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隠された本音
、
しおりを挟むいや、見てたっていうよりかは眺めてたっていう方が正しいかもしれない。
ギュっと握り締めた手の平にジワリと汗が滲む感覚だけがやけにリアルに伝わってきて、それが気持ち悪くて気持ち悪くて、仕方なくて。
「可哀想に。司に捨てられたんでしょ?俺が慰めてあげるよー?」
「…、」
これが“可哀想な女”に使われる常套句ってやつなんだろうか。
「だいじょーぶ。俺、司とキョウダイになんのとか全然平気だし!」
あたしが今どんな気持ちでいるのかなんて、この男にはきっと分からない。
あたしが今どんな表情をしているのかなんて、この男にはきっと見えてない。
「とりあえずさ、連絡先教えてよ?」
まるで取って付けたみたいに言われるそれに、重さなんてきっと1グラムもない。
自分が周りにどう思われているのか、それはもう十二分に分かってる。
もともと派手な顔立ちと標準サイズを優に上回るであろう胸。
そのふたつがそこそこ男を引き付ける要因になっている事だって、この歳になれば自ずと分かった。
チャラそうだとかケツが軽そうだとか、そういう目で見られるような身形を好むあたしにも非があるんだって事も分かってる。
だけど、何もあたしは誰でもよかったわけじゃない。
今までそういう関係を持った人、全員をちゃんと好きだった。
好きだったから、身体を許したのに。
「あれ~?聞こえてる?もしかしてシカト~?」
「…、」
身体の奥底から湧き上がってくる感情は、悔しいだとかムカつくだとか、そんなものじゃなかった。
ただただ、悲しかった。
悲しくて、痛かった。
「…っ」
ああ、ダメだ泣きそう。
――そう思った時だった。
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