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07 一晩たっての事
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剣が軽く感じた。
それでも、僕の剣は大男には届かない。
「うおおおおおおっ!」
自然と口を開いては剣を使う。
何度目かの突進で僕は大きく吹き飛ばされた。
そのとたんに興味がなさそうになってくる大男。
「ほう、もうおしまいか?」
おしまいか? と聞かれても体全体が悲鳴を上げているのがわかる。
力だ、もっと力が欲しい……。
『汝、力を望む者か?。』
頭の中に女性の声が響く。
幻聴もここまで来ると、笑えてくる。
「貸し手くれるなら、貸し手くれっ!」
別世界と言う場所で、あった女性の声だ。
『ふむふむ、わがはいを作った主様の世界では、こういう時に使うと聞いてな、ではわがはいの魔力をお主に送る、もって三十秒じゃ』
心臓の音だけが聞こえた。
世界がスローモンショーンになる、なるほどこれが、あの女性が言った力か。
僕は大男を斬るために走る。
ガードをした大男、でも僕はその腕へと標準を変えた。
大男の口元が笑い、僕を見ていた。
僕の命と大男の腕一本、釣り合いか取れたのかな? と思った所で意識がきれた。
全身が酷くだるい。
鳥の羽音が聞こえるという事は朝か。
早く起きて、戸締りを空け食堂の火をつけないと……。
それからフローレンスお嬢様を起して、いや今日は祭りだ。
昨日は色々あり――。
飛び起きて、辺りを見回す。
違う、昨日までの平穏な日々はもうないんだ。
周りを見ると、森の中。
目の前には街道が見えた。
手を付こうと右腕を見ると、包帯が無茶苦茶に巻かれている。
この巻きかたかは……。
フローレンスお嬢様っ!?
僕は直ぐに街道へ出る。
辺りには血痕の後があった、場所を確認し村長宅へと顔を向けた。
村長宅は見事に焼け落ちていた。
その向こうに見える村全体も黒くなった家がよく見えた。
背後に人の気配がする。
「フローレ――――」
「体の調子はどう――」
フローレンスお嬢様ではなく、聖騎士マリエルが僕を見ていた。
僕の言葉に、お互いの言葉が止まる。
「すまない、人違いだ」
「いえ、僕のほうこそ……」
ふと家の脇を見ると、土が三つ盛り上がっていた。
やはり、一つはフローレンスお嬢様の奴だろう。
「お墓、ありがとうございます」
「いや、結局私は何も出来なかった、それに逆に助けてもらった」
頭を下げられ困惑する。
耳が隠れるぐらいまでの髪で、うなじが見えた。
「いえ。頭を上げてください。
えっと、僕の名前はヴェルと言います。
たしかマリエル……さんでしたよね。
あの大男はどうなったんです」
「マリエルと呼び捨て構わない、何も覚えてないのか君、いやヴェルは」
僕と大男は対峙した事。
一瞬の交差で僕の剣が巨漢の男の左腕を切り落とした事。
その場に倒れた僕であるが、大男は気分がいいと、腕を持って巨漢の男が帰った事。
そして傷だらけの僕を、回復したマリエルが森へと寝かしてくれた事を教わった。
言われてから全身を見渡す、手も足も傷がない。
「あの、手当てまでありがとうございます」
マリエルを見ても、あれほど大男に痛めつけられていたのに、今は傷ひとつない。
「それなんだけどー、聖騎士の力ってのは、この篭手によって力が増幅されるの」
「はぁ」
いきなり聖騎士の説明を始めたマリエル。
黙って聞いていたほうが良いだろうな。
「でね、普通の人は篭手を嵌めても何も起きないの。
でも、君は、いやヴェルは見る見る傷が回復した。
再生能力で軽い切り傷であれば一晩もあれば回復するわ」
なるほど、白昼夢みたいな奴も適正の一つだったのかな。
結局復讐は、ならなかったし僕は生き残った。
自身の体を見回すと確かに傷が無くなっている。
しかし腕の包帯をみて疑問に思った。
「あの、この腕は……」
訳を聞こうと顔を上げた所で、遠くから馬の音が聞こえた。
直ぐに女の子の声が辺りに響き渡る。
「たいちょおおおおおおお」
声の主に思い当たる人がいるのか、少し困った顔で僕に耳打ちをする。
「悪いけど、篭手の事は周りには秘密にしておいて。
そして一緒に王都まで来てほしいの」
返事を聞かずに声をのするほうを向くマリエル。
僕もそちらを向くと馬に乗り、ピンクの髪を三つ編みにした女の子が突進してくる。
あのスピードのままはぶつかんるんじゃと、一歩引くと。マリエルの前で手綱を思いっきり引いた。。
驚いた馬が前足を上げ急停止すると、馬から飛び降りマリエルへと抱きついた。
「たいちょーっ、お待たせしましたのなのだ。
怪我は、ないですか? もしかしてくっころされましたなのだ?」
「怪我も何もこの通り。
くっころとは何よ」
「えー知らないんですかったいちょー。
くっころとは、たいちょーみたいな騎士が敵に捕まり『くっころせ』って言うの。
敵が『殺すよりひどい事をしてやる』ってポロンなのだ」
マリエルがため息をつくと、女の子の頭を叩く。
背は低く僕の胸ぐらいまでしか身長がない。
「どこで覚えてくるんだ」
「一般人に聖騎士の変な所を見せない、ファーに怒られるよ。
この人は、村で唯一生き残ったヴェル。
状況や今後の為に王都まで護衛」
「よろしく。ヴェルです。えーっと――」
名前の知らない女の子に、開いている左手で握手を求めると、握手してくれる女の子。
この女の子にも、赤い模様の入った篭手が装着されていた。
腰にも身長の半分ぐらいの短めの剣を、着けているのに気づいた。
「せいきし団。七部隊のミント。よろしくヴェルにいなのだ」
僕を『にい』付けで呼ぶ女の子。
握手が終わると、続けて複数の馬の足音が聞こえた。
先頭は、これも女性で茶色の少しウエーブが付いた髪をなびかせ眼鏡をかけていた。
青いマントを羽織り、僕らの集団に気づくと涼しい笑みを浮かべてきた。
少し手前で馬をおり、背後の馬へ乗った男たちに色々指示をし女性だけが歩いてくる。ほかの男達は僕らを通り過ぎ滅ぼされた村へと散っていった。
「お初にお目にかかります。
聖騎士団、七部隊副長のファーランスと申します。
ファーとお呼び下さい」
青いマントから見える手には同じく赤い模様の篭手、それよりもマントから飛び出るような豊満な胸が特徴的だった。
もちろん彼女も剣を腰につけている。
僕はファーに自己紹介をし握手する。
それまでやさしい笑みをしていたファーはマリエルに向きなおすと。
眼鏡を人差し指であげ、目じりを吊り上げた。
「マリエル隊長、お仕置きです」
短い一言にマリエルやミントが、青い顔をして震え上がる。
「まっ、まってファー。そもそも休日なんだし自由行動、その戦闘は不可抗力であって困っている人々が居れば助けるのが聖騎士だっ」
「ええ、それと規則はまた違いますので。
単独行動をとった罪でお仕置きです」
「しかし、あの場合――」
「ええ、ですから報告書は読みました。
祭りと聞いて抑えきれなくなった誰がさんが夜中に移動中、村の方向が赤く光っていると突進し、謎の部隊と遭遇。
備品である剣を紛失し、尚且つハグレ一名と交戦し逃げられる。
と、そして」
僕の方に向き直り優しい笑みへと変わり、続きをしゃべり始める。
「村人一名を保護。
襲撃の慣例性の調査、および護衛のために王都へ移送。
大丈夫ですよヴェルさん、貴方の安全は聖騎士団が保障します。
行動は立派ですが、規則は規則、大丈夫です。
非公式なので簡単なお仕置きですよ」
「私は、そのお仕置きがいやなのーーーー」
悲しみに浸る余韻もなく僕の運命は回り始めていた。
マリエルが叫ぶなか、僕は三つの墓へちらっと視線を向けた。
さよならです、フローレンスお嬢様。
居なくなってから言うのもなんですが、僕も好きだったと思います。
だからこそ、僕以外の人と幸せになってほしかったです。
それでも、僕の剣は大男には届かない。
「うおおおおおおっ!」
自然と口を開いては剣を使う。
何度目かの突進で僕は大きく吹き飛ばされた。
そのとたんに興味がなさそうになってくる大男。
「ほう、もうおしまいか?」
おしまいか? と聞かれても体全体が悲鳴を上げているのがわかる。
力だ、もっと力が欲しい……。
『汝、力を望む者か?。』
頭の中に女性の声が響く。
幻聴もここまで来ると、笑えてくる。
「貸し手くれるなら、貸し手くれっ!」
別世界と言う場所で、あった女性の声だ。
『ふむふむ、わがはいを作った主様の世界では、こういう時に使うと聞いてな、ではわがはいの魔力をお主に送る、もって三十秒じゃ』
心臓の音だけが聞こえた。
世界がスローモンショーンになる、なるほどこれが、あの女性が言った力か。
僕は大男を斬るために走る。
ガードをした大男、でも僕はその腕へと標準を変えた。
大男の口元が笑い、僕を見ていた。
僕の命と大男の腕一本、釣り合いか取れたのかな? と思った所で意識がきれた。
全身が酷くだるい。
鳥の羽音が聞こえるという事は朝か。
早く起きて、戸締りを空け食堂の火をつけないと……。
それからフローレンスお嬢様を起して、いや今日は祭りだ。
昨日は色々あり――。
飛び起きて、辺りを見回す。
違う、昨日までの平穏な日々はもうないんだ。
周りを見ると、森の中。
目の前には街道が見えた。
手を付こうと右腕を見ると、包帯が無茶苦茶に巻かれている。
この巻きかたかは……。
フローレンスお嬢様っ!?
僕は直ぐに街道へ出る。
辺りには血痕の後があった、場所を確認し村長宅へと顔を向けた。
村長宅は見事に焼け落ちていた。
その向こうに見える村全体も黒くなった家がよく見えた。
背後に人の気配がする。
「フローレ――――」
「体の調子はどう――」
フローレンスお嬢様ではなく、聖騎士マリエルが僕を見ていた。
僕の言葉に、お互いの言葉が止まる。
「すまない、人違いだ」
「いえ、僕のほうこそ……」
ふと家の脇を見ると、土が三つ盛り上がっていた。
やはり、一つはフローレンスお嬢様の奴だろう。
「お墓、ありがとうございます」
「いや、結局私は何も出来なかった、それに逆に助けてもらった」
頭を下げられ困惑する。
耳が隠れるぐらいまでの髪で、うなじが見えた。
「いえ。頭を上げてください。
えっと、僕の名前はヴェルと言います。
たしかマリエル……さんでしたよね。
あの大男はどうなったんです」
「マリエルと呼び捨て構わない、何も覚えてないのか君、いやヴェルは」
僕と大男は対峙した事。
一瞬の交差で僕の剣が巨漢の男の左腕を切り落とした事。
その場に倒れた僕であるが、大男は気分がいいと、腕を持って巨漢の男が帰った事。
そして傷だらけの僕を、回復したマリエルが森へと寝かしてくれた事を教わった。
言われてから全身を見渡す、手も足も傷がない。
「あの、手当てまでありがとうございます」
マリエルを見ても、あれほど大男に痛めつけられていたのに、今は傷ひとつない。
「それなんだけどー、聖騎士の力ってのは、この篭手によって力が増幅されるの」
「はぁ」
いきなり聖騎士の説明を始めたマリエル。
黙って聞いていたほうが良いだろうな。
「でね、普通の人は篭手を嵌めても何も起きないの。
でも、君は、いやヴェルは見る見る傷が回復した。
再生能力で軽い切り傷であれば一晩もあれば回復するわ」
なるほど、白昼夢みたいな奴も適正の一つだったのかな。
結局復讐は、ならなかったし僕は生き残った。
自身の体を見回すと確かに傷が無くなっている。
しかし腕の包帯をみて疑問に思った。
「あの、この腕は……」
訳を聞こうと顔を上げた所で、遠くから馬の音が聞こえた。
直ぐに女の子の声が辺りに響き渡る。
「たいちょおおおおおおお」
