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漸進的愛情表現
、
しおりを挟むあの時までは“ただの派手な女”くらいの認識しかなかったのに、それからというもの事あるごとに視線が彼女を追うようになったっていうんだから、俺も案外単純な人間なのかもしれない。
「ねぇってば!」
「…なに?」
そして今ではその派手な女が俺の上に跨っているっていうんだから、なんていうかまあ…人生って何が起こるか分からないなと、そんな当たり前の事をしみじみ思う。
「“なに?”じゃないよ!もう時間ないんだよ?!まだ今日1回もキスもしてないんだよ?!」
「……」
いつもいつも思うけど、なんで辻本ってこんなに声がデカいんだろう。そのちっこい身体のどこから声出してんだろう。
割と本当に疑問。
テストから解放された辻本はつい最近、近所の飲食店でアルバイトを始めたらしい。
今日は午前中で学校が終わったから、夕方のバイトの時間まで一緒に居て!と誘われるまま、辻本の家にお邪魔していたんだけど。
「もう16時とか信じらんない!時間経つの早くない!?なんで!?」
「…辻本が寝るからだよ」
部屋に着くなりベッドへとダイブした辻本はものの数分で爆睡し始めた。
その寝つきの良さが少し羨ましくなるほど、辻本は本当によく寝る。
ピシャリとそう言い返せば辻本は「…っう」と、あからさまに言葉に詰まる。
突然ガバッと起きたと思えば、時間を見て発狂。
そしてそのままの勢いで俺を床になぎ倒すんだから、本当に辻本の行動はいつも予測不可能すぎて正直困り果てている。
「…ご、ごめんなさい…、」
少しは寝すぎているという自覚があるのか、まるでシュンと項垂れる子犬のように眉を下げてそう言う。
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