にずっと居ればいいと、お父様もお義兄様も言いそうだ。
でも、それだとわたしはただの厄介者のお荷物になってしまう。
それに、いつかお義兄様だって結婚する。その時に小姑となって一緒の屋敷に住んでいれば、夫人となった女性に愛を囁くお義兄様を見なければならない。
それは辛すぎる。だったら修道院に入った方が何倍もマシだ。
というわで、わたしは修道院に入ることにした。
反対されると困るから、誰にも内緒で秘密裏に。
まずは修道院までの旅費を手に入れるため、手持ちのドレスや貴金属を換金することにした。
「着なくなったドレスや古くて使わないアクセサリーがたくさんあるでしょう? あれを売って孤児院に寄付しようと思うの」
「まあ、さすがはお嬢様。それは素晴らしいお考えですね。すぐに商人を呼びましょう」
信用できる商人をアンが屋敷に呼んでくれたおかげで、苦労なく大金を手に入れることができた。
修道院に手紙と共に寄付金を送り、入院許可をもらった。修道院までの道筋や乗合馬車の発着場、その料金を調べた。
平民街に買い物に出かけた時、次にまた遊びに来る時のためにとごまかして、アンに不審に思われることなく町娘風に見える粗末な服や鞄や靴を購入した。珍しい銀髪が目立つことなく修道院までの旅ができるよう、茶色のウィッグも手に入れた。
最後に屋敷を去る時に残していく置き手紙を書いた。
犯罪に巻き込まれたわけではなく、わたしが自分の意思で家を出ることを記したお父様宛ての手紙だ。
この手紙には、わたしがどこの修道院に入るつもりなのかは書いていない。連れ戻されないようにするためだ。
これですべて準備万端。
あとは決行あるのみ!
お義兄様のこれまでの努力を無駄にしたくないし、誰がなんと言おうと、次のギレンセン侯爵に相応しいのはお義兄様だ。
だったら、どうするべきなのか。
簡単なのは、わたしがさっさと新しい婚約者を決めることだ。そうすればお義兄様はこれまでと変わらず、ギレンセン家の嫡子のままでいてくれるだろう。
でも、それは難しい。
わたしはお義兄様が誰よりも好きで、新たな婚約者を迎える気にはどうしてもなれない。少なくとも今すぐは絶対に無理だ。
ティルマン様との婚約が決まったのは五才の時で、お義兄様と出会う前だった。幼かったこともあり、婚約の意味もよく分かっておらず、だから自分の婚約をすんなり受け入れることができた。
でも今は無理。他の人と結婚する未来を受け入れることができそうにない。
時間がもっと過ぎれば、あきらめもついて考えは変わるかもしれない。
けれど今すぐ別の婚約者を迎えることは、お義兄様を好きすぎるあまり、どうしてもできそうになかった。
となると、別の手を考えるしかない。
その別の手とは。
「修道院よ。わたしが修道院に入ればいいんだわ!」
ティルマン様の不貞が心の傷になり、もう結婚する気になれない。
今後は心穏やかに神に祈りを捧げて生きて行きたい。
そう言えば、きっとお父様はわたしの願いを叶えてくれるはず!
