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慈愛
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どちらともなく手を繋いだ。隠れるように。微かに震える手を宥めるようにそっと包むとふ...と息を漏らした。
「震えてる。緊張してる?」
そう言うと、
「...うるさいな。」
と返した。少し赤くなった頬に手を添えて、顔を近づける。瞳が隠されたのを見計らって、そっと口付けた。軽い、はむような口付け。じわじわと移る熱に、短く息を吐いた。
「私、今が一番幸せかも。」
そう言って頬を緩める。心底幸せそうな顔をした湊に、葵は愛おしげに目を細めた。
「私も。」
そう言って、もう一度、合わせるだけの口付けを交わした。
誰にも言わない、言えないこの関係が心地よかった。恋情を自覚したのはどちらからだったか。ただ、「友人」という関係が「恋人」に変わった瞬間だけは鮮明に覚えていた。
いつものように部屋で駄弁っていた。ただ、その日は、どこか別の視点から自分たちを見ているような、どこか他人事のように眺めている私がいた。
「ねぇ、聞いてる?」
そう言った声に、ふと我に返る。湊がこちらを見つめていた。いつも見ている目のはずなのに、初めて見るような違和感にどきりと息をのんで、浅く頷いた。
「...聞いてるよ。」
「そう。」
そう言って彼女はまた話し出す。今日あったこと、好きな曲のこと、テレビ番組のこと。そんな他愛のない会話がふ、と途切れた。たちまちゆっくりとした時間が流れる。窓から漏れる光が優しく彼女の横顔を照らして浮かび上がらせる。パサ...と耳にかけた髪が落ちる音がした。
日が移動し、薄い橙色に染まり始めた頃、送っていた視線が不意に受け止められた。
ふっと頬を緩めて、「どうしたの」と優しく問われる。その動きに吸い寄せられるように、口を開いた。
「綺麗だね」
精一杯の告白。およそ友人に贈るものではないだろう言葉。湊は少しだけ目を見開いたが、すぐに目を細めた。
「葵も綺麗だよ」
そう言って、私の頬に手を添えた。目の前には湊しか見えない。そっと離した時、鮮明に見えた瞳は、幸せを一杯にためていた。
軽く口付けたまま、そっとベッドに縫い付ける。好奇心と怯えが滲んだ瞳が葵を見上げた。
「怖い?」
そう問いかければ、
「平気。」
怖くないと言えば噓になるが、この先を知りたいのも本音だった。
強気な返事に愛おしさを感じながら、ぎゅっと身体全体で包み込んだ。そして、そっと手を下に動かし、秘所を触った。少し身体を強張らせ、は...と息を吐く。怖がってないのを確認し、そのまま手を動かした。
「っ...ん....」
小さい声が響いた。頭の中で反響して脳を揺らす。身体の下で微かに震える感覚がして、葵は顔を上げた。そこには、固く目を瞑り、未知の感覚に耐える湊の姿があった。涙が一筋零れて、流れ落ちている。葵は優しく指先で拭ってやり、目の上に口付けた。湊は薄く目を開き、正面から葵を見据えると、小さく口を開いた。
「ねぇ。」
ぐいっと頭に手を回し、頬を綻ばせる。
「すき。」
目を細めて、幸せを一杯にためて、そう呟いた。初めてはっきりとした言葉で告げられたそれに、葵も愛おしげに口元をゆるめて、呟いた。
「私も、すき。」
あ、あの時と同じ顔。そう思いながら重力に引き寄せられるまま、まるで互いを確かめ合うように、深く、長い口付けを交わした。
夜明けが近づく。カーテンの隙間から差し込む光に、不安を感じ始めたのはいつからだったろうか。
あまり知られたくはない、そんな関係だった。それは、ひとつの鎖となって、二人に絡みついた。そして、その鎖を甘んじて受け入れ、その身を漂わせている。
もう解けないだろうという、予感を感じながら。
「震えてる。緊張してる?」
そう言うと、
「...うるさいな。」
と返した。少し赤くなった頬に手を添えて、顔を近づける。瞳が隠されたのを見計らって、そっと口付けた。軽い、はむような口付け。じわじわと移る熱に、短く息を吐いた。
「私、今が一番幸せかも。」
そう言って頬を緩める。心底幸せそうな顔をした湊に、葵は愛おしげに目を細めた。
「私も。」
そう言って、もう一度、合わせるだけの口付けを交わした。
誰にも言わない、言えないこの関係が心地よかった。恋情を自覚したのはどちらからだったか。ただ、「友人」という関係が「恋人」に変わった瞬間だけは鮮明に覚えていた。
いつものように部屋で駄弁っていた。ただ、その日は、どこか別の視点から自分たちを見ているような、どこか他人事のように眺めている私がいた。
「ねぇ、聞いてる?」
そう言った声に、ふと我に返る。湊がこちらを見つめていた。いつも見ている目のはずなのに、初めて見るような違和感にどきりと息をのんで、浅く頷いた。
「...聞いてるよ。」
「そう。」
そう言って彼女はまた話し出す。今日あったこと、好きな曲のこと、テレビ番組のこと。そんな他愛のない会話がふ、と途切れた。たちまちゆっくりとした時間が流れる。窓から漏れる光が優しく彼女の横顔を照らして浮かび上がらせる。パサ...と耳にかけた髪が落ちる音がした。
日が移動し、薄い橙色に染まり始めた頃、送っていた視線が不意に受け止められた。
ふっと頬を緩めて、「どうしたの」と優しく問われる。その動きに吸い寄せられるように、口を開いた。
「綺麗だね」
精一杯の告白。およそ友人に贈るものではないだろう言葉。湊は少しだけ目を見開いたが、すぐに目を細めた。
「葵も綺麗だよ」
そう言って、私の頬に手を添えた。目の前には湊しか見えない。そっと離した時、鮮明に見えた瞳は、幸せを一杯にためていた。
軽く口付けたまま、そっとベッドに縫い付ける。好奇心と怯えが滲んだ瞳が葵を見上げた。
「怖い?」
そう問いかければ、
「平気。」
怖くないと言えば噓になるが、この先を知りたいのも本音だった。
強気な返事に愛おしさを感じながら、ぎゅっと身体全体で包み込んだ。そして、そっと手を下に動かし、秘所を触った。少し身体を強張らせ、は...と息を吐く。怖がってないのを確認し、そのまま手を動かした。
「っ...ん....」
小さい声が響いた。頭の中で反響して脳を揺らす。身体の下で微かに震える感覚がして、葵は顔を上げた。そこには、固く目を瞑り、未知の感覚に耐える湊の姿があった。涙が一筋零れて、流れ落ちている。葵は優しく指先で拭ってやり、目の上に口付けた。湊は薄く目を開き、正面から葵を見据えると、小さく口を開いた。
「ねぇ。」
ぐいっと頭に手を回し、頬を綻ばせる。
「すき。」
目を細めて、幸せを一杯にためて、そう呟いた。初めてはっきりとした言葉で告げられたそれに、葵も愛おしげに口元をゆるめて、呟いた。
「私も、すき。」
あ、あの時と同じ顔。そう思いながら重力に引き寄せられるまま、まるで互いを確かめ合うように、深く、長い口付けを交わした。
夜明けが近づく。カーテンの隙間から差し込む光に、不安を感じ始めたのはいつからだったろうか。
あまり知られたくはない、そんな関係だった。それは、ひとつの鎖となって、二人に絡みついた。そして、その鎖を甘んじて受け入れ、その身を漂わせている。
もう解けないだろうという、予感を感じながら。
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