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195 いつの間にか冒険者ギルドがオープンしてました

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 完全復活!
 私はベッドに座ったまま右手を高く上げる。
 大きく息を吸って気合を入れようと……。

「叫ぶな」
「叫んでないわよっ! このク……」


 腕を上げただけで、見舞いに来ていたディーオに怒られた。
 思わずクソ教師と言おうとして思いとどめる。良く止めれたわね、自分自身を褒めてあげたい。


「このク……その続きはなんだ? ボクは君が風邪をひいた責任で、君の父上からあり難いほどの手紙を沢山貰っているんだ。
 そもそも、ボクは水に入れとは言っていない。貝を集めてくれればそれで良いはずだったのにのにも――――」
「ごめんごめんってば。ほ、ほら感謝してるわよ? その万が一のために実家に手紙送ったのも感謝したいし、学園に寝泊りしてくれたんでしょ? ディーオは黙っているとイケメンなんだし」


 私はガミガミいうディーオの頬を左右の指を使い、むにっとさわる。
 横に押し込んでディーオの顔を無理やり笑顔を作る。


「ほら、口は閉じた。笑顔笑顔。あの……目が笑ってないんですけど?」
「エルンさーん着替えもって…………ご、ごめんなさいっ! わたし何も見てませんからっ! こ、ここに置いておきます」


 私とディーオは着替えを置いて逃げていくナナを見送った。


「「何」」んだ?」


 同時に疑問を口に出した後、ディーオが先に何かに気づいた。


「また、変な勘違いを……」
「何が?」
「君のきている服。少し開いてる」
「…………うおっと。これは失礼」


 私は見えていたらしい部分を隠して軽く謝る。
 そうねガウンタイプなのに暴れたら見えるわよね、仕方が無い事故よ事故。


「君が恥じらいとかなくて、今は大変助かるよ。騒がれたりしたら余計に面倒だ。
 さてと……八日も寝ていたんだ急な運動はしないように、後ナナ君に変な誤解はしないようにと伝えて置いてくれ」
「ほむ」


 別に恥じらいがないわけじゃないけど……解せぬ。
 あれよ、テレビで裸族の人が日常で、お互いに見えても興奮しないのと一緒なんだけど。


「せめて返事ぐらいは、はい。と……いや諦めよう」


 仕事をしてくる。と言って部屋から出て行った。
 散々嫌味を言ったディーオを見送った、後に残ったのは静かなものだ。
 耳を澄ませば遠くから学生達の声が聞こえてくるようなきがする。


 さて……私もナナが持ってきてくれた服に着替えるか。


 上品なニットにロングスカート。それを隠せるように大きなコートとなっている。
 保健室を出るときに老保健医を探したけど見当たらないので、軽く感謝の言葉を書いた紙を置いておく。
 この八日間殆どベッドの上だったので変な感じがするわね。

 足がふわふわしてる感じ。


「太ったでござるか?」
「そうなのよ、お腹の部分がちょっと掴め…………探したわよ! コタロウ! よくもナナの着替えをのぞっ」
「待っていたでござるよ!」
「え。あっごめん」
「ダメでござるよ。風邪はこじらせたら大変でござる。拙者の祖父も死因は風邪でござる。
 エルン殿が亡くなったらこまるでござるよ」
「女の子が近寄れないから?」
「…………エルン殿、拙者は真面目な話をして」
「う、ごめん」


 コタロウの目が何時もと違い怒っているように見える。
 そうよね、私を助けてくれたのはコタロウもだし……うーん。覗きの事で怒ろうと思ったら怒り損ねた。
「ふー危なかったでござる、旨く話しをすり替えできたでござる、しかしエルン殿のエルン部分は大きいでござったでござるね……中々いい思いをしたでござる」
 そうよね、祖父と同じ死因だったらコタロウも心配するわよね。あのディーオでさえパパに手紙で知らせたんだし。
 ナナもよく解らない飲み物私に無理やり飲ませるし……。


「ん? コタロウ何か言った?」
「何も喋ってないでござるよ?」
「そう? 気のせいか……心配かけたわね。で待っていたって?」
「ギルドでござるよ。コテツ殿がもう働いているでござる、エルン殿に会いたがっていたでござるよ?」
「誰だっけ」


 コタロウから白い目を向けられる。
 ええっと、あっコテツか。
 獣人族のコテツ。私が海向こうで出会った獣人。見た目は狼人間に近くて、その娘のノーリッシュちゃんが、また可愛いのよね。


「へえ、こっちに来たんだ……娘の彼氏は? ジャン君だっけ」
「来なくていいのに、一緒に来ていたでござる。男は滅びたほうがいいと思わないでござるか?」
「ちかいちかい、顔が近いわよ。まずコタロウが滅びなさいよ……で、他には?」
「カイン殿が日に日にやつれているので、たまには会ってほしいでござるよ」


 あー今の責任者はカインだったわよね。
 大変よね、騎士科の学生で第二王子でギルドマスター。しかも部下がコレでしょ。


「ん、連絡ありがと。気が向いたらいくわ」
「では拙者はこの辺で」


 私は出入り口、コタロウはなぜか学園の奥のほうに続く廊下で別れた。
 あっちって確か女子更衣室あったわよね? うん。私は何も知らないー早く帰ろう。

 町馬車に乗り込む時学園のほうが騒がしかったけど、私は関係ない!
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