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60話
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「ってことなんだけどどうすりゃ良い?」
「そんなことよりも自分の手紙がそんな扱いを受けていると知った俺に何か言うことはねーのかよ。」
「友達に着いたストーカーをそんなこととはひでぇ奴だなお前。」
「おめーがな!!」
教室で上半身を机に預けながら、書き損じの紙をちぎり投げつけて勉強をするユーリの邪魔をするヴィノスに、ユーリが怒鳴る。
「ったく、かまって欲しいんだったらよそいけよそ。てか、お前は勉強しろよ、減給かかってんだろ?」
「馬鹿か。俺が減給がかかってるものを落とすと思うか。」
「なんでそんな誇らしげなんだよ……」
ドヤ顔で胸を張るヴィノスに何を言っても無駄だと、そうそうに諦めまたワークにペンを走らせる。けれどもヴィノスの嫌がらせによって集中は途切れ、読んでも頭に入らない問題文にユーリは諦めたようにため息をついた。
「で?どうしろってんだよ。今度は現物あるから犯人探しにでも乗り出すのか?」
「お!話聞く気になった?マジで?意外にいいとこあんじゃん老人メガネ!」
「真面目に相談に乗らせる気もないなら今すぐ席を変えてもらっていいか?気が散る。」
「いや犯人探しも考えたけどさー?やってる事的にめんどそうじゃん。証拠も少ねーし。ただまた部屋入ってこられて気持ちわりぃんだけどって言う愚痴。」
話を聞く体制になった瞬間、失礼なことを言うヴィノスに開いた心と傾けた耳を元に戻そうとしたのに、ヴィノスはそんなユーリにお構い無しに話を進めた。
「そもそもお前のところは一応使用人に与えられたいわゆる社宅的なあれだろ?さすがに公爵家ならセキュリティもそこそこだろ。」
「のはずなのに入ってきてんの!気持ち悪くね?」
「悪いよ悪い。だが俺に犯人はわからねぇ。ってことで、あー、なんだ、エドにでも頼んだら南京錠でもつけてくれんじゃねぇ?扉の半分くらいのでっけーやつ。」
「んなもん作ったら開けるのもかけるのも一人じゃ苦労するわ馬鹿。あと普通に邪魔だしコストも馬鹿になんねぇよ。」
ユーリとヴィノスの収穫のない不毛な会話に、エドが入り込む。どうやら途中から話を聞いていたらしい。ユーリよりも気遣わしげな視線を送りながらヴィノスの隣に腰を下ろした。
「ストーカーって?」
「いや、ストーカーって言えるほどではねぇんだけど、なんか俺の部屋に俺以外が出入りしてるらしい。」
「ヴィノスの所は他人の部屋に他の従業員が入ってきたりしないのか?」
「本人不在の時はさすがにねぇよ。」
エドのところでは、工房の職員全員が幼い頃から一緒にいる家族みたいなものだった。遠慮する者もいるが、しないものはたまに、本人不在の時でも入ってくる時がある。
しかし、そんな環境に育ったとはいえ、それが普通でないことをエドは重々承知していた。
「どいつもこいつも変なやつに付きまとわれて…流行ってんのか?」
「そんな流行があったら今すぐやめにさせろ。」
ユーリの言葉にエドは確かにと頷く。ヴィノスとは違い本気でそう言っているからこそ、その素直な反応にユーリはやりずらさを感じる。
「で、どんなことされてるんだ?」
「んー実害はねぇよ。お嬢に王太子の恋の邪魔をさせるな的な脅しの手紙が来るくらい。」
「……そうか。」
ヴィノスは簡単に言ってのけるが、エドはリリーとヴィルヘルムの関係をよく思っていない。だからそんな手紙が友人に届いていると聞けばさらに気が気じゃなくなる。
「俺からしてみたら俺じゃなくて本人に言えよって感じ。」
「さすがにクラレンス嬢の部屋には入り込めないんだろ。」
「俺ら監視出来てんならわざわざ部屋に届けずとも学校で教科書に挟むなりなんなりできるくね?ビビりには無理か?」
ここにいない人物をからかうように笑うヴィノス。しかし直ぐにこの話題にも飽きたのか、今度はユーリの机に出したままにされている紙に落書きを始めた。
