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空中散歩
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買い物を終えると、雨が降っていた。自動ドアごしに見えるアスファルトは雨粒で削られ、大きな水溜まりをこさえている。レジ袋を提げ、目の前の惨状に唖然とした私は、どうする、と一緒に居た少女に問いかけた。
少女は同じ年のようで、私よりいくらか背が高かった。そのせいか顔は見えず、ベールを被っているのかと思うほどに、薄暗い。しかし、不思議と居心地が悪いとは感じなかった。
「行っちゃおうよ。」
声を弾ませて、少女は言った。この雨の中を、と手に持った袋を掲げ抗議をするが、少女は依然楽しそうに、
「大丈夫。」
と言った。
何が大丈夫なのかも分からないまま、レジ袋をその口からしっかりと握りしめた。少女の楽し気な気分が移ったようで、口元は自然と緩まっていた。
合図を出すでもなく、開いた自動ドアに向かって私たちは一歩、地面を蹴った。私がせんとうに立ち、雨の下へ飛び出す。雨粒が頭に落ちる感覚がする前に、もう一歩、蹴ってみた。すると、体はぐん、と前に進み、景色はあっという間に太い線になった。足はアスファルトを踏まず、空中を蹴っている。厚い、固くも柔らかくもない何かを踏んでいる感触が足裏へ伝う。それから離れるように思い切り下方向に踏み込むと、体は上へ、上へと昇り、ショッピングモールの屋上近くを飛んでいた。
雨が頭を、体を伝い、服の色を変えていく。それでも、誰もいない、邪魔もされない空を飛んでいる爽快感が勝っていた。
体を水平に向けた。今度は鳥のように空を滑り始めていた。腕を上下に大きく振れば、まるで翼のように、腕は空気を掴み舞い上がった。
気づけば、少女の姿はなかった。
私はもう一度羽ばたくと、モールの屋上を優に超えた。張り巡らされたバイパスと電線の向こうに、小さな家が見える。雨は弱まり始め、体はもう濡れなくなっていた。
遠くに見えた、小さな家を目指し、私はもう一度大きく翼を動かした。
少女は同じ年のようで、私よりいくらか背が高かった。そのせいか顔は見えず、ベールを被っているのかと思うほどに、薄暗い。しかし、不思議と居心地が悪いとは感じなかった。
「行っちゃおうよ。」
声を弾ませて、少女は言った。この雨の中を、と手に持った袋を掲げ抗議をするが、少女は依然楽しそうに、
「大丈夫。」
と言った。
何が大丈夫なのかも分からないまま、レジ袋をその口からしっかりと握りしめた。少女の楽し気な気分が移ったようで、口元は自然と緩まっていた。
合図を出すでもなく、開いた自動ドアに向かって私たちは一歩、地面を蹴った。私がせんとうに立ち、雨の下へ飛び出す。雨粒が頭に落ちる感覚がする前に、もう一歩、蹴ってみた。すると、体はぐん、と前に進み、景色はあっという間に太い線になった。足はアスファルトを踏まず、空中を蹴っている。厚い、固くも柔らかくもない何かを踏んでいる感触が足裏へ伝う。それから離れるように思い切り下方向に踏み込むと、体は上へ、上へと昇り、ショッピングモールの屋上近くを飛んでいた。
雨が頭を、体を伝い、服の色を変えていく。それでも、誰もいない、邪魔もされない空を飛んでいる爽快感が勝っていた。
体を水平に向けた。今度は鳥のように空を滑り始めていた。腕を上下に大きく振れば、まるで翼のように、腕は空気を掴み舞い上がった。
気づけば、少女の姿はなかった。
私はもう一度羽ばたくと、モールの屋上を優に超えた。張り巡らされたバイパスと電線の向こうに、小さな家が見える。雨は弱まり始め、体はもう濡れなくなっていた。
遠くに見えた、小さな家を目指し、私はもう一度大きく翼を動かした。
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