雨晒し

Liz

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揺れる黒と、広がる赤

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それもそうか。
この体勢なら嫌でもあたしの頭が視界に入るだろうし、生え際だって見放題だ。

それにしてもあたし、3ヶ月もカラーさぼってたなんて女として終わってる。これではダメだ。



「…明日美容院行こ」


誰に言うでもなく独り言の域でポツリとそう呟けば、まるでその言葉に反応したかのように榛名くんが手にしていた漫画を床に置いた。


…あれ?読書タイム終了?


そう思っていると白くて綺麗な手がゆっくりとこちらに伸びてきて、あたしの髪を掬うようにさらりと撫でた。


心臓がドキッと音を立てる。

榛名くんからあたしに触ってくる事なんて滅多にない。下手したら初めてかもしれない。
どういう風の吹き回しなんだ、と一瞬で頭が混乱に陥った。



「…どんなのにするの?」

「っへ?」


まるで独り言のように呟かれたその質問に思わず間抜けな声を出せば、「髪色」と淡泊な返事が返ってきた。


…ああ、なるほど。髪色のことか。



「うーん…多分今と変わんないようにすると思う」


平静を装ってそう答えたものの、今も尚あたしの髪を撫でている榛名くんの手の感触に内心は動揺しまくっていた。


別に厭らしい動きでもないし、本当にただ髪を梳くように撫でられているだけだっていうのに、あたしの心臓は壊れたようにバクバクと音を立てだす。
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