「あ!おいやめろバカ!」
「バカ真面目に勉強しちゃってー、減給かかってない俺と違うのになーにやる気出してんの?ユーリくん?」
「別になんだっていいだろ。さすがに勉強会開いてまで馬鹿な点取れねぇの!いいから離せ!」
「勉強会?なんの事だ?」
エドの言葉に戯れていた二人の視線がエドに向けられる。そして気まずそうにアリアとアリアの友人であるアムネジアから勉強を教わっていると説明すれば、エドは若干不満そうにその説明を聞いた。
「貴族が、勉強をねぇ…」
「え、何?エドって貴族嫌いなの?」
「いや、嫌いというか……何を考えているのかわからん。差別するものもいれば利用する者もいるだろう。特に、王太子の周りにいる女性貴族はいい噂を聞かん。」
ドレス工房、宝石工房、色々な工房をもって多方面に商品を広げているルトリック紹介の参加であるエドの工房には、様々な噂という名の愚痴が入ってくる。
あの令嬢は金蔓だの、わがままだの、買い叩こうとしてくるだの、又は強引な引き抜きにあった先で不当な扱いをされて帰ってきたという話さえも聞いたことがある。
「いい噂なんてひと握りだ。」
「…いやそれはお前のところが偏ってるだけじゃね?」
「そうなのか?」
「いや、俺に聞かれても……」
偏っているとは言ってもユーリのところも同じようなものだ。あの貴族は仲良くなっていて損は無い、あの貴族は貧乏だから関わるな。あの貴族は取引相手だから云々正直ユーリも飽き飽きしていた。
「結局、どこも同じってことは性悪が多いってことじゃね?スラムも貴族も同じだなー。」
「……若干否定できないのがイラつく。」
そんな面倒くさい話は貴族ならではだが、欲のぶつけ合いという点からしてみれば、ヴィノスのところもそう変わらなかった。アリアのところに来てからそう言うことから離れられると思えば、使用人の中でも蹴落としあいがあったりなかったりする。
「所詮人間なんてそんなもんだろ。急に変わるヤツもいるけど変わんねぇやつもいる訳だ。」
けれどヴィノスにとって、そんな中でも変な風に変わった主は興味が引かれる面白いものだとも思う。
「そんなことよりも自分の手紙がそんな扱いを受けていると知った俺に何か言うことはねーのかよ。」
「友達に着いたストーカーをそんなこととはひでぇ奴だなお前。」
「おめーがな!!」
教室で上半身を机に預けながら、書き損じの紙をちぎり投げつけて勉強をするユーリの邪魔をするヴィノスに、ユーリが怒鳴る。
「ったく、かまって欲しいんだったらよそいけよそ。てか、お前は勉強しろよ、減給かかってんだろ?」
「馬鹿か。俺が減給がかかってるものを落とすと思うか。」
「なんでそんな誇らしげなんだよ……」
ドヤ顔で胸を張るヴィノスに何を言っても無駄だと、そうそうに諦めまたワークにペンを走らせる。けれどもヴィノスの嫌がらせによって集中は途切れ、読んでも頭に入らない問題文にユーリは諦めたようにため息をついた。
「で?どうしろってんだよ。今度は現物あるから犯人探しにでも乗り出すのか?」
「お!話聞く気になった?マジで?意外にいいとこあんじゃん老人メガネ!」
「真面目に相談に乗らせる気もないなら今すぐ席を変えてもらっていいか?気が散る。」
「いや犯人探しも考えたけどさー?やってる事的にめんどそうじゃん。証拠も少ねーし。ただまた部屋入ってこられて気持ちわりぃんだけどって言う愚痴。」
話を聞く体制になった瞬間、失礼なことを言うヴィノスに開いた心と傾けた耳を元に戻そうとしたのに、ヴィノスはそんなユーリにお構い無しに話を進めた。
「そもそもお前のところは一応使用人に与えられたいわゆる社宅的なあれだろ?さすがに公爵家ならセキュリティもそこそこだろ。」
「のはずなのに入ってきてんの!気持ち悪くね?」
「悪いよ悪い。だが俺に犯人はわからねぇ。ってことで、あー、なんだ、エドにでも頼んだら南京錠でもつけてくれんじゃねぇ?扉の半分くらいのでっけーやつ。」
「んなもん作ったら開けるのもかけるのも一人じゃ苦労するわ馬鹿。あと普通に邪魔だしコストも馬鹿になんねぇよ。」
