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あたしの彼は、
、
しおりを挟む「…いーよ、別に」
小さな声で返した言葉は本心だった。
シュンと肩を落とすような気持ちになったのも事実だけど、それよりもどこかホッとしたような気持ちの方が大きかった。
だって別に、焦る事じゃないもん。ていうかむしろ、焦っちゃダメな事だ。
「…終わるまで寝てていいから」
あたしの髪を優しい手つきで撫でていた榛名くんが発した言葉に、ムッと眉を寄せる。
「なんか前もそのセリフ聞いたんだけど?」
「…だって辻本、一緒に居ると8割は寝るじゃん」
「そんな事ないから!それに、さすがにあたしも人様の部屋で爆睡できるほど神経図太くないから!」
「…ベッド使ってもいいよ」
「だから要らないってば!…って、え?」
「…?なに?」
「今、ベッドって言った?」
「…言ったけど…?」
それがどうしたの?と言わんばかりに首を傾げる榛名くんから視線を外してチラリと後方にあるベッドに目を向ける。
どうやらあたしは匂いフェチの傾向があるようだし、あの榛名くんの匂いがプンプンしそうな布団に包《くる》まれるだなんて、願ったり叶ったりじゃない?
…ごくり、生唾を飲み込む。
「…て、テストで疲れちゃったしちょっと横になろうかなぁ」
ちょっと噛んじゃったし手の平を返したようにいきなりそう言ったあたしはきっと不自然極まりなかっただろう。
けど、あたしの相手ができない罪悪感からなのか、それとも本気で何も気づいてないのか、どちらなのかは分からないけれど榛名くんは至って普通に「そうしなよ」って、あたしが欲しい言葉をくれた。
「好きに寛《くつろ》いでていいよ」
「じゃあお言葉に甘えて!」
待ってましたと言わんばかりにそう返事をするや否や、あたしは光の速さで布団の中に潜り込んだ。
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