18 / 38
18 修道院に入ろう!
しおりを挟む几帳の奥に帳台があった。
帳を押し開けると、二畳ばかりのその場所へ私と貴人は倒れ伏した。
畳の敷いてある寝所である。
帳の内には焚きしめた香の匂いがこもっていた。
灯明の火が風に揺れ影法師が大きくなったり小さくなったりする。
彼の人の肌えには、薄っすらと汗が滲む。
しっとりと汗ばんで肌えからは甘酸っぱい匂いがたちのぼる。
私は彼の人をかき口説いた。
「お会いしたばかりの貴方様にこのような無礼をお許しください。私めは貴方様がどのようなお方かも存じ上げぬ下郎にすぎませぬ。しかし今ははっきりわかるのです。私が求めていたのは貴方だったのだと。お慕い申し上げております。どうぞ私の思いをとげさせてくださりませ」
しかし貴人は諾と言わない。
「貴方様がおのこということは私は一向気にしておらぬのです。私はあなたのお美しさに魅せられております。どうぞ今一たび貴方様の甘美なる蜜を吸わせてくださいませ」
私は伏して拝んだ。
「良いだろう。しかしここに長居してはいけない。貴殿にはこの後訪ねてもらいたい宅がある」
貴人はそう言って枕もとから一通の文をとり私に手渡した。
「ありがたき幸せ。必ずやお届け申し上げます」
長居するなと言われたのは哀しい限りだった。だがこのように美しく儚げな貴人なのだ。己が独り占めできるような相手ではない。
「貴方様のお相手ができることが嬉しゅうございます」
私はたまらなくなり彼の人の衣に手をかけた。
帳を押し開けると、二畳ばかりのその場所へ私と貴人は倒れ伏した。
畳の敷いてある寝所である。
帳の内には焚きしめた香の匂いがこもっていた。
灯明の火が風に揺れ影法師が大きくなったり小さくなったりする。
彼の人の肌えには、薄っすらと汗が滲む。
しっとりと汗ばんで肌えからは甘酸っぱい匂いがたちのぼる。
私は彼の人をかき口説いた。
「お会いしたばかりの貴方様にこのような無礼をお許しください。私めは貴方様がどのようなお方かも存じ上げぬ下郎にすぎませぬ。しかし今ははっきりわかるのです。私が求めていたのは貴方だったのだと。お慕い申し上げております。どうぞ私の思いをとげさせてくださりませ」
しかし貴人は諾と言わない。
「貴方様がおのこということは私は一向気にしておらぬのです。私はあなたのお美しさに魅せられております。どうぞ今一たび貴方様の甘美なる蜜を吸わせてくださいませ」
私は伏して拝んだ。
「良いだろう。しかしここに長居してはいけない。貴殿にはこの後訪ねてもらいたい宅がある」
貴人はそう言って枕もとから一通の文をとり私に手渡した。
「ありがたき幸せ。必ずやお届け申し上げます」
長居するなと言われたのは哀しい限りだった。だがこのように美しく儚げな貴人なのだ。己が独り占めできるような相手ではない。
「貴方様のお相手ができることが嬉しゅうございます」
私はたまらなくなり彼の人の衣に手をかけた。
22
お気に入りに追加
1,463
あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄を待つ頃
白雨 音
恋愛
深窓の令嬢の如く、大切に育てられたシュゼットも、十九歳。
婚約者であるデュトワ伯爵、ガエルに嫁ぐ日を心待ちにしていた。
だが、ある日、兄嫁の弟ラザールから、ガエルの恐ろしい計画を聞かされる。
彼には想い人がいて、シュゼットとの婚約を破棄しようと画策しているというのだ!
ラザールの手配で、全てが片付くまで、身を隠す事にしたのだが、
隠れ家でシュゼットを待っていたのは、ラザールではなく、ガエルだった___
異世界恋愛:短編(全6話) ※魔法要素ありません。 ※一部18禁(★印)《完結しました》
お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

【完結】21距離をおきたいと言れたので、隣国に逃げたけど、、、
華蓮
恋愛
距離をおきたいと婚約者であるレイト王子から告げられ、その横には、妹がいた。
私のもの全てを奪っていった妹。もう、嫌になり、隣国に渡ったアオイ。

【完結】妻至上主義
Ringo
恋愛
歴史ある公爵家嫡男と侯爵家長女の婚約が結ばれたのは、長女が生まれたその日だった。
この物語はそんな2人が結婚するまでのお話であり、そこに行き着くまでのすったもんだのラブストーリーです。
本編11話+番外編数話
[作者よりご挨拶]
未完作品のプロットが諸事情で消滅するという事態に陥っております。
現在、自身で読み返して記憶を辿りながら再度新しくプロットを組み立て中。
お気に入り登録やしおりを挟んでくださっている方には申し訳ありませんが、必ず完結させますのでもう暫くお待ち頂ければと思います。
(╥﹏╥)
お詫びとして、短編をお楽しみいただければ幸いです。

唯一の味方だった婚約者に裏切られ失意の底で顔も知らぬ相手に身を任せた結果溺愛されました
ララ
恋愛
侯爵家の嫡女として生まれた私は恵まれていた。優しい両親や信頼できる使用人、領民たちに囲まれて。
けれどその幸せは唐突に終わる。
両親が死んでから何もかもが変わってしまった。
叔父を名乗る家族に騙され、奪われた。
今では使用人以下の生活を強いられている。そんな中で唯一の味方だった婚約者にまで裏切られる。
どうして?ーーどうしてこんなことに‥‥??
もう嫌ーー
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

隣国に嫁いだちょいぽちゃ王女は帰りたい
鍋
恋愛
パンデルム帝国の皇帝の末娘のシンシアはユリカ王国の王太子に政略結婚で嫁ぐことになった。食べることが大好きなシンシアはちょいぽちゃ王女。
しかし王太子であるアルベートにはライラールという恋人がいた。
アルベートは彼女に夢中。
父である皇帝陛下には2年間で嫌になったら帰ってもいいと言われていたので、2年間耐えることにした。
内容はありがちで設定もゆるゆるです。
ラブラブは後半。
よく悪役として出てくる隣国の王女を主役にしてみました。

天才魔術師から逃げた令嬢は婚約破棄された後捕まりました
oro
恋愛
「ねぇ、アデラ。僕は君が欲しいんだ。」
目の前にいる艶やかな黒髪の美少年は、にっこりと微笑んで私の手の甲にキスを落とした。
「私が殿下と婚約破棄をして、お前が私を捕まえることが出来たらな。」
軽い冗談が通じない少年に、どこまでも執拗に追い回されるお話。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる