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揺れる黒と、広がる赤
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しおりを挟む「…夕陽のせいじゃないよ」
「…へ?」
もう一度伸びてきた榛名くんの白い手が、あたしの鼻をキュッと摘まむ。
驚きで「んぶ!」と色気もクソもない声を零したあたしを見下ろす榛名くんは、微かに口元を綻ばせた。
滅多に見れないその笑顔に、目が奪われる。
「…俺が赤いの、夕陽のせいじゃない」
「は、榛名くん?」
「…辻本のせいだよ」
「…っ」
まるで心臓が鷲掴みにされたみたいにぎゅうっと苦しくなった。
榛名くんはそう言うと、あたしからパッと手を離して「じゃあ」と告げて、すぐに踵を返して教室を出て行ってしまった。
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