お義兄様に一目惚れした!

よーこ

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02 婚約者は人気者

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 十二才を過ぎた頃から、週に三日、アダルベルト公爵邸に通うようになった。

 わたしはいずれ公爵家に嫁入りすることが決まっている。未来の公爵夫人となる者として多くのことを学ばなければならず、夫人教育を受けているのだ。

 名門アダルベルト公爵家ともなると、夫人のすべき仕事は多い。
 それらを学びつつ、広大な公爵領の地図をおぼえ、特産品のことや事業のこと、近隣諸国との付き合いや他領との取引を覚える。なかなか大変な日々だ。

 公爵邸へ伺うたび、婚約者であるティルマン様とも交流を図っている。

 わたしより五才年上のティルマン様は、金髪碧眼の甘い顔をした美男子だ。柔和な雰囲気の親しみやすい人で、年の離れたわたしを子供扱いすることなく、レディとして接してくれる。

「婚約者になってくれてありがとう。僕は幸せ者だな、こんなに頑張り屋さんが妻になってくれるんだから。母上が褒めていたよ。クリステルはとても優秀だって」
「ありがとうございます。そう言っていただけて、とても嬉しいです」
「それだけじゃない。会うたびに思うよ、クリステルの銀糸のような髪と深い湖のような緑色の瞳はすごく綺麗だなって。きっと将来は社交界一の花になるだろうね。他のやつに盗られないように、僕もがんばらなきゃいけないな」
「ふふ、ティルマン様は今のままで十分素敵です」

 会うたびにティルマン様はわたしを褒めてくれる。優しい言葉をかけてくれる。とても素敵な人だと思う。

 友人である侯爵令嬢ミランダ様も伯爵令嬢リリースア様も、ティルマン様はご令嬢方にとても人気のある殿方なのだと話していた。ティルマン様の婚約者であることを、わたしはいつも二人から羨ましがられている。

 でも。どんなにティルマン様が素晴らしい人であっても、お義兄様に想いを寄せるわたしには彼を愛せない。
 いつか愛せるようになれればいい、愛せるようになりたい。そう思っているのに、わたしの心の中にはいつだってお義兄様がいる。お義兄様だけを求め続けている。

 きっとわたしはこれから先も、ティルマン様に心はあげられないのだと思う。
 でもその代わり、誠心誠意この人に尽くそう。完璧な公爵夫人になってティルマン様を生涯お支えしていこう。

 そんな思いを胸に、わたしはアダルベルト公爵家での教育に励んだのだった。


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