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第3話 トランザイル辺境伯家

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「見てあなた、元気な男の子よ」
「メリッサ、頑張ったね。本当に君を尊敬するよ」

女性と男性の声が聞こえる。
まだ視界がはっきりとしていないが金髪の女性と茶色っぽい髪の男性の顔がこちらを覗いている。

状況を理解した。オレは生まれ変わったのか・・・
この二人はオレの両親の様だ。

今度は冷静に状況を把握することに努めた。
だが、体は生まれたばかりの状態なので意図せず大声で泣いてしまう。

色々と現状把握をしようたしたのだが今度は意識が遠のいていく。

ヤバイ、気絶する・・・


次に目を開けられた時には先ほどと同じ様な天井だけが目に入ってきた。

左右を見ようと試みるが首は思う様に動かせず

試しに声を出してみようにも思う様に声が出ない。

顔や喉の筋肉が弱いのであろう。

しばらくは泣き声で伝えるしかないか・・・


「おんぎゃあああぁぁぁ」

すかさず先程の金髪の母とは別の女性が抱き上げる。


そして、当たり前の様に乳房を出し授乳の体制に入る。
この女性はいわゆる乳母という存在の様だ。

前世では親しい女性がいたことのなかったオレにとっては衝撃的な光景だ。

しかし、心と体はまだ一致していないのか、それとも人間の本能なのか

自然と母乳を飲み始める。

そして、また抗うことのできない睡魔に襲われ意識を失った。


そうして何日たったかはわからないが、ようやく少しずつ視界がクリアになっていき
この部屋にくる人間を把握し始めた。

まずは、父のバルシュだ。生まれたばかりの時は顔もぼやけてよく見えなかったが、
茶に近い赤毛を襟の付近まで伸ばしたオールバックで口髭を蓄えた
35歳くらいのダンディな男性だ。
声は低く聞いていて心地よいがとても通る声をしている。
人混みでもこの声は聞き分けることができるだろう。

母のの名前はメリッサ。流れる川の様なきれいなブロンドの髪に薄い陶器の様な肌、そして吸い込まれる様な碧眼はその目に空を落とした様だ。
とても笑顔の可愛い人で、オレを見つめるときは常に笑顔で明るい女性の様だ。
女性の歳を当てるのは苦手だが、父のバルシェよりは確実に若いと思う。
推定の年齢は30・・・いや、28歳だ。
オレは知っている。女性の年齢は直感で当てに行くと良いことがない。

それと、最近やっとオレの部屋にくることを許されたのだと思われる二人の兄
長男のフレットと次男ジョージ。
長男のフレットはオレンジ色の髪に父と同じ茶色の瞳で気の強そうないわゆるヤンチャ坊主。いつも違うところに傷を作っている。
次男のジョージはフレットと同じオレンジ色の髪に母の瞳によくにた碧眼だ。
ジョージはあまり活発な性格ではないようで、いつも兄のフレットに手をつかまれてオドオドとした雰囲気でやってくる。
読書が好きなのだろう。片手にはいつも本を持っている。

あとは、この部屋でほとんどの時間を過ごしている乳母のエリー
見た目は青味がかった黒い髪を一つにまとめたポニーテールにキリッと整った眉、
濃い紫の瞳は「凛」という漢字を人間にしたような女性だ。
濃紺のロングドレスに白いエプロンをつけた給仕服でとても色々な話をしてくれている。

以上の5人が生まれてから今までの全ての登場人物だ。
部屋の外から5人以外の声は聞こえてくることもあるがどのような人物かは不明だ。


エリーの話してくれる中で分かった事がいくつかあった。

この国はレオンという王国である事。
この家はそのレオン王国に属するトランザイル辺境伯家という事。
当主は父のバルシュである事。
トランザイル辺境伯領は魔獣の住む森に面している事
そして、トランザイル家は代々『テイマー』と呼ばれる魔獣を使役し従魔にする事に長けている一族である事。

一番重要なことは最後の『テイマー』の件だ。
ゴロウと一緒にいることが不自然じゃない!動物と一緒にいることが許されるのではないか?

そんな、安堵と期待に胸を踊らせながら
また強い睡魔に抗うことができずに眠りについたのだ。
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