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15 ティルマン様は厚顔無恥
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「婚約時の契約内容については、国王陛下も認めて下さっていることだ。だからクリス、おまえが望むならすぐにでもティルマン殿との婚約は破棄できる」
どうしたいか正直な気持ちを言ってごらん。
そうお父様に問われて、わたしは迷うことなく即答した。
「だったらわたし、ティルマン様との婚約を破棄したいです」
「よし、すぐ手続きに入ろう」
その言葉通りお父様は迅速に動いてくれて、二週間後にはわたしとティルマン様の婚約は正式に破棄された。
アダルベルト公爵夫妻は納得できないらしく、何度も話し合いたい、考え直して欲しいと申し入れてきた。しかし、お父様がティルマン様の素行調査報告書を突きつけ、
「これ以上ゴネるようなら、この内容を世間に公表するがよろしいか」
と笑顔で脅すと、公爵夫妻は悔しそうな顔をしながらも諦めて引き下がったらしい。
しかし、ティルマン様はそう簡単には諦めようとしなかった。
「ねえ、クリステル、僕と復縁しよう? 浮気は本当に悪かったよ、反省してる。もう二度としないから、また僕の婚約者になってよ」
「……」
「そもそも僕は他所で子を作ったら婚約が解消されるってこと、まったく知らなかったんだ。知っていたら、孕ませるようなことは絶対にしなかった。本当だよ!」
「……」
「君は僕が好きだった。夫人教育を頑張っていたのだって、僕の花嫁になりたいがためだよね? だったら意地を張らずに僕と寄りを戻そう?」
「……」
「浮気相手に嫉妬して拗ねてる君はかわいいけど、限度があるよ? 知っているよね、僕が女性から引く手数多だってこと。いい加減にしないと僕の愛を失ってしまうよ? それが嫌なら、そろそろ機嫌を直しなよ。ね? 今度は君だけを愛してあげるから」
わたしが参加するお茶会に現れては、ティルマン様はしつこく復縁を迫ってくる。そして、今みたいな話をべらべらと話すのだ。
それを耳にした令嬢たちは、表情には出さないものの、怒り心頭なご様子だ。
良識のあるまともな令息たちも眉をひそめている。
そう言えば、最近になってアダルベルト家の抱える借金についての情報がなぜか漏れ始めたらしく、ティルマン様の人気は下落の一途をたどっている。少し前までは黄色い声を上げていた令嬢方も、近頃はティルマン様に近寄ろうともしない。
わたしはどこで会ってもティルマン様を無視している。
事情を知らない人たちは、家格が上の令息に対するわたしの態度を非難し、礼儀がなっていないと眉をひそめて咎め立てることもあった。
しかし、そのような人たちも時間が経つにつれて事情を知り、今では当然だと言わんばかりにわたしを庇い、擁護してくれるようになっている。
次期公爵であるティルマン様がこれでは、アダルベルト家はもう終わりかもしれない。よほど裕福で金回りのいいご令嬢にティルマン様が見初められ、惚れ込まれない限り、どうにもならないだろう。
まあそんな奇特な人がいるとも思えないけれど。
顔だけは美しいから、無きにしも非ず、だろうか。
いずれにしろ、わたしの知ったことではない。
どうしたいか正直な気持ちを言ってごらん。
そうお父様に問われて、わたしは迷うことなく即答した。
「だったらわたし、ティルマン様との婚約を破棄したいです」
「よし、すぐ手続きに入ろう」
その言葉通りお父様は迅速に動いてくれて、二週間後にはわたしとティルマン様の婚約は正式に破棄された。
アダルベルト公爵夫妻は納得できないらしく、何度も話し合いたい、考え直して欲しいと申し入れてきた。しかし、お父様がティルマン様の素行調査報告書を突きつけ、
「これ以上ゴネるようなら、この内容を世間に公表するがよろしいか」
と笑顔で脅すと、公爵夫妻は悔しそうな顔をしながらも諦めて引き下がったらしい。
しかし、ティルマン様はそう簡単には諦めようとしなかった。
「ねえ、クリステル、僕と復縁しよう? 浮気は本当に悪かったよ、反省してる。もう二度としないから、また僕の婚約者になってよ」
「……」
「そもそも僕は他所で子を作ったら婚約が解消されるってこと、まったく知らなかったんだ。知っていたら、孕ませるようなことは絶対にしなかった。本当だよ!」
「……」
「君は僕が好きだった。夫人教育を頑張っていたのだって、僕の花嫁になりたいがためだよね? だったら意地を張らずに僕と寄りを戻そう?」
「……」
「浮気相手に嫉妬して拗ねてる君はかわいいけど、限度があるよ? 知っているよね、僕が女性から引く手数多だってこと。いい加減にしないと僕の愛を失ってしまうよ? それが嫌なら、そろそろ機嫌を直しなよ。ね? 今度は君だけを愛してあげるから」
わたしが参加するお茶会に現れては、ティルマン様はしつこく復縁を迫ってくる。そして、今みたいな話をべらべらと話すのだ。
それを耳にした令嬢たちは、表情には出さないものの、怒り心頭なご様子だ。
良識のあるまともな令息たちも眉をひそめている。
そう言えば、最近になってアダルベルト家の抱える借金についての情報がなぜか漏れ始めたらしく、ティルマン様の人気は下落の一途をたどっている。少し前までは黄色い声を上げていた令嬢方も、近頃はティルマン様に近寄ろうともしない。
わたしはどこで会ってもティルマン様を無視している。
事情を知らない人たちは、家格が上の令息に対するわたしの態度を非難し、礼儀がなっていないと眉をひそめて咎め立てることもあった。
しかし、そのような人たちも時間が経つにつれて事情を知り、今では当然だと言わんばかりにわたしを庇い、擁護してくれるようになっている。
次期公爵であるティルマン様がこれでは、アダルベルト家はもう終わりかもしれない。よほど裕福で金回りのいいご令嬢にティルマン様が見初められ、惚れ込まれない限り、どうにもならないだろう。
まあそんな奇特な人がいるとも思えないけれど。
顔だけは美しいから、無きにしも非ず、だろうか。
いずれにしろ、わたしの知ったことではない。
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