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二章
48 番外 副隊長の悩み
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マリエルがおかしい。
いや、おかしいのは元々でしょうか。
今は二人でタチアナの町を目指し街道を歩く。
横にいるマリエルが私の顔を見て喋る。
「ちょっと、ファー言いたい事があるなら言ってくれると助かるなー。
二人だけなんだしさ」
顔に出ていたのでしょうか、やはり嘘はつけませんね。
「そうですね……。
では、少しマリエルの頭が、おかしいと思っただけです」
「うわー……」
「言えと言ったのはマリエルですよ」
「ヴェルを捕まえられなかったからって酷いじゃない」
あれは……。
逃がしたようにも思えますし。
途中の川で痕跡がなくなった、反対側は帝国領。
私達が勝手に入るには行かない場所、マリエルは悔しそうな顔をしていたけど……あの顔はほっとしている時の顔。
マリエルと付き合いが長いからこそ、そう思えます。
それを指摘してもいいけど、何か理由があるはず。
そして、私はマリエルの身勝手な行動に何度も助けられているのも事実。
「ヘビの盛り合わせを食べてもらいます」
「ちょ、なななななんでよっ!」
「これぐらいは、いいと思います」
「…………」
「…………」
私は微笑む。
諦めたマリエルが小さく返事をした。
「わかったわよ……。
鬼、悪魔っ」
「あら、私が悪魔なら、隊長は大悪魔ですね」
「ぐっ!」
私からは理由を聞きません、だからこそマリエルも罰を飲んだ飲んだのでしょう。
タチアナの方向から影が見えた。
馬に乗った人間、青いロープを着た長身の女性。
「アデーレ……ですね」
「なんだろ?」
剣より弓が得意な彼女は私達を見つけて、馬のスピードを落とす。
「隊長、副隊長お疲れ様です」
「アデーレどうしたの?」
「重要書類届きました、緊急でしたら困るので」
重要書類は、隊長、副隊長が確認する事が出来る。
タチアナに残っているのはミント副隊長。
「一応聞きますけど、ミント副隊長は……」
「難しい事は、ファーちゃんに丸投げと、言ってましたので」
「はぁ……、わかりました。
確かに書類は受け取りました、アデーレは戻ってください」
馬上で篭手を見せ敬礼するアデーレ、マリエルがありがとと、ねぎらいの言葉を言うと少し嬉しそうな顔で戻っていく。
私にはあまり見せない顔だ。
「本当、損な役回りですよね副隊長って」
「交代しようか?」
「いいえ、私には隊長は出来そうにもありませんし」
受け取った書類をマリエルに渡す。
中身を見ないで私に付き返してきた。
先に読めという事でしょう。
「では」
蝋でふたしてある部分を、短剣で切り落とす。
中の紙には第三部隊の隊長が交代した事が書かれていた。
いわゆる人事の発表。
「マリエル隊長、第三部隊のプッケル隊長が若手の育成という事で任を降りました。
第三部隊の新しい隊長は――」
「マキシムよね」
私は驚いた。
内部を知っている者としては、到底信じられない人事。
しかもマリエルは私の答えより先に答えを出した。
「――っ、知っていたんですか?」
「なんとなく、そう思っただけよ」
「マキシムは第二部隊の隊員であり、突然第三部隊の隊長なんて、ありえないはずなんですけど……」
「なるほどね、なんにせよ。
少し動きにくくなるのは間違いないわね」
「従兄弟ですけど、死んで欲しいぐらいです」
「こらこら」
休日はもう一日ある。
明日は少しゆっくりしたい。
問題はマリエルが、そうさせてくれるかどうか。
いや、おかしいのは元々でしょうか。
今は二人でタチアナの町を目指し街道を歩く。
横にいるマリエルが私の顔を見て喋る。
「ちょっと、ファー言いたい事があるなら言ってくれると助かるなー。
二人だけなんだしさ」
顔に出ていたのでしょうか、やはり嘘はつけませんね。
「そうですね……。
では、少しマリエルの頭が、おかしいと思っただけです」
「うわー……」
「言えと言ったのはマリエルですよ」
「ヴェルを捕まえられなかったからって酷いじゃない」
あれは……。
逃がしたようにも思えますし。
途中の川で痕跡がなくなった、反対側は帝国領。
私達が勝手に入るには行かない場所、マリエルは悔しそうな顔をしていたけど……あの顔はほっとしている時の顔。
マリエルと付き合いが長いからこそ、そう思えます。
それを指摘してもいいけど、何か理由があるはず。
そして、私はマリエルの身勝手な行動に何度も助けられているのも事実。
「ヘビの盛り合わせを食べてもらいます」
「ちょ、なななななんでよっ!」
「これぐらいは、いいと思います」
「…………」
「…………」
私は微笑む。
諦めたマリエルが小さく返事をした。
「わかったわよ……。
鬼、悪魔っ」
「あら、私が悪魔なら、隊長は大悪魔ですね」
「ぐっ!」
私からは理由を聞きません、だからこそマリエルも罰を飲んだ飲んだのでしょう。
タチアナの方向から影が見えた。
馬に乗った人間、青いロープを着た長身の女性。
「アデーレ……ですね」
「なんだろ?」
剣より弓が得意な彼女は私達を見つけて、馬のスピードを落とす。
「隊長、副隊長お疲れ様です」
「アデーレどうしたの?」
「重要書類届きました、緊急でしたら困るので」
重要書類は、隊長、副隊長が確認する事が出来る。
タチアナに残っているのはミント副隊長。
「一応聞きますけど、ミント副隊長は……」
「難しい事は、ファーちゃんに丸投げと、言ってましたので」
「はぁ……、わかりました。
確かに書類は受け取りました、アデーレは戻ってください」
馬上で篭手を見せ敬礼するアデーレ、マリエルがありがとと、ねぎらいの言葉を言うと少し嬉しそうな顔で戻っていく。
私にはあまり見せない顔だ。
「本当、損な役回りですよね副隊長って」
「交代しようか?」
「いいえ、私には隊長は出来そうにもありませんし」
受け取った書類をマリエルに渡す。
中身を見ないで私に付き返してきた。
先に読めという事でしょう。
「では」
蝋でふたしてある部分を、短剣で切り落とす。
中の紙には第三部隊の隊長が交代した事が書かれていた。
いわゆる人事の発表。
「マリエル隊長、第三部隊のプッケル隊長が若手の育成という事で任を降りました。
第三部隊の新しい隊長は――」
「マキシムよね」
私は驚いた。
内部を知っている者としては、到底信じられない人事。
しかもマリエルは私の答えより先に答えを出した。
「――っ、知っていたんですか?」
「なんとなく、そう思っただけよ」
「マキシムは第二部隊の隊員であり、突然第三部隊の隊長なんて、ありえないはずなんですけど……」
「なるほどね、なんにせよ。
少し動きにくくなるのは間違いないわね」
「従兄弟ですけど、死んで欲しいぐらいです」
「こらこら」
休日はもう一日ある。
明日は少しゆっくりしたい。
問題はマリエルが、そうさせてくれるかどうか。
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