……いや、分からない。反対される可能性もある。というか、反対される可能性の方が高いかもしれない。
修道院に行く必要はない、結婚せずに家にずっと居ればいいと、お父様もお義兄様も言いそうだ。
でも、それだとわたしはただの厄介者のお荷物になってしまう。
それに、いつかお義兄様だって結婚する。その時に小姑となって一緒の屋敷に住んでいれば、夫人となった女性に愛を囁くお義兄様を見なければならない。
それは辛すぎる。だったら修道院に入った方が何倍もマシだ。
というわで、わたしは修道院に入ることにした。
反対されると困るから、誰にも内緒で秘密裏に。
まずは修道院までの旅費を手に入れるため、手持ちのドレスや貴金属を換金することにした。
「着なくなったドレスや古くて使わないアクセサリーがたくさんあるでしょう? あれを売って孤児院に寄付しようと思うの」
「まあ、さすがはお嬢様。それは素晴らしいお考えですね。すぐに商人を呼びましょう」
信用できる商人をアンが屋敷に呼んでくれたおかげで、苦労なく大金を手に入れることができた。
修道院に手紙と共に寄付金を送り、入院許可をもらった。修道院までの道筋や乗合馬車の発着場、その料金を調べた。
平民街に買い物に出かけた時、次にまた遊びに来る時のためにとごまかして、アンに不審に思われることなく町娘風に見える粗末な服や鞄や靴を購入した。珍しい銀髪が目立つことなく修道院までの旅ができるよう、茶色のウィッグも手に入れた。
最後に屋敷を去る時に残していく置き手紙を書いた。
犯罪に巻き込まれたわけではなく、わたしが自分の意思で家を出ることを記したお父様宛ての手紙だ。
この手紙には、わたしがどこの修道院に入るつもりなのかは書いていない。連れ戻されないようにするためだ。
これですべて準備万端。
あとは決行あるのみ!
10
お気に入りに追加
1,446
あなたにおすすめの小説
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる
一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。
そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
貧乳の魔法が切れて元の巨乳に戻ったら、男性好きと噂の上司に美味しく食べられて好きな人がいるのに種付けされてしまった。
シェルビビ
恋愛
胸が大きければ大きいほど美人という定義の国に異世界転移した結。自分の胸が大きいことがコンプレックスで、貧乳になりたいと思っていたのでお金と引き換えに小さな胸を手に入れた。
小さな胸でも優しく接してくれる騎士ギルフォードに恋心を抱いていたが、片思いのまま3年が経とうとしていた。ギルフォードの前に好きだった人は彼の上司エーベルハルトだったが、ギルフォードが好きと噂を聞いて諦めてしまった。
このまま一生独身だと老後の事を考えていたところ、おっぱいが戻ってきてしまった。元の状態で戻ってくることが条件のおっぱいだが、訳が分からず蹲っていると助けてくれたのはエーベルハルトだった。
ずっと片思いしていたと告白をされ、告白を受け入れたユイ。
【R18】 義理の弟は私を偏愛する
あみにあ
恋愛
幼いころに両親が他界し、私はある貴族に引き取られた。
これからどうなるのか……不安でいっぱいだった私の前に会わられたのが、天使のように可愛い男の子。
とろけそうな笑顔に、甘えた声。
伸ばされた小さな手に、不安は一気に吹き飛んだの。
それが私と義弟の出会いだった。
彼とすぐに仲良くなって、朝から晩まで一緒にいた。
同じ食卓を囲み、同じベッドで手をつないで眠る毎日。
毎日が幸せだった。
ずっと続けばいいと願っていた。
なのに私は……彼の姉として抱いてはいけない感情を持ってしまった。
気が付いた時にはもう後戻りできないところまで来ていたの。
彼の傍に居たいのに、もう居続けることは出来ない。
だから私は彼の傍を離れると決意した。
それなのに、どうしてこんなことになってしまったの……?
※全14話(完結)毎日更新【5/8完結します】
※無理やりな性描写がございます、苦手な方はご注意ください。
慰み者の姫は新皇帝に溺愛される
苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。
皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。
ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。
早速、二人の初夜が始まった。
初めての相手が陛下で良かった
ウサギテイマーTK
恋愛
第二王子から婚約破棄された侯爵令嬢アリミアは、王子の新しい婚約者付の女官として出仕することを命令される。新しい婚約者はアリミアの義妹。それどころか、第二王子と義妹の初夜を見届けるお役をも仰せつかる。それはアリミアをはめる罠でもあった。媚薬を盛られたアリミアは、熱くなった体を持て余す。そんなアリミアを助けたのは、彼女の初恋の相手、現国王であった。アリミアは陛下に懇願する。自分を抱いて欲しいと。
※ダラダラエッチシーンが続きます。苦手な方は無理なさらずに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる