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三章

99 番外 彼女が出会う人 Ⅱ

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 どどどどどどうしよう。
 生きてるわよね?
 わたしは、血だらけの男性の手を触る。
 ほんのりと暖かく、わたしの手を握り返してきた。
 
 何かを探しているように地面の上を手が動く。
 近くに落ちていた仮面を、なんとなく手渡してみると、その顔を仮面で隠した。
 息が荒い……。
 血は止まっているようだけど、やっぱ手当てがいるよねこれ。

 えーっと……、確かコーネリアさんが医術が得意とかなんとか、急いで戻ろう。
 直ぐに二人の姿が見え……あれ?。


 二人じゃなくて三人いるよね?。
 わたしの姿をみたナナっちが顔をゆがめる。
 茶髪色の長い髪を縛った男性がわたしをみつけると、笑顔を向けたきた。

 歳はうーん、ヴェルと同じぐらいか少し上かな?。

「これはこれは、また可愛い女性で」
「はぁ……どうもありがとう。
 ナナっちこの人人は?」
「おっと、可愛い姫には自己紹介がまだだった。
 俺の名はオーフェン、この辺は森の中、危ないぜっ。
 町まで送ろう」

 決め顔のつもりなんだろうけど、わたし達との空気が何か違う。

「一番危なそうなのはアンタなんですけど、ここ森の中ですわよ」
「ちょっと、ナナっ」
「そりゃないぜ、小さなお姫様。
 でもまぁ、一理ある。
 実はツレと一緒に人探しをしていてね」

 両手をお手上げのポーズを決めたオーフェンさん。
 困っているのに困った様子が無く、なんていうか呆れる。

「まったく……、ツレって言いますけど、どこから来たんですか」
「ミーファン」

 オーフェンさんの言葉に、二人の顔付が変わった。
 私を守るように前にでると、二人とも腰を少し下げ始めた。
 聞いたこと無い町……、どこだろう。

 ナナっちが怖い声をだした。

「コーネリア、万が一の場合フローレンスを頼みます」
「わかった」
「え? え??」

 驚くわたしに、ナナっちが前を向いたまま話してくれる。

「ミーファンとは、帝国領の町ですわ。
 迷子かと思っていたんですけど……はぐれの可能性が高いですわね。
 そもそも、裏道に現れる男なんて怪しさ百パーセントでしたけど」

 オーフェンさんは慌て始めた。

「まった! 俺は戦う気はないっ!。
 本当に人を探しているだけなんだっ。
 じゃなかったら、聖騎士である二人の前に出ないって」

 オーフェンさんは、両手を前に出した後に武器をコーネリアさんの足元に投げている。
 短剣二本に、腰のベルト。
 上着に……靴。
 肌着を脱いで、ずぼんも脱いだ。

 え? え?。
 止める暇もなく衣服を脱いでいく。
 わたし達の前で、唯一残されていた下着も脱ぐと両手を横に広げる。

「他に武装は無い」

 わたし達の前でぷらんぷらんさせたものが動く。
 コーネリアを見ると、両手で顔を隠しているけど指の隙間あいてるわよね。
 ナナっちは口をぱくぱくさせている。
 昔ヴェルのを見た事あるけど……それよりもちょっと大きい。

「わ、わかりましたから! ふ、ふくを着てくださいっませっ!」
「疑いが晴れるまで、俺は別に全裸でも……」
「こっちが困るんですわっ。別にこちらも捕まえるような事はしませんからっ」

 オーフェンさんが、しぶしぶ服を着だす。
 武器はどうする? と聞いてきたけど、武器も別にいいですわよと、ナナっちが答えていた。

 近くの岩へと座りだした。
 方足を上げて、所でと、話を切り出した。

「黒髪で、身長はちょっと高い男。
 顔は常に隠しているからわからんけど、そういう男みなかった?」

 あ……。
 さっきの人だ。
 ナナっちが首を振る。

「みてませんわよ、それに探す事もしませんわ」
「すみません、こちらも特殊な任務ですので」

 コーネリアさんが頭を下げた。

「一応何をしたか聞いてよろしいですか?」
「ツレの復讐相手」
「ずいぶんと、嫌な話ですわね」
「だろー……、後一歩まで追い詰めたんだけど、逃げられて。
 最後に一つだけいいか、この二本の筒を渡しておく」

 オーフェンさんは腰の袋から小さい筒を取り出した。
 赤と青のマークが書いてある。

「はぁ、なんですの? 発炎筒のようですけど」
「さすが、一本は赤色。
 もし見つけたらでいいから、長身の男がいたら上げてくれるだけでいい」

 ナナっちはうなずくともう一本を見る。

「こっちはなんなんですの?」
「そっちは青色、下半身が寂しい夜に、煙をあげてくれると、俺がすぐにっ。
 あっ、もったいない」

 ナナっちは足元に捨てると何度も何度も踏み潰す。
 青い粉が地面に散らばった。

「いりませんわよ!」
「じゃぁ、二人に渡しておく」

 腰からさらに筒をだしてきた。

「何本もっているのよ!」
「後三本」
「渡さないでくださいまし」

 しょんぼりした顔のオーフェンさんがため息をつく。
 言うなら今だろう……。

「あの」
「お? 可愛いお姫様なんでしょうか」

 わたしの顔をみ始めるオーフェンさん。
 黙っているとちょっと、いや、結構かっこいいかも。

「わ、わたし見たかもっ!」
「どこでっ!?」
「向こうに走っていくのをちらっと……」

 わたしは、先ほどの男の人が倒れている方向と反対を指差す。

「ありがてえ、フラン姐さ……」
「「フランっ!」」

 ナナっちとコーネリアの声がはもった。

「彼方いまフランといいましたよね? フランといえば国内指名手配の……」
「いやいや、いつもふらっとした姐さんと合流しなきゃって言ったんだって、職務も大変と思うけど、良く聞いたほうがいいぜ」
「あっ、ちょっと待ちなさいっ!」

 ナナっちが叫ぶ頃には既に、オーフェンさんが走って小さくなっていく。

「嵐のような人でしたね」
「まったく……、さて二人とも行きましょうか」

 わたしは小さく手を上げる。

「あ、あのね。
 二人にお願いがあるんだけど……」
「何急に……、友達じゃない何でも言いなさいよ」
「そうですね、やっぱり戻るなどでなければ、フローレンスさんなんでしょう?」
「実は……」

 わたしは二人に男性の事を伝えた。
 さて……、あの人たちに内緒で村に運ぶのを手伝って貰おう。
 
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