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二章

65 サービス回

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 女性の話し声が微かに聞こえてくる。
 部屋の中が少し明るく感じる、という事は朝か。
 二人に挟まれて少し緊張はしていたけど眠れたらしい。
 女性達の声が聞こえる。

「ほんっとに大丈夫なんでしょうね」

 そういうのは、フローレンスお嬢様の声だ。

「別に私は見られても平気よ、見られて減るもんじゃないし」

 これはマリエルだ。

「あ、もしかしてマリエルさんって見られたから減ったんですかっ!」
「だーれが、小さい胸だってっ!!」
「声が大きいって、ヴェルが起きるからっ!」

 これだけ騒げば誰だって起きる。
 
「もう起きてます、二人して朝から何の……」

 話をしているんですか? まで言え無かった。
 マリエルとフローレンスお嬢様二人がほぼ全裸だからだ。
 大きい胸をさらけ出しているフローレンスお嬢様と、それよりは小ぶりなマリエル。
 
「い、いつまで見てるのよっ!」

 フローレンスお嬢様が怒る。

「すみません」
「うわ、何時もと同じテンション……」
「家族みたいなものですので」

 僕は慌てて背を向けた。
 少し不機嫌なフローレンスお嬢様は置いておいて。
 口には出さないが、僕はアルマ村長の家で召使いとして暮らしていたのだ。
 その召使いが、主人の娘の裸で興奮してはだめだろう。
 
 じゃぁマリエルは? で興奮するかと言えば……。
 うん、まぁ……時と場合だ。

「あら、ヴェルだって男性なんだし、見たい気持ちはあるでしょ。
 私が他の聖騎士部隊に居た時は、そういう目的の男多かったわよ。
 もちろん全員倒したけど」
「あいにくと、僕は変わり者なので。
 いえ特に、お二人とも仲がいいのは素晴らしいと思います。
 けど、着替えなどするのであれば、男性と同室はやめたほうがいいです。
 僕は別に何とも思いませんけど、中には飛び掛るような男性も居て……」

 多分、いや絶対にオーフェンなら血の涙を出して飛び掛るだろう。
  
「だーっ! 朝からヴェルの小言なんて聞きたくないわよっ!」

 フローレンスお嬢様が文句を言い出す。

「同感、ねぇヴェル? 別に私たちはヴェルだから同室で脱いだのよ」
「はぁ……、男と見てないって事ですよね。あのっ」

 僕の背後から白い手が伸びてきた。
 マリエルの手だ。
 背中にくっつくように体を密着させている。

「逆よ、途中で起きたらそれはそれでいいかなーって」
「ちょっとマリエルのおばさんっ!離れなさいよっ!!」
「だーれが年増よっ、そもそもフローレンスのお子ちゃまちゃんが汗臭いかもっていうから……」
「ああ、なるほど。
 それで二人とも裸で」
「だ、だって……昨日まで毎日体拭いていたのに昨日はまだだし」
「では、取り合えず僕は外に行くので。
 続きは居なくなってからという事で」

 僕はマリエルの手を解こうとすると、マリエルの手ががっちりと胸元から離れない。
 さらには白い足が左右から伸びてきた。
 完全に密着している。

「あの……」
「ヴェルちょっと匂うわよ」
「う……」

 別に不潔にしているわけじゃない。
 でも、女性と違って男性でもあるしこの数日間は体も拭いていない。
 しかも昨日は激しい戦闘もしたし、衣服にだって微量の煙の匂いが染み付いているだろう。

「ねぇ……」
「断ります」
「ちょっと、まだ何も言ってないわよ」
「ろくな案じゃないとおもうので。
 とにかく、僕は部屋の外に行きますのでっ! 力を抜いてくださいっ!!」

 動こうにも、がっちりと組まれている。
 手は胸の部分で、マリエルの白い足は腰の部分を固めている。
 がむしゃらに動けば外せるだろうけど、そうするとあちこち触る危険がある。

「じゃ、フローレンスちゃん。
 ズボンお願い」
「りょうーかーいー」
「いや、ちょっとっ!」

 途中で大きなブラつけたのだろう、半裸のフローレンスお嬢様が僕の前へ回り込む。
 そしてズボンに手を掛け始めた。
 あの、二人ともさっきまで言い争いしてたよね?。
 なんでそんなにチームワークがいいのっ!

「はーい、上半身はぬぎぬぎしましょうねー」
「し、したは任せてっ!」

 ズボンとシャツが脱がされる。
 背中にマリエルの物が当り暖かいぬくもりをって……、そんな場合じゃないっ!

「フローレンスお嬢様っ!」
「な、なにっ!?」
「怒りますよ」

 フローレンスお嬢様の手が止まる。
 その両手は僕の腰へと伸びていた。
 背中から悪魔のささやきが発動した。

「どうせ今止めても怒られるなら、脱がしたほうが得よ」

 フローレンスお嬢様の体がビクッとなり手が動く。
 僕の下着に手をかけたフローレンスお嬢様。
 ゆっくりと動いていく。

 流石に最後の下着は脱がされるわけにはいかないので、全力を出す事に決めた。
 そう決めた時、ちょうど部屋の扉が開いた。

「たいちょーおはようござ……」

 コーネリアだ。
 僕達の姿を見て固まっている。
 裸に近い男女が三人いればそりゃ固まるだろう。
 しかも、その内女性ふたりは僕の衣服を剥ぎ取っている。
 マリエルの力が一瞬緩んだ。

「あっ!」
「外で汗を洗い流してくるのでっ!」

 僕は鞄と脱がされた服を持って廊下へとでた。
 途中で、アデーレともすれ違う。

「ヴェルさん」
「とっとっと……、裸に近いのは訳があって」
「洗濯用の共同井戸は裏手」
「あ、ありがとう……」
 
 一瞬にして察したアデーレの忠告を受け、僕は急いで裏手へと走った。
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