61 / 120
二章
60 針のむしろ、胃薬が欲しいと後に語る
しおりを挟む
最後に別れた時の鬼気迫る顔ではなく、親しみやすい笑顔で僕を見つめてくる。
「その、腕は大丈夫?」
「え?」
「ほら、ちぎれたじゃない」
「あっ……うん。
今は動くよ」
「そう、よかった」
……。
…………。
なんだこの気恥ずかしさは。
「うがーーーーーーーーーっ!!!」
突然、僕とマリエルの間に奇声をだして割ってはいるフローレンスお嬢様。
「わっ」
「っと、フローレンスお嬢様驚かせないで下さい」
「なんでヴェルを追い出した奴が此処にいるのよっ!。
それに近い、あんたヴェルとの距離が近いからっ」
「なんでと言われても、君を助けだすためにいるんだけど」
怒るフローレンスお嬢様の顔に人差し指を突きつけるマリエル。
僕は思わず疑問の声を出してしまった。
「なんで……」
僕の声に不満顔になったマリエルは僕の方に向いて説明してくる。
「なんでって、君もかっ。
フェイシモ村が襲われたって聞いてね、行ったはいいけど……。
建物には目立った被害は無し。
ただ、村長の娘が全て丸く押さえる為に付いていったと」
僕は思わずフローレンスお嬢様を見た。
「そうなのですか?」
「え、う……うん。
いや、箱が欲しいって交渉に来て、その時に私と結婚したいって人が居てね。
私も断ったのよ? でも、ヴェルだって居なくなったし、顔を見せるだけでいいからって、不自由もしない旅にするって言われたし……」
初耳だ。
てっきりフェイシモ村が襲われ、フローレンスお嬢様も村も何もかも怖されたのかと。
「普通なら、それで終わる事件なんだけどお……」
茂みから長身の人間が出てきた。
フードを取った。
一瞬男性に見えたけど黒髪をした女性が、マリエルの横に立ち並ぶ。
弓使いのアデーレだ
「隊長、撒いて来ました。
馬は足が付くといけないので森に放してきました」
「もう一人はアデーレだったのか……ありがとう」
兵士を撒いてくれた人の名前を言う。
口数の少ないアデーレの眉が小さく動く。
「すみません。
初対面ですよね」
しまったあああっ。
この失敗は二回目である、初対面だけど初対面じゃない。
えーっと……。
「そうマリエルが、弓を使う隊員がいるって褒めてたからてっきりそうかと。
ヴェルと言います」
僕の言葉にしばし時間が止まった気がした。
「へー、私ってそんな事言ってたんだー」
「ふーん、ヴェルって。
話だけで見た事もない女性の事を気に留めているんだー」
マリエルとフローレンスお嬢様の白い眼が視線として突き刺さる。
「と、所でマリエル。ファーや他の隊員も一緒に来てるの」
「ん? 近くの町にコーネリアもいるけど……、ファーね……」
よかった、コーネリアも無事だ。
そもそも、僕が第七部隊は情報不足で奇襲されたんだ、相手を知っている以上マリエル達にだって対策は出来たはずだ。
コーネリアもあの夜みたいに突進する事はないだろうし。
マリエルを見ると、困った顔をしていた。
「も、もしかしてファーが命に関わるような怪我とか」
「いやあ……ピンピンよ」
何か言いたそうなマリエルの顔、歯切れの悪い言葉で続きを喋る。
「実は黙って置いてきちゃった」
「えええっ」
思わず声を上げると、頬をぽりぽりとかくマリエル。
僕はアデーレの顔を見て、マリエルをもう一度視た。
「いや、だって黙って行かないと、帝国側へ入るって言ったらファー怒るし止めるでしょ。
本来この依頼は国扱いじゃないのよ。
フローレンスちゃんの父親、アルマ村長が娘が騙されないか見てきてくれって、凄いお願いされてね。
だからこっそり来て、こっそり見てきて直ぐ戻ればいいかなーって、もちろん問題があればこっそり助けようと思っていたし」
「自分とコーネリアは隊長がこっそり村を出て行くのを視て付いて来た」
アデーレが簡潔に喋る。
「もう一人で来るつもりだったのに、姑に付きまとわれている気分だわ」
文句は言いつつも顔は笑っており信頼の証なのが視てわかる。
アデーレがマリエルに話しかける。
「では、隊長、目的も済んだので帰りましょう。
万が一聖騎士が帝国に居ると解ったら大問題です」
「うう、それよね。
帰ったら全部押し付けてきたファーに殺されそうだわ」
肩を落とすマリエルに、フローレンスお嬢様がマリエルへと向き直る。
「何、フローレンスちゃん」
「子供扱いしないでよっ!
そ、その。
助けに来てくれたのよね、ありがとうございます」
マリエルも僕も驚きで眼が点になる。
まさかお礼を言うとは思わなかったからだ。
「いいのよ、色々と気になる事多いし、好きでやっているのだから。
それに彼に会いたいってのもあったのよね」
僕の顔みて不敵に笑うマリエル。
「その、腕は大丈夫?」
「え?」
「ほら、ちぎれたじゃない」
「あっ……うん。
今は動くよ」
「そう、よかった」
……。
…………。
なんだこの気恥ずかしさは。
「うがーーーーーーーーーっ!!!」
突然、僕とマリエルの間に奇声をだして割ってはいるフローレンスお嬢様。
「わっ」
「っと、フローレンスお嬢様驚かせないで下さい」
「なんでヴェルを追い出した奴が此処にいるのよっ!。
それに近い、あんたヴェルとの距離が近いからっ」
「なんでと言われても、君を助けだすためにいるんだけど」
怒るフローレンスお嬢様の顔に人差し指を突きつけるマリエル。
僕は思わず疑問の声を出してしまった。
「なんで……」
僕の声に不満顔になったマリエルは僕の方に向いて説明してくる。
「なんでって、君もかっ。
フェイシモ村が襲われたって聞いてね、行ったはいいけど……。
建物には目立った被害は無し。
ただ、村長の娘が全て丸く押さえる為に付いていったと」
僕は思わずフローレンスお嬢様を見た。
「そうなのですか?」
「え、う……うん。
いや、箱が欲しいって交渉に来て、その時に私と結婚したいって人が居てね。
私も断ったのよ? でも、ヴェルだって居なくなったし、顔を見せるだけでいいからって、不自由もしない旅にするって言われたし……」
初耳だ。
てっきりフェイシモ村が襲われ、フローレンスお嬢様も村も何もかも怖されたのかと。
「普通なら、それで終わる事件なんだけどお……」
茂みから長身の人間が出てきた。
フードを取った。
一瞬男性に見えたけど黒髪をした女性が、マリエルの横に立ち並ぶ。
弓使いのアデーレだ
「隊長、撒いて来ました。
馬は足が付くといけないので森に放してきました」
「もう一人はアデーレだったのか……ありがとう」
兵士を撒いてくれた人の名前を言う。
口数の少ないアデーレの眉が小さく動く。
「すみません。
初対面ですよね」
しまったあああっ。
この失敗は二回目である、初対面だけど初対面じゃない。
えーっと……。
「そうマリエルが、弓を使う隊員がいるって褒めてたからてっきりそうかと。
ヴェルと言います」
僕の言葉にしばし時間が止まった気がした。
「へー、私ってそんな事言ってたんだー」
「ふーん、ヴェルって。
話だけで見た事もない女性の事を気に留めているんだー」
マリエルとフローレンスお嬢様の白い眼が視線として突き刺さる。
「と、所でマリエル。ファーや他の隊員も一緒に来てるの」
「ん? 近くの町にコーネリアもいるけど……、ファーね……」
よかった、コーネリアも無事だ。
そもそも、僕が第七部隊は情報不足で奇襲されたんだ、相手を知っている以上マリエル達にだって対策は出来たはずだ。
コーネリアもあの夜みたいに突進する事はないだろうし。
マリエルを見ると、困った顔をしていた。
「も、もしかしてファーが命に関わるような怪我とか」
「いやあ……ピンピンよ」
何か言いたそうなマリエルの顔、歯切れの悪い言葉で続きを喋る。
「実は黙って置いてきちゃった」
「えええっ」
思わず声を上げると、頬をぽりぽりとかくマリエル。
僕はアデーレの顔を見て、マリエルをもう一度視た。
「いや、だって黙って行かないと、帝国側へ入るって言ったらファー怒るし止めるでしょ。
本来この依頼は国扱いじゃないのよ。
フローレンスちゃんの父親、アルマ村長が娘が騙されないか見てきてくれって、凄いお願いされてね。
だからこっそり来て、こっそり見てきて直ぐ戻ればいいかなーって、もちろん問題があればこっそり助けようと思っていたし」
「自分とコーネリアは隊長がこっそり村を出て行くのを視て付いて来た」
アデーレが簡潔に喋る。
「もう一人で来るつもりだったのに、姑に付きまとわれている気分だわ」
文句は言いつつも顔は笑っており信頼の証なのが視てわかる。
アデーレがマリエルに話しかける。
「では、隊長、目的も済んだので帰りましょう。
万が一聖騎士が帝国に居ると解ったら大問題です」
「うう、それよね。
帰ったら全部押し付けてきたファーに殺されそうだわ」
肩を落とすマリエルに、フローレンスお嬢様がマリエルへと向き直る。
「何、フローレンスちゃん」
「子供扱いしないでよっ!
そ、その。
助けに来てくれたのよね、ありがとうございます」
マリエルも僕も驚きで眼が点になる。
まさかお礼を言うとは思わなかったからだ。
「いいのよ、色々と気になる事多いし、好きでやっているのだから。
それに彼に会いたいってのもあったのよね」
僕の顔みて不敵に笑うマリエル。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる