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特別の合図
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「…え?…イトコなの?」
「うん」
「じゃあ、あんな事やこんな事は…」
「だからしてないって」
溜め息交じりに、だけどキッパリとそう言い切られて、あたしの顔にじわりじわりと熱が集まっていく。
だって、こんなの恥ずかしすぎる。とんだ勘違いと早とちりじゃん。
「…な、なにそれ!なんですぐに言ってくれなかったの!?」
「何回も言おうとしたけど辻本が暴走するから言えなかったんだよ」
「ぼ、暴走って……」
……まあ、確かに暴走してたかもしれない。
ていうか、してた。完全にしてた。
「…もう落ち着いた?」
「……」
すっかり意気消沈というか黙りこくってしまったあたしに優しい榛名くんの声が降り注ぐ。
勘違いと早とちりのダブルパンチで叫びまくって泣きじゃくって暴走するという大失態を犯したあたしを榛名くんはバカにするでもなく責めるでもなく、至って普通に接してくる。
それが余計に恥ずかしいし気まずい。
「…辻本?」
俯いたまま、うんともすんとも言わなくなったあたしを心配しているのか、榛名くんはあたしの顔を覗き込んできた。
パチッと目が合った瞬間、なんとも言えない感情が湧き上がってきて、思わず顔ごとバッと逸らした。
「……帰ります」
「…え?」
「とりあえず今日は帰りますんで、あの、その、はい」
「なんで敬語?ていうか何その喋り方?」
「…では、左様なら」
「ちょっと待って、なんで帰んの?」
踵を返そうとしたあたしの腕を掴んでそう引き止めてくる榛名くんにお願いだから察してくれと叫びたかった。
「うん」
「じゃあ、あんな事やこんな事は…」
「だからしてないって」
溜め息交じりに、だけどキッパリとそう言い切られて、あたしの顔にじわりじわりと熱が集まっていく。
だって、こんなの恥ずかしすぎる。とんだ勘違いと早とちりじゃん。
「…な、なにそれ!なんですぐに言ってくれなかったの!?」
「何回も言おうとしたけど辻本が暴走するから言えなかったんだよ」
「ぼ、暴走って……」
……まあ、確かに暴走してたかもしれない。
ていうか、してた。完全にしてた。
「…もう落ち着いた?」
「……」
すっかり意気消沈というか黙りこくってしまったあたしに優しい榛名くんの声が降り注ぐ。
勘違いと早とちりのダブルパンチで叫びまくって泣きじゃくって暴走するという大失態を犯したあたしを榛名くんはバカにするでもなく責めるでもなく、至って普通に接してくる。
それが余計に恥ずかしいし気まずい。
「…辻本?」
俯いたまま、うんともすんとも言わなくなったあたしを心配しているのか、榛名くんはあたしの顔を覗き込んできた。
パチッと目が合った瞬間、なんとも言えない感情が湧き上がってきて、思わず顔ごとバッと逸らした。
「……帰ります」
「…え?」
「とりあえず今日は帰りますんで、あの、その、はい」
「なんで敬語?ていうか何その喋り方?」
「…では、左様なら」
「ちょっと待って、なんで帰んの?」
踵を返そうとしたあたしの腕を掴んでそう引き止めてくる榛名くんにお願いだから察してくれと叫びたかった。
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