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プロローグ

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「ふうん…お前が蘭香ランカか。おもてをあげろ」
「はっ」
おずおずと顔を上げると、一瞬、時が止まったような感覚におちいった。
そこには、この世のものとは思えないくらい美しい顔をした皇子が椅子にふんぞり返っていたからだ。
勝ち気そうな目元にスッと通ったきれいな鼻筋。
弓なり形の唇は、キュッと固く結ばれている。
黒曜石みたいに真っ黒な髪と、それとは正反対に真っ白な肌。
にしきで編まれた白い上衣じょういに藤色のはかまには銀の流水紋りゅうすいもんが涼しげに流れている。

すっごく綺麗な顔…!

そしてこれから使える主に、うっとりしている私の名前は ハン 蘭香ランカ
地方中級官吏かんり(この国での役人)の娘である私が、なぜ
我が『燐葉国りんようこく』の第二皇子 雪牙セツガ様と直々に顔を合わせているかというと……。

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