雨晒し

Liz

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隠された本音

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きっとあたしはこれ以上榛名くんに近づきたくないと思いながらも、これ以上遠ざかるのもいやだった。

そんな風に矛盾した気持ちが混沌とする中で、間違わずに済む距離感を、その線引きを、必死に保とうとしていた。


あたしは予防線を貼る事ばかりに必死になってて、分からなかった。







ガシッと突然掴まれた腕。
いつもの優しい力なんかじゃなく、乱雑に掴まれた事に驚いて顔を上げた先――、




「…それ、本気で言ってんの?」


普段からは想像できないくらい冷たい目をした榛名くんがあたしをじっと見下ろしてて、思わず息を呑んだのも束の間。


掴まれた腕を強い力でぐいっと引っ張られ、次の瞬間にはドンッと背中が壁に当たる感触を受けた。



「…っ」


僅かに痛みを生じるそれに顔を歪ませるあたしなんてお構いなしに、榛名くんはあたしの両手首を掴み、そのまま壁に押しつける。
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