ユーリとヴィノスの収穫のない不毛な会話に、エドが入り込む。どうやら途中から話を聞いていたらしい。ユーリよりも気遣わしげな視線を送りながらヴィノスの隣に腰を下ろした。
「ストーカーって?」
「いや、ストーカーって言えるほどではねぇんだけど、なんか俺の部屋に俺以外が出入りしてるらしい。」
「ヴィノスの所は他人の部屋に他の従業員が入ってきたりしないのか?」
「本人不在の時はさすがにねぇよ。」
エドのところでは、工房の職員全員が幼い頃から一緒にいる家族みたいなものだった。遠慮する者もいるが、しないものはたまに、本人不在の時でも入ってくる時がある。
しかし、そんな環境に育ったとはいえ、それが普通でないことをエドは重々承知していた。
「どいつもこいつも変なやつに付きまとわれて…流行ってんのか?」
「そんな流行があったら今すぐやめにさせろ。」
ユーリの言葉にエドは確かにと頷く。ヴィノスとは違い本気でそう言っているからこそ、その素直な反応にユーリはやりずらさを感じる。
「で、どんなことされてるんだ?」
「んー実害はねぇよ。お嬢に王太子の恋の邪魔をさせるな的な脅しの手紙が来るくらい。」
「……そうか。」
ヴィノスは簡単に言ってのけるが、エドはリリーとヴィルヘルムの関係をよく思っていない。だからそんな手紙が友人に届いていると聞けばさらに気が気じゃなくなる。
「俺からしてみたら俺じゃなくて本人に言えよって感じ。」
「さすがにクラレンス嬢の部屋には入り込めないんだろ。」
「俺ら監視出来てんならわざわざ部屋に届けずとも学校で教科書に挟むなりなんなりできるくね?ビビりには無理か?」
ここにいない人物をからかうように笑うヴィノス。しかし直ぐにこの話題にも飽きたのか、今度はユーリの机に出したままにされている紙に落書きを始めた。
「あ!おいやめろバカ!」
「バカ真面目に勉強しちゃってー、減給かかってない俺と違うのになーにやる気出してんの?ユーリくん?」
「別になんだっていいだろ。さすがに勉強会開いてまで馬鹿な点取れねぇの!いいから離せ!」
「勉強会?なんの事だ?」
エドの言葉に戯れていた二人の視線がエドに向けられる。そして気まずそうにアリアとアリアの友人であるアムネジアから勉強を教わっていると説明すれば、エドは若干不満そうにその説明を聞いた。
「貴族が、勉強をねぇ…」
「え、何?エドって貴族嫌いなの?」
「いや、嫌いというか……何を考えているのかわからん。差別するものもいれば利用する者もいるだろう。特に、王太子の周りにいる女性貴族はいい噂を聞かん。」
ドレス工房、宝石工房、色々な工房をもって多方面に商品を広げているルトリック紹介の参加であるエドの工房には、様々な噂という名の愚痴が入ってくる。
あの令嬢は金蔓だの、わがままだの、買い叩こうとしてくるだの、又は強引な引き抜きにあった先で不当な扱いをされて帰ってきたという話さえも聞いたことがある。
「いい噂なんてひと握りだ。」
「…いやそれはお前のところが偏ってるだけじゃね?」
「そうなのか?」
「いや、俺に聞かれても……」
偏っているとは言ってもユーリのところも同じようなものだ。あの貴族は仲良くなっていて損は無い、あの貴族は貧乏だから関わるな。あの貴族は取引相手だから云々正直ユーリも飽き飽きしていた。
「結局、どこも同じってことは性悪が多いってことじゃね?スラムも貴族も同じだなー。」
「……若干否定できないのがイラつく。」
そんな面倒くさい話は貴族ならではだが、欲のぶつけ合いという点からしてみれば、ヴィノスのところもそう変わらなかった。アリアのところに来てからそう言うことから離れられると思えば、使用人の中でも蹴落としあいがあったりなかったりする。
「所詮人間なんてそんなもんだろ。急に変わるヤツもいるけど変わんねぇやつもいる訳だ。」
けれどヴィノスにとって、そんな中でも変な風に変わった主は興味が引かれる面白いものだとも思う。
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