お義兄様に一目惚れした!

よーこ

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01 義兄に一目惚れ

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 ギレンセン侯爵に義兄が養子としてやってきたのは、わたしが六才になった時だった。

 お父様には子供はわたしだけ。わたしを産んですぐにお母様が亡くなったからだ。
 わたしが婿をとってギレンセン侯爵家を継ぐ予定だったが、思いがけずアダルベルト公爵家の嫡子ティルマン様とわたしとの婚約が決まってしまった。
 それで急遽、遠縁からギレンセン侯爵家を継ぐ男児が養子に迎えられたのだった。

「クリステル、今日からおまえの義兄あにになるセドリックだよ。仲良くするようにね」

 王都にあるギレンセン侯爵邸の居間に呼ばれたわたしは、お父様に紹介されて初めてお義兄にい様に会った。

  夜の闇を溶かしたような真っ黒な髪に、冬の空のような水色の瞳。神秘的なまでに美しい顔をしているのに弱々しさは一切なく、人を強く惹きつける魅力に溢れている。

 それが義兄となったセドリックの第一印象だった。
 一目見た瞬間に、わたしはお義兄様に一目惚れしてしまった。

「よろしく、クリステル」

 笑顔とともに差し出された手を、わたしは顔を赤くしながらそっと握った。
 温かい手。わたしを見つめる優しい瞳。

 この時以来、お義兄様はわたしにとって世界で一番大切な人になった。



 二才年が離れているけれど、これまで大した教育を受けていないお義兄様は、わたしと一緒に貴族教育を受けることになった。

 数いる縁戚の中から選ばれただけあって、お義兄様はとても優秀だった。座学もマナーもダンスも、既に教育を受けていたわたしにすぐに追いつき、簡単に追い越してしまう。

「お義兄様って本当にすごいんですね。あっと言う間になんでもできるようになってしまうんだもの」
「そんなことないよ。それにクリステルだって、俺に負けないくらい優秀じゃないか」
「いいえ。お義兄様に比べたらまだまだです。だって、お義兄様はとても頭が良くて、器用で、運動神経も素晴らしくて、どこをとっても最高なんだもの。わたしの自慢です!」

 わたしの本心からの言葉を聞いて、お義兄様は嬉しそうに微笑んだ。
 その美しい笑顔を見るだけで、わたしの胸は喜びで大きく高鳴ってしまう。

 お義兄様、好き。大好き。

 でもこの想いを伝えるつもりはない。
 だって、分かっているもの。
 わたしのこの恋心は、自分のためにもお義兄様のためにも家門のためにもならないものだと、わたしはちゃんと分かっている。
 だから言わない。一生胸に秘めるつもりでいる。

 今は辛いけど、きっと時間が解決してくれる。
 そう思っていた。


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