59 / 141
脆弱を覆う優しさ
15
しおりを挟むペラペラとひとりで喋るあたしに、榛名くんは机の上の荷物をまとめて持つと、ゆっくりとこっちに近づいてくる。
一歩、一歩。徐々に縮まる距離。
あたしのすぐそばまで来た榛名くんは、
「――…雨晒《あまざら》し」
ポツリと、まるで呟くようにそう言いながら、あたしの頭にバサッと何かを落とした。
予想してなかった衝撃に「わっ」と驚きで声を上げながらも、頭に被せられたそれを剝ぎ取れば、それは紺色のカーディガンだった。
多分…ていうか確実に、榛名くんのもの。
「…じゃあ」
「っちょ、ちょっと待って!」
くるりと踵を返してそのまま教室を出て行こうとする榛名くんの腕をガシッと掴んで呼び止めれば、ピタリと動きが止まった。
「…なに?」
足は止めてくれたものの、振り向かないまま淡泊にそう問いかけてくる。
「なにって、カーディガン!借りるのも悪いしいいから!」
「…別にそれ今日使ってないし、貸したところで俺は困らないから」
「いや、でも、いいよ。寒くもないしもうこれだけずぶ濡れになったら何着ても変わんないし…」
「ってか、そうじゃなくて、」
渋るあたしの声を、少し張り上げた榛名くんの声が遮った。
「へ?」と間抜けな声を出せば、榛名くんはあたしに背を向けたまま、少しの間を置いてから言葉を続けた。
「…マジで、どこ見ていいか分かんないくらい…その…、透けてる、から」
「……、」
語尾にいくにつれて小さくなっていく声。
ふと視線を自分に落としてみれば、ぐっしょりと濡れたカッターシャツは肌に貼りついて、その下に着けているピンクの下着が確かに透けていた。それはもう透け透けだった。
どうやら今日に限ってキャミを着るのを忘れていたらしい。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。
ねんごろ
恋愛
主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。
その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……
毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。
※他サイトで連載していた作品です
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる