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二章

43 明日を守る為の攻防戦

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 森の中にある川沿いには、行くかのテントが見えた。
 でも、どれも隠すようなそぶりは無く色もカラフルだ。
 違うのか……?。
 川には釣竿も立てられている。
 僕に気づいた男性がにこやかに手を上げてきた。

「おや、地元の方ですか」

 相手から声をかけてきた。

「ええ、まぁ。
 フェイシモ村の村長宅で執事みたいな者をしているヴェルと言います。
 見た所……釣りですか?」

 釣竿があるんだから釣りに間違いない、僕としても変な質問をしてしまった。
 しかし、気にした様子も無く男は話しかけてきた。

「これはこれは……」
「見回りみたいな物なので硬くならずに」
「そうですか、実は我々はタチアナ釣り同盟の仲間なんなんですが。
 この付近で凄いのが釣れると聞きましてね。
 今は坊主なんですけど……。
 あっ、もしかして勝手に釣りをしたら不味かったですか」

 男は今にも泣きそうな顔で僕を見つめている。
 見た所、黒尽くめの敵には見えない。
 他の場所だったか……。

「いえ、釣りぐらいでしたら特に報告も無くても。
 大きく採取や乱獲とかになると、村長の許可は欲しいです」
「なるほど、その点は大丈夫です。
 我々釣り同盟は、迷惑をかけないを信条にしてますので。
 ひっそりと釣りだけ出来ればいいのです。
 ただ今回は参加者が多くてちょっと人数増えてしまいましたが」

 となると、盗賊は泉のほう、もしくは別の場所に潜伏してると考えたほうがいいだろう。
 この人たちも避難させないといけない。
 釣り禁止ですと言っておけばよかった……。

「ですが、すみません。
 村の祭事でこの場所を一晩使うので、本日は戻ってもらっていいでしょうか」

 納得するかわからないけど、これしかない。
 もちろん嘘。
 そうでも言わないとこの人達は帰らずに二次被害を受けるだろう。

「一晩は駄目なんですか」
「すみません、明日でしたら大丈夫なんです」
「そうですか……。
 代表に伝えてきます。
 いえね、代表は足が悪いもので」

 人の良さそうな男性は、テントへと入っていった。
 直ぐにテントから出てくる。

「いやー、代表も地元の人に迷惑はかけられないと。
 一度ロザンへ戻って明日来ます」
  
 別の場所を探そう。
 日没まで時間はまだある。

「それでは僕は別の場所に人が居ないかを確認してきますので」
「いあー此方こそ大変ご迷惑を――」

 僕が釣り人に背を向ける。
 殺気ともとれる気配が、襲ってきた。
 同時に後頭部へ剣が振り下ろされる。
 僕は篭手を上にして両手でガードした。
 直ぐに距離を取る。

 温厚だった男性は既に表情はない。
 他のテントからも同じような格好をした男性達が武器を手に出てくる。
 違うのは他の男達はマスクをしていた。
 合計八人。

「当りか……」

 僕の周りをじりじりと詰め寄ってくる

「…………」
「悪いですけど、手加減は出来ませんし、しません」
「…………」
「だんまりですよね」
「…………」
「一ついいます。
 あなた達が探している祭具はこの篭手ですよ」

 僕は黒篭手を見せつけた。
 男達の眼の色が変った。
 僕と話した男性が淡々と命令を下す。

「情報の漏洩と黒い篭手の確認、能力者の可能性大。
 殺して奪え」

 その命令で、顔を隠した男達が襲ってくる。
 あの時と違い、今の僕には相手の攻撃が見えた。
 僕は相手の剣を避けると、その手へと蹴りを入れる。
 敵の手首が折れる音を聞くと、手から離れた剣を素早く奪い取る。
 次に切りかかってくる男へ切り上げた。

 残り七人。
 信じられないという顔の男をそのまま川へと蹴り飛ばす。
 
 残り六人。
 手首を押さえている男の背中へと剣を突き刺した。
 残った男達は僕と距離を取り始める。

 体全体に紐が巻かれた。
 釣竿の糸だ。

「なるほど……」
「動けまい」

 持ってくれよ、僕の体。
 強引に体を回転させる、糸は食い込み血は出るけどそれ以上は大丈夫だった。
 僕は剣を構えている男へと全力で走る。
 驚いた男は僕を斬った。
 
 体を切られたけど糸も斬った。
 あっけに取られている男から剣を奪うと、その男を仕留める。
 残り五人。
 胸の傷は音を立ててふさがって行く。

「まてまてまてっ。
 お前ら黙って離れろ」

 代表が居ると言われたテントから一際大きい男が出てきた。
 熊みたいな体格で忘れようにも忘れられない。
 耳の穴をほじって、嬉しそうな顔で僕をみている。

「小僧、直で聞くぞ。
 目的はなんだ」

 敵の一人が隊長と呼ぶ。
 その男の腕を取り間接を反対に曲げた。
 叫び声を我慢して地面に倒れこんでいた。

「俺は黙れと言ったんだっと、すまんな小僧。
 で目的はなんだ」
「村への襲撃をやめて貰いたい。
 探している祭具は僕が持っています、深夜に村を襲うつもりでしょうが、僕がいます。
 僕はアナタには敵わないかもしれませんけど、聖騎士もこの村に来ます。
 全力で時間稼ぎぐらいは出来ますので」

 大男は腕を組んで考える。

「たっく、作戦は筒抜けじゃねえか、帰るぞ」
「え、隊長っ! 村人を人質にすれば勝てますっ」

 最初の男性が驚いて、大男を呼び止める。
 痛い所を疲れた。
 僕がいくら時間稼ぎをしても、それがある。

「面倒だ、オレは降りるぞ。
 もっともお前らじゃ小僧には勝てないぞ。
 オレは勇敢な奴は好きだからな、その勇気に免じて撤退しよう」

 意見をもうした男も、周りの顔を隠した男も何もいわない。
 そうだ。
 この大男は、別に篭手なんてどうでもいい、自分が面白ければという男だ。
 あっけに取られた僕達をよそに、大男が鼻歌を混じりに自分のテントを片付けている。
 僕が殺した男達二名を邪魔だといわんばかりに川へ引きずる、血の跡を地面につけながら投げ捨てた。

「じゃあな」

 大男はあっさりと、川へと入っていった。
 残された男達も我に返ったのだろう、残った荷物をそのままで川へと入って追いかけていった。

 終わった……?
 一応数日は様子見したほうがいいだろう。
 でも、終わったんだ……。

  
「ヴェルっ!」

 名前を呼ばれ振り向くと、フローレンスお嬢様とクルースが居た。

「森に入ったって聞いて……、手伝おうって……クルースが……」
「人、殺したのか……?」

 二人は、血溜まりや、僕が握っている剣に注目している。

「あの……」

 僕が一歩前にいくとクルースは、フローレンスお嬢様を庇うように前に出る。

「人殺しは……人殺しの仲間なんだな」
「まだヴェルが誰かを殺したといっているわけじゃっ……」

 散乱するテントや竿、血だまりと、そこから伸びる川へと続く跡。
 自分でもこれで冤罪というのは無理がある。
 もっとも冤罪ではない。

「ヴェル、本当にお前が何かやったのか?」
「どう思われても結果は結果です。
 殺しました」
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