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漸進的愛情表現
、
しおりを挟む思い返してみれば今まで連絡を取り合う時はLINEばかりで電話をするのは今この瞬間が初めてだと気づく。
途端になんだか気恥ずかしさを感じながらも「お疲れ様」と労いの言葉を掛けてから、言葉を続けた。
「…今日、陸が辻本に渡し忘れたプリント預かったんだけど」
『え、そうなの?なんのプリントだろう?』
「なんか、選択授業に使うやつらしい」
『選択授業って確か休み明けにあるよね?』
「…うん。だから今日届けた方がいいかなと思って、今辻本ん家向かってる」
『えっ、今?』
驚いたように声を上げた辻本は『遠いからいいよ!』と、すぐに言葉を続けた。
「…や、大丈夫。辻本の家の近くの駅で時間潰してたから、後少しで着く」
『えぇっ?終わるまで待っててくれたの?』
素っ頓狂な声が機械越しに響く。あわあわと慌てている辻本の姿が容易に想像できて、思わずふっと笑みが零れる。
『遅くまで待たせた上に届けに来させちゃって…、あぁ、もうほんとごめんね』
辻本はすぐに声のトーンを下げて本当に申し訳なさそうにそう言う。
こういう意外と律儀なところとかが、多分俺のツボを突いてるんだろうな、と思う。
「…元はと言えば忘れてた陸が悪いんだし、辻本は謝んなくていいよ」
『うーん…まあ、そう言われればそうだけど…』
そこでちょうど辻本の家が遠くに見えてきて、再び口を開く。
「俺もう着くんだけど、辻本今どこ?」
『えっとね、今コンビニ辺りだから後5分もすればあたしも着くと思う』
「じゃあ家の前で待ってるから」
『うん、分かった。急ぐね!』
元気よくそう言った辻本にまた口元が緩みながら「ゆっくりでいいよ」と返事をしてから、通話を切った。
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