声の主に思い当たる人がいるのか、少し困った顔で僕に耳打ちをする。
「悪いけど、篭手の事は周りには秘密にしておいて。
そして一緒に王都まで来てほしいの」
返事を聞かずに声をのするほうを向くマリエル。
僕もそちらを向くと馬に乗り、ピンクの髪を三つ編みにした女の子が突進してくる。
あのスピードのままはぶつかんるんじゃと、一歩引くと。マリエルの前で手綱を思いっきり引いた。。
驚いた馬が前足を上げ急停止すると、馬から飛び降りマリエルへと抱きついた。
「たいちょーっ、お待たせしましたのなのだ。
怪我は、ないですか? もしかしてくっころされましたなのだ?」
「怪我も何もこの通り。
くっころとは何よ」
「えー知らないんですかったいちょー。
くっころとは、たいちょーみたいな騎士が敵に捕まり『くっころせ』って言うの。
敵が『殺すよりひどい事をしてやる』ってポロンなのだ」
マリエルがため息をつくと、女の子の頭を叩く。
背は低く僕の胸ぐらいまでしか身長がない。
「どこで覚えてくるんだ」
「一般人に聖騎士の変な所を見せない、ファーに怒られるよ。
この人は、村で唯一生き残ったヴェル。
状況や今後の為に王都まで護衛」
「よろしく。ヴェルです。えーっと――」
名前の知らない女の子に、開いている左手で握手を求めると、握手してくれる女の子。
この女の子にも、赤い模様の入った篭手が装着されていた。
腰にも身長の半分ぐらいの短めの剣を、着けているのに気づいた。
「せいきし団。七部隊のミント。よろしくヴェルにいなのだ」
僕を『にい』付けで呼ぶ女の子。
握手が終わると、続けて複数の馬の足音が聞こえた。
先頭は、これも女性で茶色の少しウエーブが付いた髪をなびかせ眼鏡をかけていた。
青いマントを羽織り、僕らの集団に気づくと涼しい笑みを浮かべてきた。
少し手前で馬をおり、背後の馬へ乗った男たちに色々指示をし女性だけが歩いてくる。ほかの男達は僕らを通り過ぎ滅ぼされた村へと散っていった。
「お初にお目にかかります。
聖騎士団、七部隊副長のファーランスと申します。
ファーとお呼び下さい」
青いマントから見える手には同じく赤い模様の篭手、それよりもマントから飛び出るような豊満な胸が特徴的だった。
もちろん彼女も剣を腰につけている。
僕はファーに自己紹介をし握手する。
それまでやさしい笑みをしていたファーはマリエルに向きなおすと。
眼鏡を人差し指であげ、目じりを吊り上げた。
「マリエル隊長、お仕置きです」
短い一言にマリエルやミントが、青い顔をして震え上がる。
「まっ、まってファー。そもそも休日なんだし自由行動、その戦闘は不可抗力であって困っている人々が居れば助けるのが聖騎士だっ」
「ええ、それと規則はまた違いますので。
単独行動をとった罪でお仕置きです」
「しかし、あの場合――」
「ええ、ですから報告書は読みました。
祭りと聞いて抑えきれなくなった誰がさんが夜中に移動中、村の方向が赤く光っていると突進し、謎の部隊と遭遇。
備品である剣を紛失し、尚且つハグレ一名と交戦し逃げられる。
と、そして」
僕の方に向き直り優しい笑みへと変わり、続きをしゃべり始める。
「村人一名を保護。
襲撃の慣例性の調査、および護衛のために王都へ移送。
大丈夫ですよヴェルさん、貴方の安全は聖騎士団が保障します。
行動は立派ですが、規則は規則、大丈夫です。
非公式なので簡単なお仕置きですよ」
「私は、そのお仕置きがいやなのーーーー」
悲しみに浸る余韻もなく僕の運命は回り始めていた。
マリエルが叫ぶなか、僕は三つの墓へちらっと視線を向けた。
さよならです、フローレンスお嬢様。
居なくなってから言うのもなんですが、僕も好きだったと思います。
だからこそ、僕以外の人と幸せになってほしかったです。
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