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漸進的愛情表現
、
しおりを挟む静かにそう言い放った俺に、陸がきょとんとした目を向ける。
「え?マジで?」
「うん」
「…や、でも碧のこと扱き使うのは気が引けんだよなぁ…」
「……、」
もうさんざん扱き使ってるくせによく言うよ。
そう言い返してやりたいのは山々だったけど、こいつに何を言っても無駄な事は分かり切っているから、敢えてそれは口に出さない。
「別にいいよ。辻本の家は前送って行ったから知ってるし、ここからそんなに遠いわけでもないし」
「そ?じゃ、碧に任せた」
さっきの渋った様子はどこへやら。
俺の言葉にあっさりとそう返して「よろしくな」とプリントを手渡してきた。
「…はいはい」
やれやれ顔でそれを受け取り、残っている雑用を終わらす事に専念した。
雑用を終え、学校を後にした時にはもう辺りは薄暗くなっていた。
今日はバイトだと言っていた辻本の言葉を思い出す。
“終わったら連絡して”と要件だけを記したメッセージを送り、辻本がシフトアウトするまでの時間を潰すために駅前の満喫へと足を運んだ。
気になっていた漫画を読み漁っていると2時間なんてあっという間に過ぎ去った。
もうそろそろバイトが終わる頃だろうと思い満喫を出て少し歩いたところで、ポケットの中のスマホが振動している事に気づく。
取り出して画面を確認すれば、予想通り辻本からの着信だった。
通話ボタンを押してからスマホを耳に当てると、すぐに『もしもし?』という辻本の声が耳元で響く。
「…バイト終わった?」
『うん、ちょうど今終わって店出たところだよ。どうかしたの?』
機械越しに聞く辻本の声は普段よりも少し低く聞こえる。
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